全剣連アンチ・ドーピング委員会ではこのたび『剣士のためのアンチ・ドーピングマニュアル』を作成しました。この本は、全剣連オンラインショップから購入可能で、PDF版は全剣連ホームページから閲覧できます。
それでは、なぜ全剣連ではこのようなマニュアルを作ったのでしょうか?巷では、「剣道にドーピングがあるはずがない」とか「剣道でドーピングが役に立つとは思えない」などの意見があるようですが、当委員会ではいずれも当たっていないと考えています。
まず、「剣道にドーピングがあるはずがない」という意見ですが、これまで他のスポーツ種目では、「うっかりドーピング」で処分を受けた選手が何人も出ています。これは、選手あるいはその周囲にドーピング防止のための知識が不足していたために、選手自身は違反している意識がないまま、禁止物質を含む「お薬」を服用したり、注射を受けてしまい、そのためにドーピング・テストでクロと出てしまい、処分を受けた例です。これは剣道でも十分に起こりうることです。
次に、「剣道でドーピングが役に立つとは思えない」という意見ですが、実は、最近ではドーピングの方法、目的は多様化し、以前のように反射速度や筋肉量を増すためのものだけでなく、持久力を増やしたり、怪我からの回復を早めたりするためのものなどが出ています。このようなことを狙う選手は、とかく目の前の短期的効果だけに着目するのですが、結果的にはしばしば大きな副作用に見舞われることとなり、選手生命が絶たれたりすることがあります。種目は申しませんが、日本でもっとも人気のあるスポーツの有名選手の一人が実際に筋肉増強効果のある禁止薬物を使い、結局、静脈血栓という重篤な副作用に見舞われたことが報告されています。
このようなことから、アンチ・ドーピング委員会は、2~3カ月に1回程度の頻度で、ドーピング防止に役立つ記事を『剣窓』に載せていく予定です。よろしくお願いします。
アンチ・ドーピング委員会 委員長 宮坂 昌之
* この記事は、月刊「剣窓」2013年6月号の記事を再掲載しています。