平成12年6月号

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今月のまど

大阪市・京都市での5月の行事・順調に終わる

初夏・新緑の好季節に、全国の剣士が関西地区に集う恒例の剣道行事は、5月2日の剣道六段審査、剣連事務局長会議に始まり、8日の剣道八段剣道形、学科審査で締め括られ、順調に終了しました。この期間有り難かったのは、天候に恵まれ、傘を必要としない1週間だったことで、参加者はそれぞれ力一杯の演武を展開したほか、元気に充実した審査を終えることができました。以下行事を振り返って、感想と気付いた点いくつかを述べます。

前陣の活気ある試合が目立った都道府県対抗大会

全剣連の発足とともに毎年この時期に、演武大会に先立って開催され、48回の歴史を刻んだこの大会は、第4回の昭和31年からは、大阪市で5月3日に毎年開催されてきました。一昨年大会より女子選手2名を加えた7人の団体戦として都道府県の各層から選ばれた選手による文字通りの総力戦となり、全剣連は最強の都道府県チームを選ぶ大会と位置付けています。

この大会にふさわしい賞品をと考え、全剣連は前回から、南北朝時代に作られた国宝の兜を複製した優勝兜を提供し、この大会を盛り上げるための努力も払っています。さて肝心の試合ですが、女子選手2名、次鋒の30才未満の若手社会人による前陣3人の張り切った試合ぶりが印象に残りました。技術レベルは別として、チームの勝利に貢献すべく全力を出しての戦いは、大会を盛り上げました。決勝戦は地元大阪府と、東京都との対戦になりましたが、先鋒から3人まで東京都が制し、早くも王手をかけました。中堅の教職員同士の試合が大きな山となりましたが、大阪の中堅は苦戦しながらも、連勝してきた東京都の中堅と引き分け、望みを残しました。ここで流れが変わり、このあと大阪府が3連勝、連覇を決めました。試合はいずれも気力溢れた決勝戦らしい内容で、多数の観客も満足したことと思います。後陣3人の男子選手の1人が引き分けに持ち込めば、東京都の勝利になるところを許さず、逆転できたのは、地元の利だけでなく、勝利への執念で克ち取った優勝でした。各層の剣士よりなる都道府県対抗戦の良さを感じさせた決勝戦でした。このほか行事に加えられた、200人もの少年の実演は好評でした。また団体の勝敗とは別に、目覚ましい活躍をした剣士も目立ちましたので、奨励のため優秀選手の表彰も行ってはと感じました。

参加者も増加、充実してきた剣道演武大会

若葉薫る京都・岡崎の建立101年を迎えた武徳殿に、全国各地から集う剣士は、総数3千4百70名(申し込み数)で過去最高の賑わいを見せました。大会準備や運営は、毎回京都府剣連のご努力に負うところが大きいのですが、今回も大会を滞りなく進行して戴きました。大会運営での苦心の一つは、試合の組み合わせで、当事者は気を使っているのですが、参加者の満足を得るのは難しいようです。とくに同じ相手とまた当たったという苦情はよく耳にします。これは望ましくないことは当然ですが、事務方にも多少の言い分はあるようです。今年から実行面で是正したことも幾つかあります。まず対戦記録の整理公表です。試合の組み合わせはプロクラムに載リ、進行しますが、欠席者などもあるため、変更や、取り消しは多々あるのはご承知のとおりです。本年はその記録を整理し、普通の大会と同じく、結果を本号以後の「剣窓」に掲載することから始めました。結果の一端を披露しますと、剣道の部の試合総数1,191、教士七段までの試合のうち、半数を超えて54%が勝負なし、申し込んでからの欠場者の率は、剣道7.1%、居合道9.8%でした。

立ち会いの順序などについての希望や苦情も耳にしますが、前後の問題など、全剣連は強くこだわっていませんので、気に入らぬ場合がでるかも知れません。理解を得るため、今後は組み合わせを行う際の考え方、原則をはっきりさせ、プログラムに明記することにします。試合の審判は、今年は二審制で行いましたが、概ね好評だったようです。また運営面で楽になった点も見逃せません。3日目の教士八段の試合は、大会の目玉となっていますが、今年は拝見試合で行いました。このためか厳しさに欠ける試合も目に付いたという意見が強く、元に戻す方向です。恒例の朝稽古会、例年に比べ参加者も多く、活発に行われたこと、は何よりでした。恒例の武道具製作実演は、3日間に亙り宮崎県・堀之内 登さんによる、木刀製作が披露されました。

一昨年の骨量調査に続いて、今年は参加者の聴力検査を行いました。剣道家の耳は、特別に遠いのか、高齢まで活動するため目立つのか、調査結果の整理が待たれます。

新規則による審査会まずは順調にスタート

たびたびの前触れのあとの本番、京都での審査会を迎えました。六・七・八段と、範士の審査は、新規則の基準、手続きにより行われましたが、執行部は審査の質が向上の方向に踏み出すかの期待とともに、運営への一抹の不安を抱いて、審査会に臨みました。不満足の点も見受けられますが、今後の是正を考慮に入れ、まずまずの結果であったと感じました。

剣道六、七段審査は、実質的には従来同様の実技審査と、不合格者への敗者復活措置を取り入れた剣道形審査の組み合わせです。この結果、3ケ所の審査で20名の形不合格者が、1年以内の形の再受審に回りました。六段の京都、名古屋の不合格者の数の違いが目立ちますが、今後形審査が厳しくなるであろうことを予見させます。学科審査も不合格者への再受審が認められ、70才以上の方への免除も行いませんが、不合格者は2名という寛大な結果でした。これは学科見直し前の従来と同様の扱いであったことによります。

難関で知られる八段審査を各道で行いました。その基準「剣道の奥義に通暁、成熟し、技量円熟なる者」というのは厳しいものですが、「厳格に審査に適用すると、合格者は出ない恐れがある」「何らかの配慮が必要ではないか」とのご意見を、相談役の方からも戴いていました。これについては審査会に当り、「これは基準ではあるが到達目標でもあり、そこへの入学試験という見方で審査をお願いしたい」と要望しました。

審査は第一次は従来の方式、第二次は審査員10名で、7人の同意で合格という新しい基準で行いました。この結果4日の審査で杖道1名、居合道10名が合格しました。7日の剣道は、受審者が900名を超す多数の中から、一次合格が86名に昇り、二次審査の結果が期待されましたが、19名の合格になりました。年齢別にもバランスが取れておりまずまずでした。地域的には合格者は岡山以東で、常連の九州から1人も合格がなかったのは目立ちました。

剣道形、学科審査は翌8日で、講習後の審査で全員合格となりました。新規則による新しい方法で、妥当なものと見受けられました。教士、錬士は秋から始まり、今回は各道範士審査のみです。新規則第2条で、「称号・段位を通じて、範士を最高位とする」と謳われる範士の基準は、「剣理に通暁、成熟し識見卓越、かつ、人格徳操高潔なる者」と、八段以上に厳しいものです。各剣連からの推薦者について、10名の審査員で慎重な審査を行った結果、4日の居合道範士審査会で、1名の合格を見ましたが、8日の剣道範士審査では合格者は無しの結果でした。昨年までの審査に比べ、厳しい結果でしたが、新規則による審査であり、納得できる結果でした。

振り返りますと、新しい規則体系での審査は、審査員の厳選に始まり、各剣連の候補者推薦、全剣連での審査という段階で、今回の一連の審査を終えましたが、先に述べましたように、まずまずのスタートが切れたものと評価しています。ただ個々の審査員の評価のバラツキ、この結果生ずる審査会場別の不均衡など、今後改善を要する点は多々あります。全剣連では一連の審査の結果分析、評価を行い、夏の段位審査、秋の教士、錬士の審査に対し、万全の体制で臨む準備を進めます。

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