アンチ・ドーピング委員会コラム_20

「生活習慣病とアンチ・ドーピングについて」

典型的な生活習慣病として、高血圧、狭心症、心筋梗塞、痛風、糖尿病などがあります。これらは、ストレス、アルコール、たばこや、バランスの偏った食生活などが関係していると言われています。

これらの疾患で使われる薬の中でドーピング禁止薬物とみなされるものがあります。たとえば、高血圧・心不全などで用いられる利尿剤です。これは治療では、むくみを取るためや、不要な体液を排泄させるために使われますが、ドーピングにおいては尿中の薬物を薄めるために用いられます。

痛風で使われるプロベネシドという薬は、尿酸排出を目的に使われていますが、ドーピングでは禁止物質の男性ホルモン製剤・タンパク同化ステロイドの投与を隠蔽する目的で服用されることもあり、禁止薬物とされています。

また、飲み薬でコントロール困難な糖尿病の患者さんに使われるインスリン注射も禁止されています。インスリンは、アナボリックステロイドと一緒に使うとアナボリックステロイド単独で使用するより筋肉量が断然増えるため、筋肉をつける競技において使われることがあり、禁止されています。

ただし、どうしても禁止されている薬を治療のために使わなくてはならない場合は、前もってTUE(治療使用特例)を競技団体(全日本剣道連盟)に提出しなくてはなりません。

剣道では全日本剣道選手権大会や世界剣道選手権大会だけではなく、毎年開かれている国民体育大会(国体)においてもドーピング検査の対象となっています。国体では、これまでは比較的年齢の低い選手が検査の対象になってきました。しかし、いつ副将や大将の年齢層の選手がドーピング検査対象に選ばれるか分かりません。若い選手より年齢の高い選手の方が、前に述べたような薬を使用している可能性が高いので、うっかりドーピングにならないように自分の使っている薬を十分に理解することが必要です。

アンチ・ドーピング委員会委員 門野 由紀子

この記事は、月刊「剣窓」2017年11月号の記事を再掲載しています。

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