救急箱の内容(大会時救急を目的として)

 救急箱に必要な内容は目的により非常に異なります。大会本部として準備する場合、部活動などで日々利用する場合、合宿など集中的に厳しい稽古を行う場合などで異なります。たとえば全剣連の強化合宿ではほぼ全員の講習生が関節や筋肉の痛みを有しており、非常に大量のテーピングテープを使用しますし、ほぼ全員が稽古終了後にアイシングバックに氷を入れていためたところをアイシングします。また多くの内服薬も準備します。これほどの準備は高校以上の学校や実業団、警察では必要と思いますが今回は大会主催者が準備するもの(応急処置目的)として紹介します。

 剣道では切り傷、擦り傷は比較的少なく、血まめができたつぶれた、足の裏の皮がむけた、爪がはがれたなどがよく見られます。現在はこれらの外傷に対しては消毒薬はあまり使用しません。傷の治りが遅れるからです。基本的に水道水でよく洗い流し、清潔なガーゼでおおって固定し、病医院へ受診します。しかし、大会最中であればすぐ受診というわけにはいかない場合もあります。そのような場合は洗浄し、ワセリンもしくは抗生物質入り軟膏で被覆し、テープ固定。大会終了後受診します。傷口が汚い場合は洗浄後消毒も必要になることもありますが。破傷風感染のある場合のみです。消毒薬(粉状)を噴霧して被覆するタイプのものもありますがすすめられません。

 強い打撲、捻挫、肉離れ(筋挫傷)、アキレス腱断裂、骨折などは受診が必須ですが初期対応で復帰までの時間が異なります。本文中の初期対応、RICEをよく読んで対処してください。

けがに対して

1)消毒薬:

イソジン、ヒビテンのいずれか

  • すでに綿棒とセットになって1本ずつパックになっている製品があり便利
  • 大量に使用するようであれば瓶入り消毒薬と消毒済み綿球もしくは1本ずつパックされた綿棒(耳用などではない大きなもの)、ピンセットを用意する。ピンセットはガーゼを使用するときにも使用。使い捨てのものが清潔で便利。金属製のものであれば使用後洗浄し、良く乾かして保存

2)ガーゼ:

市販の消毒済み、パック入りのものがよい。3~4cmのもの10枚、10cm前後のもの5枚程度で十分。

3)カットバン:

ガーゼを当てるほどでもない場合はこちらを使用。1cm幅のものと4×6cm程度の大型のものを各10枚用意し、使用後補充

4)絆創膏:

ガーゼ固定用。1cm幅のもので十分。怪我の後も稽古、試合を継続する場合はテーピングテープかラインテープを使用したほうが固定性がよい

5)弾性包帯:

やや伸縮性が悪いがしっかりと固定できるウェルタイ、伸縮性に富むが固定力がやや弱いハイスパンという製品がある。前者は肋骨骨折や手足の各関節の保護にも使用するものであり、後者は軽度の運動抑制を与える場合やガーゼ保護などによく使用される。サイズはどちらも5cm、7.5cm、10cmとあるが7.5cmのみでほぼ対応できる。7.5cm巾のもの各10本

6)はさみ:重要

緊急時に剣道具を外す際、胴面紐を切る場合にも使用する。サイズはある程度の大きさがあり、これらの紐を切ることができる程度のものが必要

打撲、捻挫、肉離れ、腱損傷、骨折に対して

1)アイシング icing

①アイスバッグ:氷を入れる袋。厚めの小型のビニール袋を3枚ほど重ねて使用すれば代用できる。
②氷:冷凍庫があり氷が作られていればよいが、なければコンビニでロックアイスを購入しアイスボックスに保管。アイスノンでも代用できるが関節周囲などでは使いにくい。市販の衝撃をくわえると冷却剤となるものは便利だが短時間(約30分)しか使用できない。
③表面冷却剤:コールドスプレイ、エアーサロンパス等の液体湿布剤各1本  コールドスプレイは直接皮膚に噴霧してはいけない。剣道着、袴の上からもしくは面したを2重にしてその上から使用。最近はこのようなアイシング目的での使用以外に疲労回復予防でも使用できる。ただし、よく理解している者が使用すること。

2)圧迫 compression

①弾性包帯:前述。ウェルタイが効果大。皮膚との間にアイシングバッグを入れる。圧迫と固定性を重視する場合は、直接固定してしまい、その上から冷やしてもよい。また断熱性のない薄めの緩衝材(スポンジ)を置くと皮膚の保護もできるがアイシングバッグで十分。
②テーピングテープやサランラップを使用してもよい

3)安静 rest

①副木:30cm程度、70cm程度のもの各1本用意しておくことが理想的。しかし、保管に困ることもあり50cm以内のものでもよい。薬局などで相談。
また関節に沿わせて曲げる場合には段ボール箱を、まっすぐでよい場合は雑誌(週刊誌等)を使用することもできる。
②包帯:前述のいずれでもよい。またテーピングテープも使用できる。
③三角巾:非常に便利、必需品、2本

4)その他(あったほうがいいかなというもの)

①湿布薬:軽い打撲、ねん挫や腰痛などに有効
②内服用消炎鎮痛薬

その他

1)薬剤

・前述の内服用痛み止め
・整腸剤(下痢止め)

2)診察用具

①ペンライト(必須)
②聴診器、血圧計(今後は必要となる)
③打診器
④携帯型簡易酸素吸入器(あると便利)

3)テーピングテープ

①通常の伸縮性のあるタイプ、5cm幅:10巻
②伸縮性のないタイプ、1cm幅:5巻、5cm幅5巻
③キネシオテープ、5cm幅:10巻

 テープ幅は種々あり、テープそのものも多くの種類が特性を持ちますが、緊急対応用ではこれだけあれば十分です。

註「剣足」という商品名で非常に粘着性の高い、足の裏に特に使用すると便利なテープも発売されています。

野見山 すすむ(独立行政法人 国立病院機構静岡医療センター名誉院長)

剣道医学救急ハンドブック(2014/10発行)」より抜粋

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