文化の日の選手権大会のあと、剣道界ではいくつもの大会が繰り広げられますが、全剣連は、多数の受審者が挑戦される一連の大型審査の準備と実施に追い立てられます。その皮切りは11月10、11日の名古屋での剣道六、七段審査となりました。
月末の東京での剣道七段審査への集中を緩和すること、東海地区や西日本に在住の方、また東京での平日に行われる審査を受けられない方への便宜を計る目的で、これまでの剣道六段に続いて、今年は愛知県剣連の協力を得て、七段審査も行なうこととしました。
今回の受審者の数を前年に比較します。東京1か所だった平成12年秋の七段受審者1,568名に対し、今年は東京では1,306名に減少し、名古屋で693名が受審、合計1,999名となり、前年のほぼ3割増の方が受審されました。当初予想した3つの効果のほか新規掘り起こし効果も出たと見られ、成功であったと言えます。
一方2か所で行なわれた剣道六段審査の受審者合計は2400名で、前年と全く同数でした。
つぎに人数で剣道に比べて小型の居合道ですが、六、七段審査が、東京・江戸川区スポーツセンターで、11月17、18日に行われ、少ないチャンスに取り組む併せて343人が受審しています。
昨年秋に続く新規則による教士の筆記試験は、11月17日午後、東京、神戸、福岡のほか、札幌を加えた4か所で実施、居合道・杖道を含めて、272人が受審されました。その答案は採点の後、結果を11月29日の称号審査会に付議し審議の結果、剣道228名、居合道22名、杖道1名の合格者を決定しました。
試験は3科目について行い、それぞれの合格点に達しないものは残念ながら不合格とされました。課題をあらかじめ示し、その中から2題を出題して行なわれた小論文試験は、教士の素養を見るために重視すべきというのが、審査会での意見でしたが、予想より悪い成績であったのは残念です。一方準備万端、好成績を残した方が多かったことは、今後に期待を持たせるものでした。
錬士審査は、各剣連からの推薦者と、提出された小論文の審査を行なった上、審査し、剣道466名、居合道80名、杖道10名の新錬士が生まれました。
新規則による称号を取得された方には、お慶びを申し上げるとともに、称号が剣技の力量に併せて、識見、指導力などをも備えた剣道人に授与される、権威ある資格とする、新制度での称号の趣旨を改めて自覚され、自信を持って活動研鑽されることをお願いします。次回の称号審査は来年4月から5月にかけて行なわれます。
今回の審査で目立ったのは、はじめて1,000人を越える多数の受審者を集めた剣道八段審査会でした。まず東京武道館の使用できる時間との関係で運営を心配しましたが、順調に進められ、午後7時には終了しましたが、審査員には重労働をお願いしました。
一次合格97名、最終合格21名ですが、年齢的分布で見て、40才台7名、50才台9名、60才台以上5名の構成は、まずまずの結果と見られます。しかし合格者7名を生んだ40才台の一次合格者は、受審137名の一割弱の13名に止まっていたことは、若手に厳しすぎた結果と見られます。一次審査に対する見方と認識について、検討を要すると感じます。
六、七段でも同様ですが、新制度で60才以上の方には修業年を半分にして受審できる特典が与えられました。この制度を活用して八段に挑戦された方は55名でしたが、一次合格は2名、最終合格者はありませんでした。
今秋の審査会、特に七、八段に多数の受審者が挑戦されたことには、いろいろの見方がありましょうが、剣道界活力の一つの反映であろうと見ます。合格者には一歩前進に祝意を表し、望みを果たせなかった多くの方には捲土重来して成功されることを願います。執行部としてはさらに実行面での改善を進めるよう考えています。
しかし大事なことは審査全体を、妥当に力を判定し、受審者に信頼されるものにすることです。
審査員にもご努力を願っており、今回の審査を通じて、評価の視点が段々揃ってきており、識別が良い方向に進みつつあるように感じています。これが進めば審査員の数は少なくして実施できるはずで、その方向に進むことを問題意識として検討を進めます。
世界での最大の出来事は、アメリカを襲った同時多発テロであり、これに続くアフガニスタンでの軍事行動でしょう。日本も各国と共に関わることになりました。一方依然国内経済不況が続いた1年でしたが、この中剣道界は幸い大きな影響を蒙らずに推移しました。この歴史的な21世紀の初めの年、全剣連から見たニュースです。
昨年ゼロであった新規則による範士。5月の京都での審査会において剣道3名、居合道2名、杖道1名が誕生しました。関係者は一安心です。
文化の日、9年ぶりに剣道特別功労者として、井上正孝、植田 一の両範士が推戴されました。
全剣連は綱紀委員会の報告に基づき、元国士舘大学生の段位剥奪を決定。また刑事事件等に関係して処分をうけた3名についての称号・段位について処分を実施されました。
6月に全剣連役員の任期満了による改選が行なわれました。会長、副会長は再任。専務理事以下は大幅に交替、常任理事とも60才台以下の、剣道界としては若返り人事が決まりました。また普及・教育の推進を掲げ、専門委員会も編成されました。
11月の剣道八段審査会に、1,000人を超える受審者。剣道七段受審者も増加。高段位への挑戦が活発。
医・科学委員会が中心となって編纂した図書、剣道医学Q&Aが7月に出版され、剣道界としてはユニークなものとして好評。
5月の全日本都道府県対抗剣道大会で、地元大阪府が3連覇、優勝兜は依然地元から動かず。昭和60年の宮崎県に次ぐもの。
新規則にない自発的称号・段位の返納の取り扱いを決定。森島、石原両氏が剣道九段を返納。
海外剣道も盛況が続く。3月に京都の演武大会と似た、パリ大会を仏剣連が独自に計画、実行。日本からも応援の剣士を派遣。9月にはシンガポールで久方振りでアセアン剣道大会が開かれました。
二、三段までの剣道初級者の基本技術を高めるための技術システムを作ろうと作業部会を設けて立案を進めてきたが、部会案が概成。今後の検討を経て普及を 考えます。
昨年も長年剣道の発展に努力されてきた方々を失いました。長年のご功績を偲びご冥福を祈ります。
高野 武氏(元審議員) | 1月 |
川崎 道男氏(元理事) | 3月 |
羽山幸二氏(千葉県剣連会長) | 4月 |
ヤコブレフ氏(ロシア剣連会長) | 5月 |
山崎 高氏(功労賞受賞者) | 6月 |
武藤英雄氏(元全剣連事務局長) | 6月 |
堀内肖吉氏(功労賞受賞者) | 7月 |
奥山麟之助氏(功労賞受賞者) | 7月 |
(1)11月の剣道八段審査で、最年長73才で見事難関を突破された小澤弘太郎さん、驚くなかれ本職は、東京・四ッ谷の有名な鯛焼き屋の経営者、新宿区区会議員も勤められる剣道界の変わり種です。いずれ「剣窓」にも登場していただきますが、合格を目指す方、試食されてはいかがでしょう。
(2)1月号ということで新しい年のお慶びを申しあげますが、発行日が繰り上がって、執筆時は歳末の実感もでない12月上旬です。新年らしいことは来月回しとします。