全剣連は9月12日から3日間、勝浦市の日本武道館研修センターで、審判技術に関する研修会を開きました。審判に関する講習会は格別珍しくありませんが、今回のは剣道審判技術の向上を通じて、日本の剣道の質を高めるための新しい出発点の意味を持つ行事です。
剣道における試合の役割、その際の審判の果たすべき機能の重要性については繰り返すまでもありません。全剣連はこのため審判技術の向上を図ることを、全剣連は事業計画に重点として掲げ、努力して来ました。特に平成7年にそれまでの経験も取り入れ、抜本的な体系整備を行い、現行規則を制定し、各種講習を通じて普及に努力してきました。各剣連の努力と相俟って規則の普及は進み、一応の成果は収めることができたと考えています。
しかし剣道の普及が進み、各団体の活動が活発になっていますが、結果は試合の増加となって現れています。全国津々浦々と言われる程各地で行われる試合で、審判に当たる人、機会は無数です。そこでの審判にまで、正しい規則の運用の徹底を図り、審判の向上を通じて日本の剣道の質を高めるために、新たな努力を始めなければならない時期にあるものと感じます。
その方策を試合・審判委員会などで審議検討しました。そこでは公認審判員制度を設けるなど、いくつかの案が出ました。しかし直ちに取り組む具体的手段として、講習に当たる講師の充実から始めることが大切で、迂遠なようで効果的という結論に至りました。
そこで基幹となる講師要員の研修を行い、審判技術の思想統一と向上を図ることとしました。高級講師要員ともいえる方の適格者は多数おられるかと思いますが、地域、年齢及び、講師として今後努力願える可能性も含め、適格者を選び、徹底的に研究、討論を願うため、今回の研修会を開くことにしました。
今回参加願ったのは18名の方ですが、今後重い役割を果たして戴くことになります。全剣連の今後の作戦展開の方向は、さらに具体的に取り組んで行く必要があります。まず審判員の試合における実績をその都度評価するシステムを固めることは大事なことです。さらに審判技術について、検討や審議の結果思想統一されたことを、客観的な形で資料として残すための仕事を行うことが特に必要と考えます。
審判における有効打突の判定などは、経験に依存して文字に表現できない所は多いのですが、一方規則の解釈、運用における諸問題など、表現できる点、事項についても、全剣連として記録化の努力が十分に為されていません。今後文書化への努力を高めることに、早急に取り組むべきです。
現行十本の全剣連居合に二本を追加し、修業の厚みを増して行こうという構想が昨年提案され、居合道委員会において検討を重ねてきましたが、文書として成案化され、9月9、10の両日の居合道中央講習会の際開催された居合道委員会で合意を得て、実質的に固まりました。現行の十本のあとに加えられるものはつぎのとおりです。
十一本目は「総切り」で、「前進中前方の敵の殺気を感じ、機先を制してまず敵の左斜め面を、つぎに右肩を、さらに左胴を切り下ろし、続いて腰腹部を水平に切り、そして真っ向から切りおろして勝つ」というのが要義です。
最後になる十二本目は「抜き打ち」で相対して直立している前方の敵が、突然切りかかってくるのを、刀を抜き上げながら退いて敵の刀に空を切らせ、さらに真っ向から切り下ろして勝つ」というものです。動作などの紹介と解説は別に記事に紹介される予定です。
追加については11月2日の全剣連の会議で決定され、平成13年4月以後の試合、審査などに実施されます。
さて講習会の方は、全国各都道府県から100人が参集しました。例年通り、八段や範士を持った方が多数参加される充実した講習会でした。
第39回を迎えたこの大会は、9月3日例年通り名古屋市中村スポーツセンターで開催され、朝比奈静香選手(東京警視庁)が昨年に続いて優勝、皇后盃を授与されました。朝比奈選手は長身を生かしての面を武器に、つけいる隙を与えず、全試合を通じて一本も許さず、危なげなく連続優勝を飾りました。
大会全般を通じて選手の粒が揃ってきて一回戦から好試合が続き、全国的水準が上がってきたことを感じました。高校生選手が2名にとどまったのもその表れかと思います。
一方でベテランの活躍も目立ちました。初優勝以来16年、15回目の出場の寺地里美選手(東京)の奮戦ぶり、最年長の堀部あけみ選手(栃木)も、ベスト8には至りませんでしたが、格調高い試合で敢闘賞を授与された健闘などです、とかく寿命が短いとされてきた女子選手の活動に新しい境地を開いたのが印象に残りました。
8月31日より4日間、多くの新しい顔触れを含め43名の選手での強化訓練講習会を、勝浦市の武道館研修センターで開催、例年にない暑さのなか充実した日程をこなしました。高校生10名の元気ぶりも目立ちました。今後の成長が期待されます。
昨年のソウルでの講習に続いての、アジア地区審判講習会が、台湾・鳳山市で9月16、17日に開催されました。これは国際剣連の名で、全剣連が実施に当たったのですが、韓国、豪州、香港、地元台湾の40名のほか、日本からも受講者として6名が参加、合計60名による講習会でした。審判技術の向上の必要性は、特に国際剣道において大きいものがありますが、現状の水準から見て、熱心な受講者と、講師の努力と相俟って大きな効果を上げることができたと思います。
開催に当たって、主管役の中華民国剣道協会、さらに地元鳳山市の剣道協会の皆さんに努力戴いた他、心暖まる歓迎を受けたこと、感謝に堪えません。
金沢市といっても中心部から20㎞もある山中の、医王山スポーツセンターでの講習会は、日本海側の開催では最高の110人の参加者を集め、9月8日から3日間の日程で行われました。冬場は雪に覆われ、熊やカモシカも出没する環境での講習会、今回は特に教員の参加も多く、年齢的にも若手参加者が目立つ活気ある講習会で、今後の剣道指導層と普及の充実に手応えを感じさせる成果を上げました。
新称号・段位審査規則に基づき、11月に行われる剣道・居合道・杖道教士の審査においては、初めて筆記試験が課せられることになり、11月10日に行われますが、その要領、例題などが決まり、各剣連に通知されるとともに、今月の「剣窓」に掲載しております。関係の方ぜひ見落としのないようご承知ください。
今回のオリンピック柔道では、日本選手はなかなかの健闘しましたが、テレビで見る試合後の態度には情けなくなります。躍り上がったり、礼も忘れてコーチの所に飛んで行く、表彰台に写真をブラ下げて行く。自分のことしか分からない、乳離れ前の幼児のゲーを見せられるようでした。これが武道の仲間かという感じです。指導者ぐるみ、何処かおかしくなっているのでしょうか。
(1)全剣連審議員、埼玉剣連会長楢崎正彦範士が、9月2日に亡くなられました。戦中の経歴から名誉ある戦犯容疑を受け、巣鴨プリズンに収監されるなど、数奇の経歴をお持ちの方で、戦後民間企業で活躍され、剣道の精進も続けて大成され、剣道界では運営にも貢献されました。ご冥福を祈ります。
(2)台湾の言葉は日本と漢字が共通で、意味は通じやすいのですが、少々違った表現もあります。今回の審判講習は、現地では剣道裁判研修會と掲示され、オヤという感じでした。