ようやく梅雨も明け、夏を迎えました。世界各地の災害、原油問題に続いて、食料、原材料の値上がりなどの世界経済を揺るがす当面の諸問題を抱える中、列国首脳が集う北海道洞爺湖サミットが開かれ、地球環境問題への対応が大きく取り上げられました。議長国日本としては、まずまずの成果を収めたと言えるかと思います。
資源問題とともに、地球温暖化への対応は、わが国として今後長期にわたって努力を必要とする大きな課題です。お互い国民としてもその対応に、身近なことから努力が必要です。
例年どおり夏は多くの大会や行事で、剣道界は気分が盛り上がる時期です。今後の剣道の発展につながるよい成果が得られることを念願します。
指導力の向上を重視している本年度事業において、指導法講師要員の研修会を取り上げ、6月28、29の両日、勝浦の武道館研修センターで開催しました。取り合えずは従来から継続している審判法講師要員研修会と併せて開催しました。各地で指導の中心となって活動しておられる24名の八段範士、教士の方に参集を求め、それぞれ熱心に研修頂き、第1回としての成果を収めました。
ただこの研修会、十分な成果を収めたと、手放しでは言いにくいもので、いくつかの課題を残しました。
すでに軌道に乗っている審判法講師要員の研修の場合と異なり、指導法研修には、その対象と段階の多様性があり、その手法と原則が絞り難い難しさがあります。
この研修を全剣連として本格的に取り組むことにし、要請された方々が積極的に参加頂いたことは多とするものですが、今後効果をあげていくためには、さらに周到な準備が必要と思われます。当面必要なのは「『指導法』の指導法」の研究を高めていくことにあると言えましょう。
社会体育指導員講習会を受講され、初級を取得された方は、10余年の累計で5千名を越えています。資格を受けた方は、4年の有効期限の後に、上の中級を受験するか、講習を受けて更新の手続きを取ることが必要で、これを怠ると資格失効になります。
実態を調べますと、手続きを取らずに失格となっている方は1,650名に上っております。剣道界全般の指導力を高める上で、眠っている人材の活用を図ることが必要であり、失効している方に対しアンケートを行いましたところ、復活を望んでいる方が、3分の1おられることが分かりました。
中学校体育の武道必修化の動きの中で、意欲ある人材の掘り起こしを考えることとし、この際運用を緩和し、失効者の内の希望者は、講習を受け更新できることにしました。
その結果、本年度これまで行われた東京都、大阪市、福岡県宗像市での社会体育指導員養成講習会において、350名が更新講習を受けて、資格を更新されました。9月の山形県寒河江市での講習でもこれに続く方が相当数見込まれています。
これらの蘇った方が研鑽を積まれ、地域での指導に力を発揮されることを願っています。
7月5、6の両日、大阪市難波の大阪府立体育館で、標記大会が行われました。第1日は女子の部、2日目に男子の部があり、それぞれ各ブロック大会で選ばれた剣士による優勝大会のトーナメントがあり、選抜選手による東西対抗戦も行われました。
男子大会は講和条約発効後の昭和28年に第1回を行い、今回は第56回の歴史を重ねています。春の個人選手権、秋の団体戦を東京、大阪で交互に開催していることはご存じのとおりです。
全国から集う200名におよぶ学生剣士が覇を目指す大会で、終始活気ある熱戦が続いた結果、関東大会でも優勝した、畠中選手(國士舘大)が勝ち抜いて、大石選手(大阪体育大)を下して優勝しました。畠中選手は全剣連が行った骨太剣士養成講習対象者に選ばれており、実力養成の効果も現れていると言えましょう。
試合はいずれも整然と行われ、学生らしい大会と感じました。
先輩が当たる審判も的確に行われ、この面での向上ぶりは、顕著なものが見られました。
元千葉県剣連会長、全剣連顧問の和田 金次さんが、7月2日に故郷の千葉県館山市で亡くなられました。7月末の満100歳の誕生日の直前のご逝去で、天寿を全うされたとは言えましょうが、剣道界の長老を失ったことは痛恨の極みです。
和田さんは、安房中から早稲田大学に進まれ、学生剣道の雄として活躍されました。昭和8年6月の全日本学生剣道選手権大会では決勝戦において、後の全剣連会長となる市村 功(後の大島 功、東大)と覇を争われた試合は、名勝負として広く語られました。
卒業後は満州で勤務されましたが、戦後は郷里で農村青年の育成など、地元農業の発展に尽力され、平成11年には館山市名誉市民に推挙されました。
この間剣道の発展にも尽力され、千葉県剣連の会長、全剣連審議員、顧問を務められました。全剣連は表彰制度ができた平成7年に真っ先に剣道功労賞を差し上げ、長年の功績に報いました。
東京・代々木のオリンピック記念青少年記念センターで毎年7月の上旬に行われているこの行事は、全国から教育系大学・学部の学生の大会であり、地味なものではありますが、着実に続けられ、大きな役割を果たしてきております。
今年も7月6日より4日間、全国から20余の大学が参加、ゼミナールと剣道大会を実施しました。全剣連も今後の教員の養成における役割を期待し、大会の共催者となるほか、財政面でも支援を続けてきています。
運営はすべて学生主体で行っているとのことで、今後の剣道人材の養成における効果を期待しております。
年度当初の歴史ある剣道大会ですが、盛り上がりの点でもう一歩の印象を拭えない、全日本都道府県剣道優勝大会の活性化を図るため、選手構成を見直してはとの意見があり、検討を始めました。大会が始められた戦後の時代と大きく変わってきている状況を反映させようということです。
近年盛んになっている高校生を加えれば人気的にも盛り上がるのではないか、またはっきりした出番がない学生にも機会を与えたら、という意見の具体化のための検討が始まりました。
チームの人員は、10年前に女子の代表2名を加えて7名にしており、これ以上増やすわけには行きません。結局夏の全国家庭婦人大会を含め、全体の枠組みを見直すことになりました。
すなわち4月29日の現行の大会を男子だけの都道府県大会とし、高校生と学生に1名ずつの枠を与え、残りの5名の構成を見直すことになりました。
つぎに7月の全国家庭婦人大会を、4月に並ぶ女子都道府県対抗大会に改組し、高校生、学生の枠を与えて、他を見直します。
現在この案で執行部の意見がまとまりつつあり、成案を作り各方面との意見調整を行い秋に結論を得て、来年度から実行に移す計画でおります。取り合えずお知らせしておきます。
前の記事のように、和田 金次範士が100歳を目前に亡くなられました。長寿日本の剣道界での八段、範士以上の最長老はどなたかと見ますと、北海道・上川郡下川町に居住の石川 政勝範士八段で、明治39年1月3日誕生の102歳と分かりました。現在、足が少し不自由ながらお元気とのことです。
石川さんは戦前は陸軍で剣道を修行され既に錬士号を取られ、戦後は野にあって励まれ、昭和45年に剣道八段に合格、同55年に範士に昇格されました。
ここにご長命をお慶びし、ご健勝を念じます。なお残念ですが、範士、八段以上の方で、100歳以上の方は他におられません。
前触れが続きましたが、『剣道指導要領』がいよいよ7月23日より発売されます。1冊2,800円ですが、全剣連としては珍しく商売気を出しており、平成21年1月31日まで期間割引価格2,520円でお分けします。
ご利用頂くことをお勧めします。
会 長 武安 義光