平成11年9月号

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今月のまど

活発に進められた夏の錬成行事

例年どおり夏休み期間には講習会、大会が集中します。梅雨明け後には、猛暑の襲来があり、また一部の地域では豪雨に見舞われ、参加者や運営、指導にあたられた方には、苦心も多かったことでしょう。しかし関係者のご尽力により行事は順調に進められ、いずれも所期の効果を挙げることができたものと感じています。以下出席できた行事について紹介し、2、3印象も述べます。

(1)選手や付き添い応援者で、会場の日本武道館が埋め尽くされる少年剣道錬成大会に参りますと、夏を迎えたという想いとともに、これからの日本の将来を背負う少年剣士への期待が盛り上がってきます。2日にわたって続くこの大会は、それぞれの前半は基本技で優劣を競い、後半の通常の試合の結果と併せて勝敗を決します。審判の難しさは伴いますが、日常の指導に当たられる方々の努力を反映し真剣な演武の連続でした。

(2)サマーキャンプの名で定着し、第24回を迎えた外国人剣道夏期講習会は、例年のとおり埼玉県北本の解脱研修センターで、7月30日から8月6日まで開催。年々参加希望者が増加し、人員の制限も行いましたが、それでも過去最高の人数を受け入れ、酷暑の中68名(32国・地域、うち女子6名)が元気に受講、終了されました。受講者の熱心さは格別で、満足できる効果を挙げたものと思われます。多人数の講習に当たられた講師、委員、係員や、例年のことながらお世話いただいた解脱会の皆さんにお礼申し上げます。

(3)8月上旬の家庭婦人大会の直前の週末を使っての女子剣道講習会を始めた12年になります。これは大会参加の地方からの人々の便宜も考慮して時期を設定したもので、東京周辺3県の2年ずつの持ち回りで、お世話をお願いしております。今年は昨年に続いて千葉市の県立武道館で、147名の受講者を集めて、7月31、8月1日の両日にわたって開催。女性だけの少ないチャンスを逃すまいとする参加者の熱意に応えての盛り上がった講習会でした。

(4)高校総体が開かれる岩手県での全国高校剣道大会の会場は、盛岡で新幹線から東北線に乗り継いで北に70キロ、岩手県最北の町二戸市でした。秀吉の全国制覇における最後の抵抗を行った悲運の九戸氏の居城跡、幕末北辺の防備の必要性を説き、多くの門下生を育てた相馬大作など、歴史に残る人々を輩出した静かな町です。ここに全国各地からの代表が集まって3日間の激戦が展開されました。地元剣連も何年前から準備されたことでしょう。8月2日朝の折り目正しい開会式から始まる試合は、一部しか拝見できませんでしたが、主催者の高体連が重視する審判技術の水準向上も実効を挙げているように見られ、気持ちよい試合が展開されました。特に審判員、役員などが大会前の早朝6時から、体調を引き締める合同稽古を行うなどの努力も、効果を挙げる一因になっているものと見受けました。

(5)年配女流剣士の腕の見せ所、各県が揃って送り出した選手団による全国家庭婦人剣道大会も、15年の歴史を重ねて、レベルも上がり、大会として定着しました。長野県を除く46都道府県の代表は、8月3日日本武道館に勢揃いして優勝を争い、関東勢同士の優勝戦となり、埼玉県を下して茨城県が初優勝を飾りました。試合内容の向上も目立ちましたが、参加する女子審判員の技術も上がり、特に今回初めて女子だけで行った準決勝の2試合の審判を立派にこなしました。

沖縄で剣道六段審査会

覇市での剣道地区講習会に続き、8月9日に剣道六段審査会を県立武道館で実施しました。剣道六段の地方審査は、西は福岡市で行われるのが例ですが、交通不便の地の愛好者のための特例として、北海道の例も考慮して、昭和61年についで沖縄で行いました。今回は地区講習会と組み合わせて実施し、講習受講者140名。審査には、ほかの地区よりの人を含め、70名余りが受審、特に地元沖縄県の受審資格者の7割が受審したとのことで地元のためにもまずまずの結果であったと評価しています。

称号・段位審査規則の細則・運営要領の立案作業進む

夏の諸行事の続く中、新規則の細則・運営要領などの立案のため、石丸副会長を中心とした作業グループは、規則から細則、運営要領に譲った部分を固め、成文化するため、休むことなく作業し、8月中に一応の成案を得ることができました。この案は9月早々に新しい称号・段位委員会を開催して検討、続いて執行部での審議を経て原案とする予定です。

執行部案は9月末の審議会に付議し、意見の集約を図った上、できる範囲内で各地区に出向いて説明し理解を求めるほか、意見の吸い上げも行って案を固めていく構想です。そして所要の修正も加え11月の理事会・評議員会で結論を得ることを目指しています。作業の進捗の内容は、別掲の松永委員長の報告でご承知ください。

外務大臣より感謝状を頂戴して

先月号で紹介がありましたが、去る7月22日に、高村外務大臣より感謝状を頂戴しました。これは海外の剣道グループへ剣道具寄贈を続けてきたこと、海外への剣道普及活動を推進するなど国際親善に寄与、貢献したことに対するもので、誠に光栄なことと存じています。また海外剣道の発展に関心を持ち、その推進を図ってこられた橋本龍太郎前総理が贈呈の場にわざわざご同席戴いたことに特に恐縮しております。

この感謝状の対象は個人名で、全剣連会長の肩書きはありませんが、取り上げられた業績はいずれも全剣連の事業として行ってきたものです。また剣道具提供の事業は、国内の中古剣道具収集と併せて、私の専務理事時代に始めた仕事ですが、その他の多くはすでに以前からスタートしていたものが多く、私としては全剣連事業の柱として位置付け、整備、強化したものです。従ってこの感謝状は個人でなく、全剣連を代表して戴いたものと存じています。そこで今回のことは、仕事の基礎を築かれた先人、業務にお骨折り戴いた役員、専門委員、事務局関係者のおかげであり、さらにご支援戴いた、外務省部局、在外公館の方々、永くご援助を続けて下さってきた国際交流基金、小型自動車振興会のすべての方々にこの機会に厚くお礼申し上げます。

国際関係の仕事への、全剣連の姿勢はすでに確立していると考えています。国際親善にも寄与することは、剣道界が国益に貢献できることであることを改めて確認し、努力を続けたいと存じます。

国際剣道連盟理事会がアメリカ・サンタクララで開催

3年ごとの世界剣道選手権大会の前年には、国際剣道連盟理事会を、次の開催地で開くのが恒例となっており、来年3月の大会を前に、米国カリフォルニア州サンタクララで、さる8月19日に開催いたしました。世界各国よりの役員15名のほか、地元米国剣連の関係者が出席、次回大会内容の確認、その他の議事を処理、会場の下見も行いました。大会準備も最終段階に入りますが、全剣連も選手団の編成、強化に本腰を入れる時期を迎えました。

中西審議員など訃報相次いだ夏

先月号に景山前会長、土田顧問の追悼記事を掲載したばかりですが、続いて訃報を掲げるのは悲しいことです。去る8月5日に亡くなられた中西康さんはご承知のとおり、剣道、居合道、杖道の三道の奥義に達せられた、剣道界で数少ない歴史に残る方でした。中央での活躍より、剣道家として地道に修業、指導に当たられ、地元剣連の運営にも尽力されました。海外指導も積極的に当たられ、私も数年前の東南アジア派遣チームにご一緒願った思い出もあります。昨年広島での全日本居合道大会には特に尽力され、今年1月の沖縄県立武道館落成記念の剣道八段大会の際は、慰霊の居合を奉納されるなど、宿痾と戦いながら最後まで剣道人として尽くされました。ご冥福を祈ります。

元全剣連理事の伊保清次さんも8月10日に亡くなられました。伊保さんは昭和36年の全日本選手大会で優勝された方で、教育畑で終始指導に当たられましたが、中西さんと同じく70歳代のまだ活躍が期待される年に世を去られました。

また剣道功労賞を受けられた松川久仁男さんが7月16日に91歳の高齢で亡くなられました。戦後戦火に荒廃し、米軍の占領下の沖縄県で、剣道の復興発展に終始努力された方です。以上の方々に謹んで哀悼の意を捧げます。

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