2011年1月号

年間購読のお申し込み

もくじ

  • 日本の伝統文化である剣道の発展を進めたい/武安 義光
  • 平成22年度剣道功労賞贈呈式・第9回剣道文化講演会開催
  • まど・282回/武安 義光
  • 審査会特集
    □称号・段位審査会合格者
    □剣道八段審査会の分析
  • 第29回全日本女子学生剣道優勝大会/作道 正夫
  • 第59回全国青年大会剣道大会
  • 新連載・第1回 全日本剣道道場連盟コラム/中村 福義
  • 〈2010年日墨交流400周年記念事業〉メキシコ合衆国派遣日本武道代表団 剣道報告/岡本 淳
  • ヨーロッパ第17回居合道大会および講習会・審査会/岸本 千尋
  • 国際関係コラム・99回
  • 平成22年月刊剣窓総目次
  • 段位審査における安全対策について
  • 杖道七および六段審査会(東京)要項
  • 随筆 女性が行う少年指導/箕輪 聖子
  • 平成22年度第3回男子・女子強化訓練講習会
  • 全剣連後援 剣道講習会・平成22年度全国剣道指導者研修会
  • 14WKC日本選手団に文部科学省から顕彰と表彰

年頭所感

平成23年「年頭所感」―日本の伝統文化である剣道の発展を進めたい―

takeyasu2011.jpg

明けましておめでとうございます。

昨年の新年号のご挨拶では、「各層の指導力充実で成果を収めたい」と申し上げました。今年もこのことをさらに進めていくことには変わりありません。また中学校体育に武道が必修科目として加わる年も目前に迫ってきており、準備体制への進展が見られるよう、全国の剣連がラストヘビーをかけて行くことを期待します。

指導力の増強のためには、かねてトップクラスの剣道指導者の充実に力を入れております。このため剣道講師要員研修事業を続けており、この方々がまず力を発揮して、各地の剣連の各段階の講習の充実を進めていくという方策を取ってきています。これは一見迂遠なやり方のようにも見えますが、全国的に指導力増強に効果を収めつつあると見ており、今後も続けていく方針です。

本年度の講習では、(財)全日本学校剣道連盟が全剣連の支援の下に、各ブロックで行ってきている、中学校教員を対象とした剣道教育のための講習会が、大変受講者にも喜ばれ、効果を収めているようですが、さらにこの事業に力を入れたいと思っています。

中学校での剣道教育の採用に当たっては、剣道具の入手に困難を感じる場合が多いのですが、剣道具がなくても形の教育などで、初期の教育はできることを承知してもらい、多くの学校で剣道教育に取り組んで頂くことを期待しております。

さて中学校での正課採用は、剣道普及への大きなチャンスですが、剣道界としては、初級者への普及にとどまらず、剣道人の活性化、そしてすぐれた剣士の養成にも努力し、全般の実力向上を進めていくよう、諸般の事業を進めて行きます。

剣道に取り組む人々が剣道のみでなく、社会人として充実した活動を行っていくよう、剣道を通じての人造りを進めることが、全剣連の活動の最終目標であり、この点を忘れる事なく本年も努力します。このために社会一般の剣道への理解と関心が高まることが大切で、そのための努力も怠ることなく進めたいと思います。

また国内での活動から海外にも目を配り、すぐれた特性を備えた剣道を世界に普及し、その恩恵を受ける人を増やしていく努力も怠らず続けていく方針でおります。

さて剣道が日本の文化として育ってきた歴史に触れておきます。剣道はもともと刀の操法である「剣術」として発達しましたが、武器としての地位が低下した江戸時代に、竹刀・防具などの工夫があり、打ち込み稽古・試合が可能になり生まれ変わりました。

社会の諸制度が変わった明治以後も受け継がれ、その後学校教育にも取り入れられるようになりました。そして教育的効果も認識され「剣道」と呼称されるようになったことはご承知の通りです。

正しく剣道は日本で創られた文化の所産です。ただ、これは昔からの文化財と違うところは、内容的に進歩高度化を続ける文化でなくてはいけません。

試合偏重にならぬよう基礎を重視した「指導法」、試合の判定を的確に行う「審判法」、奨励のための「称号・段位制度」。これらは剣道文化のシステムを形作る重要な要素ですが、その内容を高め、伝統に発した日本の剣道を「剣道の理念」に沿って充実を進めるべく、全剣連は本年も努力を重ねたいと思っています。

大方のご理解とご支援をお願い致します。

会 長 武安 義光

今月のまど

恒例の文化講演会の日(12月4日)は天候に恵まれ、九段坂の銀杏の彩りは見事でした。午前の剣道功労賞の贈呈式と併せて、年内の主な行事は一段落するところですが、この所は農閑期どころか、次々と行事に追われる年の瀬です。

6日(月)には年内最後の合同稽古会が日本武道館で行われました。この日は元立ちの八段剣士は並び切れないほどで、最後お互い同士の稽古で締めくくりました。

12月は講習のシーズンでもあります。2日(木)からは勝浦市の日本武道館研修センターで行われた女子強化訓練に続いて、16日(木)からは仕上げも近付いた第三期生の選抜特別訓練講習会(通称・骨太剣士講習会)57名が、東京・夢の島の「ぶんぶ」に集い、4日間の錬成を行います。社会体育指導員初級養成講習会は、10日(金)から和歌山県岩出市で行われ、さらに講師要員(試合・審判)研修会が23回目を迎え、八段・範士24名の参集の下、日本武道館研修センターで18日(土)・19日(日)の両日行われます。

各剣連も1年の締めくくりにそれぞれお忙しくしておられましょうが、来年にはさらなる発展を実現しましょう。

政治の混迷、政府の迷走ぶりが目立ちます。「まど」として深入りを避けますが、次号にはマスコミの論説紹介として登場するでしょう。「まど」は例年の構成で年を終えます。読者の皆さん、健康で良い年をお迎えください。

平成22年を振り返る全剣連・剣道界の主なニュース

①スポーツアコード武術大会(コンバットゲームズ)が北京市で開催され国際剣道連盟として参加、日本からも役員・審判員・選手を送る

大会には13の団体が参加、それぞれの会場で実施。剣道は試合を重点とせず、その文化的価値を一般に理解して貰うことを主眼にして、演武・試合を組み、1日半の日程を終えました。一般の理解を深める上で、かなりの効果を収めたものと見ています。大会を取り仕切ったのは日本の担当者で、大変ご苦労頂きました。この大会、第2回をロシアで行なうことが予定されています。

②全国家庭婦人剣道大会を全日本都道府県対抗女子剣道優勝大会に変更、全日本都道府県対抗剣道優勝大会を男子のみの大会に改め、生れ変わった内容の両大会定着

組み替えを行なって2年目を迎えて軌道に乗り、両大会とも充実した白熱戦が展開されました。

③全日本剣道選手権大会は高鍋(神奈川)が、連覇を狙う内村(東京)を決勝戦で下し初優勝を飾る

第58回標記大会で高鍋 進が内村良一との決戦を制しました。試合内容も充実し、日本武道館は満員の観客を集め、剣道大会ならではの整然・静粛の雰囲気で試合が展開されました。一般の関心も高く、NHK放送も従来を上回る5%の高視聴率を記録しましたし、公式Webサイトへのアクセス数は3つを合わせて、前年より激増の30万を超し、一般の関心の高さを示しました。

④全日本女子剣道選手権大会は石突小百合(東京)が初優勝を飾る

9月に静岡県藤枝市で開催の標記大会で石突が初優勝。村山千夏(埼玉)の連勝、5度目の優勝成りませんでした。この大会の会場は、次回から静岡を去って、姫路市の兵庫県立武道館が舞台となります。

⑤両選手権大会の優勝者の次回大会への優先出場の慣行を廃止

これまで長らく選手権大会優勝者は、次回大会に無条件出場を認めてきました。しかし選手権大会はあくまで、その年の優秀選手として、各剣連での予選を通った者で争うべきとの正論に立ち返り、この慣行を廃止することにしました。

また5年ごとの出場枠の一部見直しを行ないました。

⑥千葉国体剣道大会で千葉県が4種別完全優勝を達成

⑦社会体育指導員養成講習会上級の受講資格を改定

制度発足以来15年を経て、一層の普及を図るため、受講資格の一部変更を行ないます。上級受講はこれまで剣道七段以上・年齢45歳以上でしたが、これを錬士六段以上・年齢40歳以上に緩和し、受けやすくなります。なお中級受講資格は、年齢28歳以上から2年切り上げられ30歳以上に改められます。

⑧新公益法人制度への移行の準備進む 新法人の評議員選定委員が決まり、一般法人としての定款の試案成る

新制度への移行期限は25年11月末と多少の日がありますが、23年上期に新体系への移行の申請を行うこととして準備を進めています。22年には一般法人として進む方針が決まりました。その後新法人の評議員選定委員を決定。さらに11月2日(火)の理事会・評議員会にまとめた定款の試案を提示しました。この案は今後各地区別に説明会も行い、理解を得ると共に、意見の聴取も行い、本年度中に決定に持ち込みたいと考えています。

⑨本年度段位取得者数は前年を上回り滑り出し好調

先般まとめられた本年9月までの上期の決算の数字で見ると、段位取得者の数は前年を4%上回り、好調な滑り出しを見ています。また全剣連が実施する六段以上の審査への挑戦者・合格者数も増加しており、これらを反映して収支の面は、前年に比較して順調に展開しており、経済不況の折から明るい展開をしております。年度としてこの好調が続くことを願っています。

⑩2015年に行われる第16回世界剣道選手権大会の東京での開催を立候補

世界剣道選手権大会の開催地はこれまで世界の三大陸の持ち回りで3年ごとに開催してきました。前回のサンパウロ(ブラジル)の大会の際に次の開催地のノヴァーラ(イタリア)が決まっています。 その後の開催地は立候補制で決めることになりました。その第1回となる2015年の大会を、東京で開催するよう全剣連は立候補し、国際剣連に申し入れました。会場は日本武道館を希望しています。開催地は来年イタリアで開催される理事会で決定されます。

敬弔 昨年の物故者

昨年は剣道界に功績のあった次の方々を失いました。
謹んで哀悼の意を表したく存じます。

片岡 守氏 剣道教士 全日本学生剣道連盟代表理事 全剣連参与 会社役員 02月05日 70歳
小川政亮氏 剣道範士 東海学剣連名誉会長 平成11年功労賞 02月09日 96歳
ワーナー・ゴードン氏 剣道教士 沖縄在住 平成12年功労賞 03月04日 97歳
羽賀忠利氏 剣道・居合道範士 元全剣連常任理事 静岡県在住 平成10年功労賞 03月07日 92歳
渡辺謙輔氏 元全剣連顧問 元トウベ社長 03月05日 84歳
宗像善俊氏 元全剣連副会長・専務理事 元公正取引委員会委員 06月03日 83歳
谷鐐吉郎氏 剣道範士 元全剣連相談役 元愛知剣連会長 平成20年功労賞 06月06日 89歳
賀来俊彦氏 剣道範士 元全剣連審議員 元大阪府警主席師範 平成21年功労賞 03月07日 92歳

平成22年の「まど」の内容

新年巻頭言 ・「各層の指導力充実で成果を収めたい」
01月号 ・秋の一連の審査会終わる
・平成21年を振り返る
・全剣連・剣道界の主なニュース
02月号 ・年頭の新聞論調
・少年錬成への歴史ある若鷲旗大会
03月号 ・22年度事業の基本方針と具体的展開
・社会体育指導員養成事業15年
04月号 ・22年度事業計画決定
・収支予算の概況
05月号 ・指導力強化の役割を担う剣道中央講習会の沿革と今後
06月号 ・役割を果たした全日本剣道演武大会とその歴史を振り返る
07月号 ・前年度事業を振り返る公益法人制度改革に当たり、全剣連は一般法人指向の方向を決める
08月号 ・全日本学生選手権大会の熱戦
・旧制高専剣道大会35年の幕を閉じる
・矯正管区少年剣道大会
09月号 ・都道府県対抗女子大会充実
・夏の華を見せた少年少女錬成大会
10月号 ・初めての世界武術大会が北京で開催
11月号 ・秋の三大会活発に行なわれる
・国体は地元千葉県完全優勝
12月号 ・総合的に見て良い大会であった、全日本剣道選手権大会
・新法人体制における定款試案を提示

断 片

①このたび剣道功労賞を受けられ、ご夫妻で12月4日(土)の贈呈式に来日されましたカナダのロイ・アサ(阿佐忠義)さん。平成7年の第1回剣道功労賞を受けられた阿佐 要さんはご尊父に当たられます。親子二代にわたる受賞は初めてのことです。

②「剣道かるた」が、このたび『剣道時代』より出版発売されました。作者は元全剣連事務局の事業部門統括主幹・川野雅英さんです。正月を迎えご一覧ください。

会 長 武安 義光

ページトップへ

  • 全日本剣道連盟公式Facebookページ
  • 全日本剣道連盟公式Twitterページ
  • 全日本剣道連盟公式Youtubeチャンネル