平成11年4月号

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今月のまど

平成11年度新事業年度を迎えて

千鳥ヶ淵、靖国神社は桜花爛漫の季節を迎えました。合い言葉のように繰り返されて、世の中の不況も、後世に負担を残す大型の財政出動の効果もあり、底を打った感じですが、萎縮した民心の立て直しを忘れては今後の日本の発展は期待できないはずです。

決まり文句になりますが、武道、その中のエースの剣道の出番になると思います。例年にも増してこの新年度は、全剣連はもとより、各剣道団体もそれぞれ新たな決意のもとに迎えたいものです。全剣連も北の丸の穴蔵から、主力が靖国神社脇のまともな事務所に移って二度目の新年度です。思う存分に業務の成果を挙げなければなりません。

新年度事業方針の重点

全剣連が事業を展開するに当たっての基本的方向は、事業計画冒頭の全文と基本方針に掲げております。この内容はここ何年か変わることなく、高い水準の剣道の育成と、広い普及を両輪として、剣道の振興を進めるという、ある意味ではバランスを重視した平板的なものでした。

新年度はこのことに止まらず、全国の剣道の質的充実と向上を訴え、日本の剣道の質を高めるための努力を、剣道界を挙げて取り組むことを掲げました。

このことは元来当然のことなのですが、これまで為すべきことが多く、機が熟していないと考えて来ました。しかしようやくその時期が来たようです。

それはまず称号・段位審査の向上を目指す、新しい審査規則が平成12年度から実施される目途が立ったことにあります。つぎに社会体育指導員認定講習が順調に展開されつつあり、中級指導者の資質向上に手応えを感じうる段階を迎えています。

さらに新しいとは言えませんが、試合・審判規則の普及も進んだことなど、重要な道具立てが整ったことから、剣道の活性化への取り組みを、基本方針に打ち出すこととしました。持って回った言い方であり、さらに遅まきながらという言葉をつけることが必要かと思います。

しかしこの目的の達成のためには、短期間でなく、何年もかける努力が必要なことを肝に銘じたいと思います。

まず11年度は新称号・段位審査規則の施行のため準備に、万全を期さなくてはなりませんが、現実の審査の充実は、早速努力を要するところです。ここでは適任の審査員の選考が必要で、地方剣連も含めて蛮勇をもって進めるべきと思います。

続いては各種大会、試合における審判の良否が、剣道の質の向上を左右するものを共通認識として、審判員の審判能力の向上、審判員選考の適切化のために同様の努力をすることが必要です。これらに関連して、各地で行われる講習の充実が欠かせないことです。

全剣連としては、剣道の活性化を目指すため、審査力、審判力、指導力の向上を合い関連したものとして捉え、講習を充実させていきますが、各剣連でも同様な視点で進められることを期待します。

新年度事業におけるいくつかのポイント

(1)大会は前年度を踏襲しますが、秋の和歌山市での、東西対抗剣道大会には女子の部を引き続き行います。また5月の大阪での都道府県対抗剣道大会は、前年から女子を加えた7人のチームで、総力戦を展開しますが、全剣連は脱皮した歴史あるこの大会をますます盛り上げていく所存です。ただその割には優勝チームへの賞品が貧弱です。そこで大会のシンボルになるような大型賞品を新たに準備しております。

(2)剣道の地区講習会は例年、指導法・剣道形・審判法の三本立てで、画一的に行われて来ましたが、とかく時間不足で講習効果の点で問題がありました。新年度は共催の剣連の意向も加味して、選択制を取り入れることとしました。

若手剣士の強化訓練は、前年高校生も加えて、活発化しましたが、これをさらに充実させます。世界大会の選手強化も加わります。

(3)剣道審査会は七段の地方審査は福岡市で、六段審査には前年の札幌に代わり、久方振りで8月に沖縄が加わります。

(4)剣道社会体育指導員の資格をとって、4年経った方は、更新にあたり講習が必要になります。9月に東京、来年2月に大阪でこのための講習会が予定されています。初級の講習会は本年と同様、7回計画しています。この資格を持つ人への、審査における特典を新制度に織り込むための検討が為されてます。

(5)3年ごとの世界剣道選手権大会は来年3月に米カリフォルニア州サンタクララで開催されます。全剣連は男子、女子の選手、審判員を派遣するほか、国際剣連事務局の立場で、米国剣連と協力して、開催の諸準備に当たるほか、役員も参加します。

(6)居合道の全日本大会は、山形県天童市で開催、前年まで東西で行ってきた中央講習会は、一箇所に戻し、京都で開催されます。また杖道の全日本大会は東京都です。

(7)先月号で触れましたとおり、京都武徳殿の建立100年を記念しての行事を実施しますが、5月の京都での演武大会の際、記念式典も行います。

(8)剣道振興の基盤である調査研究、広報普及などの活動は一層の充実を図るほか、ホームページの拡充などを進めます。

(9)事務の合理化、経費の節減を徹底すすほか、コンピュータの活用をすすめ、特にデータベースの充実を進めます。

健全な編成が行われた新年度予算

平成9年から実施の諸料金の改訂から3年目の予算ですが、昨年度に続き健全な収支予算を組むことが出来ました。ここには料金改定の効果があるわけですが、それにも増して、剣道愛好家の活動の活況があり、審査料、登録料収入が堅調に推移することが見込まれることが主な原因です。

予算の金額は、一般会計収入は6億9百万円、前年度繰り越し7千5百万円を加えた6億8千5百万円が総額です。支出面では運営経費の節約を図る一方、主催、共催事業の充実、必要な財務面の蓄積を進めることとしております。そして収支差額1600万円を加え、次年度繰り越し9千2百万円を予定しています。

ただ収入の構成は、超低金利による資産収入は僅かになり、8割を越える分が料金収入に依存するという、健全とは言い難い状況にあることをご承知下さい。

特別会計のうち、社会体育指導員養成事業は、儲けることは考えないが、独立採算を目指しています。国際関係では世界大会関係費用が膨れ、まだ採算ラインに届かぬ広報・普及関係とともに、一般会計からの繰り入れに依存しています。

新称号・段位規則前進

前号でお知らせしたように、成文化した新称号・段位審査規則は、「見直しについて」と共に、3月11、12日の両日箱根湯本での審議会に提示、大筋の了承を受け、それまでに指摘のあった問題点をも持ち寄って、3月15日の称号・段位委員会で検討を加え、一部修文を行って執行部案を作成しました。

これは3月23、24日の常任理事会、理事会、評議員会の議を経ましたが、「見直し」については了承を得、新しい規則については修文上の意見に検討を加え手直しをすることとして、次回最終決定をするメドを得ました。

新しい審査規則は平成12年度4月から施行されること、11年度の審査は原則的に従来の規則によって行われること、またこれまでに取得した称号・段位はそのまま引き継がれて効果をもつことに、重ねて注意を喚起しておきます。

また議論が多い九、十段の問題については、新審査規則には記載していませんが、本年の5月の一連の審査が終わった以後、本年の下期にその扱いについて検討を加える必要がありましょう。

事業計画の記事でも触れておりますように、剣道の奨励と向上を目的とし、大きな効果が期待される新しい規則の、12年度からの実施に向かって、多くの準備を進めなければなりません。改めてご理解とご支援をお願いしておきます。

今回は諸会議の日程と、原稿締切日との関係もあり、詳しい紹介は次号以後に譲ります。

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