腰痛の誘因・原因―剣道家の腰痛―

Question

指導している高校剣道部では腰痛を訴える学生が多いように思います。なぜ腰痛は起こるのでしょうか?(38歳男性)

Answer

人間の背骨(脊椎)は7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、1個の仙骨と数個の尾骨で形成されています。2本足で歩行するため、脊椎は横から見ると、S字状、腰の部分は前方凸にカーブしています。これを腰椎の生理的弯曲と言います(図1)。その弯曲が増強し、腰の反りが強くなると、腰痛を起こしやすくなるのです(図2)。

図1側面からみた脊椎・図2腰椎の前弯が増強すると、腰痛が出やすくなります

剣道と腰痛

剣道では、腰痛は15〜17歳頃から急増し、10代〜20代の競技者の約20〜30%に腰痛の経験があると言われています。その後も中高年層にわたり、腰痛を訴える剣道家が多く存在します。

剣道の構えや動きは左右非対称です。右上下肢が前、左上下肢が後ろ、体幹をまっすぐに構え、打突時も同様に左右アンバランスな動きとなります(図3)。そのため腰に負担がかかりやすいと考えられます。

図3打ち込み・体当たりでの腰椎前弯の増強

腰痛の原因

腰痛は、特に体当たりと打突の動作で生じやすいと言われています。体当たりでは、腰を入れて(腰を前弯させた状態で)相手に強くぶつからなくてはなりません。腰が引けていては有効打突にはならず、中段の構えの時も、姿勢よく立とうとするとやはり前弯が強くなるのです。剣道の特性として、腰椎に負担のかかりやすい姿勢をとる種目、と言うことになります。さらに稽古を積むと、背筋部分が強化され、そのことで体幹運動の協調性を阻害する結果(腹筋とのバランスの崩れなど)、腰痛を生じやすくなります。

剣道では、打ち込み・かかり稽古など直線的な腰椎屈曲伸展などの反復動作が多く、特に学童期では、身長差のある上段者にかかることが多いため、前弯が増強される状況にあり、腰をそる動作の繰り返しが負荷となり、腰椎分離症(Q68参照)が生じやすいと考えられています。体の硬い人は、さらにそのリスクが高くなります。成長期では不十分な筋力のままの稽古量の増加が、中高年では腰椎の加齢変化・筋力低下も腰痛発生の要因となります。

秋山 知子(渕野辺総合病院整形外科)

剣道医学Q&A(2014/12発行)」より抜粋

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