どこの組織でも同様ですが、新しい年度を間近にして、全剣連もそれぞれの分野で、来年度の仕事の進め方を検討し、集約して事業計画と予算を作成します。いくつもの会議、打ち合わせを重ねて、3月19日の理事会、評議員会で決定を求めて、新年度の業務に取り組みます。
さて前年度の全剣連50周年の事業は、出版関係の一部を残して概ね順調に終えることができました。大きな区切りとなる年度を終え、心機一転して、剣道の長期発展に思いをいたしつつ前進を図るべき、ポスト50年の初年度です。
しかしここ数年とりあげている事業方針の基本部分は、変更を加える必要はないと考えています。すなわち試合、審判、審査の内容向上を図ること、指導、教育の充実と相俟って、質の高い剣道を育て普及して行くことであり、それらを通じての人造りを進めることです。
そこで来年度の課題は、事業内容の質的向上の実現ですが、それを可能にする準備が整ってきたことに大いに期待を持っています。まず何年かの調査と研究を経て完成したいくつもの講習資料があり、これらを活用して行う講習内容の向上です。またすでに第2期に進んでいる、社会体育指導員養成事業の進展も、各地で普及の面での効果を表わし始めることも期待されます。
つぎに審判講習の進展による、審判員の技量の向上から、試合の内容の改善が進みましょう。また審査の充実が進み、審査員の眼力の向上が、正しい評価になって表れ、審査に対する受審者の信頼を増していって欲しいと思います。
これらの分野での前進が、各剣連の段階や、津々浦々の現場に及ぶ、剣道界のポスト50周年の初年度になることを願っています。
以下新しい内容のいくつかの行事を取り上げます。
新年度はじめての大会が、新事業の八段大会です。これはこれまで博物館明治村によって26回続けられてきたものを、全剣連が継承したことは前号でお知らせしました。全剣連で取り上げるにあたって、選手選考、組み合わせなどは慎重に行い、顔触れ、組み合わせを決定し、この号に紹介しています。立派な実力ある剣士揃いの大会は、事業として意義ある内容となることを確信しています。
選手選考の経過を記します。まず年齢の上限は60才としました。選考に当たっては全国に亙り、11名の選考委員を委嘱、新しい八段戦にふさわしい候補を180名余りの該当者の中から32名の推薦を依頼しました。
それぞれの委員から適切な推薦をして戴いており、過半数の委員からの推薦を得た剣士で、ほとんどの出場剣士を決め、数名を次点グループから、地域も考慮して補充して決まりました。組み合わせに当たっては、同一都府県の者が、いきなり当たらぬよう、通常行われる配慮をし、その他無作為に組み合わせを行いました。入場券の前売りもすでに行われています。4月13日の大会が待たれます。
剣道六段審査会を、8月22日に那覇市で行います。そしてこの審査会に続く、23日から3日間、社会体育指導者養成講習会を初めて同地で行うことにしました。地理的に不便な沖縄県の剣道愛好者が、審査、講習を受けやすくなることを狙いとしています。これまで地区講習会に続いて行っていた、居合道六、七段審査会を、講習会の前に行うよう日程を組みました。講習会に参加した受審者と審査員との事前接触による、審査の公正を疑われることが起こらないよう配慮したものです。
第12回世界剣道選手権大会が、7月4日から英国グラスゴーで開催され、各国からの参加が予想されます。日本は、男子、女子の選手団を送りますが、これらの選手に対する強化訓練が組まれ、すでに始まっています。また大会の後、剣道七段以下の外国人剣士に対する日本の段位の審査が行われます。
また世界大会に備える意味で、4月に各国の審判要員を集め、成田市で3日間の審判講習会を行い、大会における審判内容の向上を図ります。そして例年の夏行っている、外国人指導者講習会は、今年は取り止めます。
女子審判講習会は、今年は西日本、姫路市で開催します。
持ち回りの大会を紹介します。東西対抗剣道大会は、9月28日に大津市、国体の剣道大会は10月28日から藤枝市、全日本居合道大会は、10月18日に埼玉県秩父市、全日本杖道大会は、10月12日に東京都でそれぞれ開催されます。
このたびの称号・段位審査規則の改正において、審査会場に審査委員長をおき、また審査場ごとに審査主任をおくことを規定しました。これはこれまで審査会での運営を明文化して、適確な運営が行われるよう定めたものです。
審査会では役員などの責任者がおり、全体の運営を取り仕切っていますが、それを審査委員長として役割をはっきりさせたものと理解して戴きたいと思います。委員長は、審査規則に基づき全剣連の審査の場合は全剣連役員の中から、加盟団体の行う審査の場合はその剣連の理事の中から、会長より任命されます。一般理事以外の副会長などが当たることは可能です。
また各審査場ごとに審査主任をおき、当該審査場の運営に当たりますが、これもこれまでも専任の方が、開始、終了に合図をするなどの役をしていますが、それを成文化したものです。
委員長、主任の役割は、審査規則の細則に記されています。審査委員長の任務は、会場全体の秩序の維持に気を配り、円滑、適正に進行管理を行うことが主な仕事で、事務方や係員の指揮はしますが、審査の判定や評価に審査員を指揮することはできません。
審査主任も同様、進行管理が主な仕事で、判定・評価について、審査員に指示することはできないことを承知して戴きたいと思います。これらは、規則、細則をご覧戴ければ分かりますが、誤解のないように申し述べておきます。その他審査員全般としての守べきことを、倫理事項を含めて、明文化しています。これについての説明は次の機会に譲ります。
剣道に比べて目立ちませんが、杖道の分野でも、仕事が進みました。昭和43年に制定された全剣連杖道の、当時作成された解説書の見直しが行われ2年間の杖道委員会の研究の結果、今般完成来年度から普及段階に入ります。
これは表現、解釈の不明確、疑義ある点について見直しており、所作などでは剣道との整合性にも留意しております。剣道の分野での見直しに劣らず、取り組まれた杖道委員会の各位のご努力に感謝し、杖道の今後の普及、発展に役立つことを期待します。
恒例の会議を去る3月5、6日に箱根湯本で開催、執行部側より新年度の事業方針、纏められたいくつもの資料や規則案などについて、説明と提案を行うとともに意見を交換、それぞれ了承されました。今回は全国から14名の審議員全員の出席があったのは何よりのことでした。
大阪教育大学の会議室で、3月8日に開催された、資料西日本小委員会に出席の機会を得ました。資料小委員会は東西に設けられ、それぞれ地域に則した活動を行っています。委員のコツコツと続ける努力の積み重ねで、作業が行われており、専門委員会中のでは地味な存在ながら、蓄積が進んでいます。これらのグループの方々の協力によって、記念出版「剣道の歴史」もできました。日本文化の所産である剣道の歴史的側面を探る活動の充実を今後とも期待しています。現在取り上げている、新聞を通じて見た明治にはじまる「5月の演武大会の記録の集約」など、興味をそそられるものでした。
大阪湾岸の舞洲アリーナで開催された、中級認定と初級更新の講習会で、14年度の社会体育指導者養成の講習が終わりました。初級取得者累計3,800人余、中級取得者900人という実績です。参加した受講者の真剣さには、主催者や講師も励まされるものがあります。この事業、講習としては成功していますが、剣道界における資格取得者の活用の面ではまだまたの状態です。今後の全剣連の普及・教育事業の中の柱と位置付けていますが、さらなる展開を行うに当たり、これまでの資格取得者へのアンケートを行う計画ですが、ご協力戴くことを期待します。
2月に刊行された記念出版「剣道の歴史」、購入の申し込みの出足が良く、担当者が嬉しい悲鳴をあげています。ぜひ剣道愛好者の座右の書に加えて戴きたく存じます。「全剣連五十年史」、「高段者名簿」「剣窓復刻版」など4月までにつぎつぎとお目見えします。ご期待ください。