久方振りに山陰路に巡ってきた、第46回全日本東西対抗剣道大会は、新装成った鳥取県米子市の県立武道館で9月24日に行われました。試合のここ数年のパターンは、前陣は東軍が圧倒、中陣で西軍が挽回、後陣の戦いで勝負が決まるというものですが、今年もその通りの展開で始まりました。先行した東軍を追う西軍が、6ポイント差を挽回し、八段戦の3人目の十将戦で同点とし、緊迫した勝負に持ち込みました。ところがその後の展開は、昨年の和歌山大会とは逆に東軍が圧倒、特に最後の4試合は立て続けに勝って、あっさりと東軍が雪辱しました。一方定着した女子の部も、前座の形で行われ、立派な試合を展開、こちらは西軍が連勝しました。この大会は団体戦の勝負とともに、個々の試合内容が見所になりますが、好試合が連続しました。注目の的となったのは26將戦、東の宮崎正裕選手に対する、西の石田利也選手の、13分にわたる虚々実々の白熱戦は満場を沸かせました。両者に優秀試合賞が授与されたのは、当然の結果でした。
大会を通じ例年に比べて、玄人好みする試合が多く、同じく優秀試合賞を受けた、6將戦の目黒大作 - 山田博徳選手の試合はさすが八段と、満場を魅了しましたし、その他敢闘賞を受けた選手の立派な試合ぶりも印象的でした。
この大会の出場選手は、各剣連の推薦に基づき、東西の選考委員会で選ばれるという手順を取りますが、原則として2年続いての出場は認めないこと、できれば各剣連から1人は選手を選びたいという配慮も行われるといった枠内での実力選手の選抜試合であり、この選考過程が試合に微妙に影響していることはご理解ください。さて試合を引き立てるためには模範となる審判をと、期待しておりましたが、こちらは満点は差し上げられないというのが大方の声でした。また大会の運営、設営に払われた鳥取剣連のご努力は多とするものですが、諸事簡素化の余地があるのではないかとの声も、聞こえたことを併せて付け加えておきます。
東京都江戸川区スポーツセンターで、10月8日に開催されたこの大会、全日本と銘打ってはいますが、なお普及度の低い杖道であり、剣道、居合道とは熱気からして違う地味な大会です。各段ごとのトーナメントを行いますが、多くの剣連では競争なく出場できるのではないかと思います。各段ごとに優勝を決め、表彰しますが、三段までにも上位二組に優秀賞を出すなど、奨励の空気が濃くなっています。
トーナメントのほかに、居合道大会と同じく、高段者を含めた個人演武を披露する次第となっおり、500人の全国の杖道愛好者が集うお祭りの要素もある大会です。全剣連も杖道の普及と発展を目指して、応援する姿勢で臨んでいますが、剣道、居合道が新たな発展を目指して取り組んでいるのに比較して、一歩立ち遅れている感があります。指導に、審判や審査のレベル向上などに一段の努力を期待しております。
9月29日から3日間、甲府市小瀬の武道館で開催された、社会体育指導員初級講習会は、地元山梨県から80名、関東信静の1都8県から50名、合計130名という、この講習会3番目の多数の受講者を集めて、充実した、かつ好成績の講習を終えました。受講者はもとより、講師も担当の山梨県剣連も、いずれも意気高々だったことをご報告しておきます。理事長や幹部が率先受講するなど奨励策を取られた、山梨県剣連のご努力に敬意を表します。
これで初級の資格取得者も、3,000の大台に接近しましたし、資格更新の講習もはじまり、さらに今月は中級の講習も行われます。全国の剣道の発展に大きな役割を担う日も近いことを確信させる、甲府の講習会でした。
第55回の国民体育大会は、しない競技なども入った戦後の色彩が残っていた、昭和32年の第13回大会以来の富山県での大会でした。剣道大会は再びその時の開催地、庄川町の町民体育センターでを会場として、10月14日から4日の日程で開催されました。庄川は岐阜県の合掌造りで有名な、飛騨の水源地域に源を発し、富山県の西部を流れて日本海に注ぐ、全長120kmという短い川ですが、大正時代から水力発電の開発が進められ、下流に至るまで、何段ものダムが築かれ、日本有数の発電力を持つ川として有名です。庄川町は、富山平野に庄川の流れが到達した地域に位置する人口1万弱の静かな町です。以前は山から切り下ろされた、木材の町でしたが、それを加工しての木製品の産地として名残を止めています。前置きが長くなりましたが、大会の種目は昨年と同じ、全国すべての都道府県を代表し、かつ他の種目に見ない幅広い年齢層の選手より成る、少年の部、成年の部の男女併せて500人の選手を集めた開会式は、壮観といえるものでした。試合は、前半を観戦した程度ですが、少年の部では、よく指摘される、立ち上がってすぐひっついての鍔競り合いの連続といった展開は、まだ目立ちましたが、一時よりは改善されたようにも見受けられ、白熱した試合を繰り広げておりました。
しかし竹刀検量で、基準の太さを満たさないものが多かったり、重量不足のものがあったりしたのは意外でした。また反則によって一本になったり、試合の勝敗がこれで決まるといった例まで見られました。選手の側の問題といってしまえばそれまでですが、剣道の試合は有効打突で決まるのが本則ですから、審判の側でもこのようにならぬよう、運営上配慮する余地があるよう感じられました。さてこの大会、庄川町に参上してどなたも一番感じるのは、担当の富山剣連と地元の町ぐるみの運営への熱意と歓迎振りでしょう。一言でいえば、多くのボランティアの人海戦術による善意のもてなしを戴いた快い印象が残りました。
国体自体の印象は、はじめに歌われる国体の歌の「若い力と感激に燃えよ若人胸を張れーー競え青春強きもの」にあるよう若者対象で、全くスポーツ的です。この中にあって、60才がらみの剣士も出る剣道は、確かに異質の要素や違和感が多いことを痛感させられます。しかし他の競技種目と一緒に、地域同士の戦いの一員となって参加するのには別の意義があります。勝負にこだわりすぎる傾向を抑えるなど、剣道奨励のために効果が上がるよう、運用に特に留意しつつ、参加のチャンスを活用するのはよいと感じました。
11月は3日の全日本剣道選手権大会という、大きな行事を控えて、事務局は準備に追われていますが、同時に月末の剣道六、七、八段の審査を控え、また新規則による錬、教士の称号審査も行われる審査の月でもあります。特に新しい称号・段位審査規則による教士の審査は、11月11日に筆記試験が課せられます。今年は予想された通り、受審者は少数ですが、審査担当役員の手で準備が進んでいます。また錬士審査には、申請者の自筆の小論文を付して出して貰うなど、繁雑になります。これは称号の権威を高める今次規則の趣旨によるものとして、大方のご理解を戴きたく存じます。すでに今春の審査で経験すみの段位審査に挑戦される数千人の方々共々、成功されることを祈ります。
すでに年度の後半に入り、来年度の事業の検討が始まっていますが、大会、講習会など会場の準備を要するものは、予め固めておくことが必要です。現在構想に浮かんでいるのは、数年来東西に別けて行ってきている中堅剣士講習会の一本化があります。また1年の実施を経ての、審査会の計画の検討、軌道に乗ってきた社会体育の講習の進め方、剣道地区講習会の位置付けの見直し、さらにはITばやりの流行に乗るのではありませんが、各剣連も含め剣道界の運営、情報伝達の画期的改善に資するための情報技術の導入、活用を進めるための方策などを検討したいと思っています。常任理事会を経て、月初めの理事会、評議員会での議題にする予定です。
全剣連業務の増加と、内容の高度化に効率的に対応するために、事務局の組織替えを実施しました。一口にいえばこれまでの5課3室の縦割り組織を廃止し、事業、総務、経理、国際の4部門のグループ制にし、それぞれ主幹のもとのスタッフの形で、流動的にマンパワーを活用し、業務を進めようとするものです。このうち経理、国際はこれまでの組織を踏襲しますが、事業グループはこれまでの2課に登録課も含めて一本化、資料、広報は総務グループに統合、ここには新たな重点業務の情報関係を含めて業務を展開します。
新しい組織では事務局長はおかず、統括の必要のある機能は専務理事が当たり、小さな組織での屋上屋の弊を無くし、業務の効率的推進を目指しています。従って事務局長の事務取り扱いなどの役員分担は無くなります。その他の事業関係役員の担当は実質的に変わりません。