平成24年4月1日をもって、財団法人全日本剣道連盟は、新法人「一般財団法人全日本剣道連盟」に移行した。これは、新しい公益法人関連三法が平成20年12月1日に施行され、従来の公益法人は、施行日から5年以内(平成25年11月末まで)に一般社団・財団法人か、公益社団・財団法人に移行しなければ解散するほかないとされたことによる。
平成24年は全日本剣道連盟設立60周年にあたり、大きな節目と重なった。
歴史を振り返ってみると、戦後戦力の育成に資するものとして弾圧されていた剣道は、昭和26年9月の講和条約締結を機に復活の動きを強め、各都道府県単位の組織が続々と結成されていった。昭和27年4月独立国として主権を回復したが、昭和27年9月全剣連結成の招請状が出された頃には殆どの都道府県に剣道連盟が存在しており、昭和27年10月に至り全日本剣道連盟が結成された。昭和31年に居合道、杖道が加わった。その後の驚くべき剣道人口の増加、海外における画期的発展を背景に、強力かつ広範な活動を目指すべく法人格を取得することとなり、昭和47年2月財団法人となる。
こうした経過の中で、構成する加盟団体として47都道府県剣道連盟が位置づけられた。
これまでの全日本剣道連盟では、重要事項は加盟団体選出の評議員で構成される評議員会の同意を得て行わなければならないとされ、評議員会の権限が比較的強かった。
新しい公益法人制度の下、一般財団法人には主務官庁の監督がなくなることなどから、理事の業務執行を他の機関が監督するガバナンス(団体統治)の仕組みが不可欠となった。評議員は、法人の運営が目的から逸脱していないか監督すべき重要な役割を担う。評議員会は、評議員はもとより理事及び監事の選任・解任、さらに定款変更等の重要な意思決定を通じて理事を牽制監督すべきものとされた。理事の監視機関である監事も、広範で強い権限を有する必置の機関とされ、理事会も理事の相互監視を期待して必置の機関とされた。一般財団法人の評議員会、理事会及び監事の持つガバナンス確保・維持に果たす役割と責務は、旧公益法人時代のそれに比べて格段に高まった。
全剣連では、平成21年9月から「長期構想企画会議」において検討を重ね、平成22年6月の評議員会・理事会において「一般財団法人」に移行する方針を定め、さらに平成23年6月の評議員会・理事会において、定款や基本的な規則の案の承認を得た。同年8月「内閣府」に移行認可を申請、本年3月認可を受けて、このほど4月1日付をもって新法人に移行した。
長期構想企画会議に本件が付託されるにあたり、武安会長より指示されたことは「基本に立ち返り、法人としての全剣連のあり方を検討し、新しい時代への対応と進むべき方向を含め、検討すること」であった。
一般法人とするか、公益法人とするかについては、まずは比較的自由な立場で事業が行える一般法人に移行し、その後の諸情勢の推移を見つつ、次の段階で公益法人に進むこととし、これを念頭に定款等の素案の検討が進められた。
こうして得た新定款について、従来と大きく異なる主な点は次のとおりである。
旧財団法人の解散(登記)と寄附行為の失効、新定款や新規則の発効等をもって、従来の寄附行為下の旧「諸規則」は、その有効性に疑義なしとしないこと等から、新法人への円滑な移行に資すべく、念のため旧「諸規則」につき法令及び定款等に照らし最低限必要な補正をしたものを案文として、新「諸規則」を制定したものとみなし、平成24年4月1日付で新たに施行するとともに、移行後速やかに所要の改正を行うこととした。併せて「一般財団法人全日本剣道連盟」の法人名表記に関しても、将来の公益認定や費用合理化等をも勘案し、特に必要な場合を除き「一般財団法人」との法人種別の表記を省略し、「全日本剣道連盟」又は「全剣連」とのみ表記する旨の新規則も制定した。
以上
全剣連常任理事 岡本 淳
* この記事は、月刊「剣窓」2012年4月号に掲載された記事を再掲載したものです。