昨年の日本経済は、堅調な企業業績や雇用情勢に支えられ緩やかながら回復を続けました。また、外国人の訪日観光客も大きく増加しており、日本経済に好影響を与えております。 2016年は中国を始めとする新興国経済の不透明さ、昨年のパリ同時テロに代表される地政学的なリスクの高まりが日本経済に小さからぬ影響を与えるであろうことは否定できませんが、安倍政権の掲げる「新三本の矢」「地方創生」等の政策が実行段階となり、日本経済の本格的な回復に向けて大きな支えとなることを期待します。
このような状況の中で、昨年5月には第16回世界剣道選手権大会が日本武道館で開催され、世界56カ国・地域が参加いたしました。同時に女子の世界選手権も開催され、各国・地域および各選手が自分の持てる力を発揮し、実力伯仲大いに盛り上がり、マスコミにも大きく報道され、日本中に剣道が改めて注目されました。 この大会を目にし、世界中に剣道が普及しつつあることを身を以て感じたのは私だけではないと思います。この大会を準備された方、また、当日武道館で支えて下った関係者の皆様に心から感謝申し上げます。 申し上げるまでもなく、剣道は日本の歴史の中で培われ、今でも日本人の精神文化の上に成り立っているものです。礼儀・作法にのっとり、相手を敬い、正々堂々と技をつくす。日々の厳しい稽古の中では師匠や先輩から技だけでなく心の修養までも見ていただく。その結果、少々のことでは動じない、強い精神力を持った人間に成長する。 これは剣道に限らず武道全般に共通するものかと思いますが、日本人のみならず世界の多くの国の方々にも理解される万国共通の価値観であると改めて思いました。 今後とも世界中で剣道の愛好家がゆっくりではありますが確実に増えていくことでしょう。日本の剣道はそのお手本として更に頑張らねばと心新たにした次第です。
国際的普及の進展と並んで、我が国の女性の皆さんの中にも剣道愛好家が増えていることは大変嬉しく、全日本剣道連盟としても大歓迎しております。 昨年も各地の大会での女子剣士の活躍は目ざましいものがあり、今後もますます女子剣道が盛んになるものと期待しております。 本年はこの流れに添って、「女子剣士の指導力並びに技術力の向上」をテーマに、第1回女子剣道指導法講習会を行います。また、「骨太剣士養成講習会」の女性版として、「女子剣道選抜特別訓練講習会」の開催も企画中であり、全日本剣道連盟としても女子剣士の一層の活躍をサポートしていきたいと思います。
最後に、自分の経験からも申し上げることができますが、剣道は厳しい稽古を通じて体と共に心の成長を促します。このことは特に若いころに顕著だと思います。 次の日本を背負って立つ若い人々に一人でも多く剣道をやっていただきたいし、稽古を通じて立派な人間になってほしい。そのためにも今現在ご活躍の先生方にはこれまでに増しての熱心なご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。