60th All Japan KENDO Championship
高鍋(神奈川)の師であり、嘗て(かつて)2度の連覇を果たし、6度の天皇盃を手にした「平成の武蔵」と呼ばれた宮崎正裕氏もなし得なかった3連覇を、今年は、師を超えるべく高鍋は挑戦することになる。先の全国警察選手権大会でも圧倒的な強さに加え、研ぎ澄まされた精神力が窺えた内容で3連覇を果たし、年齢を重ねたその剣捌きには向かうところ敵なし、途轍もない大記録の達成を予感しつつ、今大会の見所をブロックごとに探ってみたい。
第1ブロック 上方は元全日本強化選手佐藤(東京)と全日本強化選手木下(香川)が順当に勝ち上がれば3回戦で鎬を削る。下方は昨年決勝戦で高鍋に涙をのんだ東永(埼玉)、9月の全国警察選手権大会3位網代(兵庫)、今年度の学生チャンピオン安藤(北海道)の争いか。その中でも注目したいのは、安藤の無心で臨む戦いぶりだ。「背水の陣」で臨み迎え撃つ網代、東永のベテラン組の試合運びも非常に興味深い。
第2ブロック 筆頭には内村(東京)をあげたい。このブロックは伏兵が多く、肱岡(大阪)、小谷(千葉)、大重(宮崎)、朝比奈(神奈川)、村方(福岡)何れも試合巧者が居並び、2〜3回戦で潰し合い、予想難解なブロックである。内村が抜け出すか、内村を撃破する者が現れるかが焦点になりそうだ。
第3ブロック 上方は木和田(大阪)、蒔田(千葉)が地力では一歩突出し、それを追う海老原(茨城)が柔軟な攻めから繰り出す技まえを発揮すれば面白い展開が予想される。下方は杉本(兵庫)、米屋(埼玉)、笹川(佐賀)の強豪三者が居座る。手の内を知り尽した者同士の葛藤模様で、混戦が予想される。
第4ブロック 上方は高鍋を筆頭に榎田(大阪)、ベスト8経験者石井(千葉)が揃い、高鍋は初戦相手の榎田との一戦が3連覇への大きな鍵となり、難関大阪府予選を制した榎田も秘策をもって一発逆転を狙う。両者の対戦は序盤屈指の好勝負。下方は初戦で激突する濱崎(東京)対ベスト4経験者高坂(静岡)の勝者が上位進出の公算大と読む。
11月3日(文化の日)、歴史の1ページとなる高鍋の3連覇があるか、それともベテラン、新人の中からチャンピオン誕生で平成24年の幕は閉じられるか、何れにせよ剣道日本一を決めるに相応しい内容ある激戦を期待したい。
強化委員会委員・石田 利也
* 月刊「剣窓」2012年11月号に掲載された記事の転載です。
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