全日本選手権大会を終えた11月後半は、例年大人数の剣道審査会が、東京を中心に行われます。23日の名古屋での剣道六段審査に始まり、27、28日の日本武道館での剣道六、七段審査、29日には東京武道館に場所を移しての剣道八段の実技審査と続きます。さらに30日には剣道八段の実技合格者に対しての、形、学科の審査を行いましたが、これは講義、実習を行ったあとに試験をする方法です。別に18日に東京・江戸川区スポーツセンターで、居合道六、七段審査が行われましたので、全くの審査会ラッシュでしたが、無事終了することができて幸いでした。
審査会シリーズを通じての、総受審者は5千3百人にのぼり、うち740人が合格されました。この中には前回の審査で剣道形で失敗、新制度で認められた実技審査抜きの、形、学科だけ受けての合格者33名を含みます。
また新規則では年配者に励みを与えるため、60才以上の受審者の修業年限を短縮する条項を設けましたが、この条件に基づいて受けられた方は、合計260名に達しました。
この審査会シーズンは、多数の受審者を迎える側も大変です。高段の審査員数も延べ189名に上り、裏方の審査会を動かす係員も、合計290人という多数で、これらの人の協力を得てはじめて実行できたわけです。また審査会を上手く切り盛りする、全剣連の事務方の腕も認めてやって欲しいと思います。さて各人の審査成績については、申し込みにより大まかな成績を葉書でお知らせし、また「もう一歩」の方の番号を「剣窓」に掲載するほか、全体の成績を剣窓に統計化して掲載します。以上の情報を通じ、ご本人が納得されるかどうか。勇気を持って再挑戦できるかどうかは全剣連も気掛かりですが、これ以上のサービスは目下の所困難と思っています。
一方新制度による錬士、教士の書類審査が、30日に行われました。錬士は各剣連からの推薦された候補者について、提出を受けた小論文を審査、教士については11月11日に東京、神戸、福岡で行われた筆記試験の採点結果などに基づく審査を、審査回において審査し、剣道、居合道、杖道錬士450名、剣道教士14名、居合道教士1名の合格者を決定しました。
この一連の厳しい審査を経て、合格の栄冠を克ち取られた方々にお慶びを申し上げ、不幸合格できなかった4千人を超える方々には捲土重来をお願いする次第です。
さて11月で全剣連自体が行う、新規則に基づく審査の本年度分は終わったわけです。これからこの結果を検討して、良かった点、見直しを要する点などについての評価を行う段階に入ります。前にもお知らせしますが、段位審査における学科の在り方については見直しを行って、来年度から是正したいと思っています。
また東京での七段審査は、過密の状態になり、これの緩和と、受審者が休日にうけられるようにするため、来年度秋の七段審査は、六段の方式で、愛知県剣連のご尽力を戴き、休日に名古屋でも行うことにします。
新規則の策定にあたって定めた、「見直し方策の大綱」では、実行面の指針として、「審査の運用の充実と改善」「審査と教育の連動」「受審者の立場への配慮」などを基本方針として掲げています。これらを念頭に置きつつ、改善を図って行きます。
雪印乳業(株)は夏以来いろいろの問題を起こして評判が悪いようですが、1926年に会社ができた時の、バターの国産化をやられたのが、全剣連副会長にもなられた佐藤 貢さんでした。
佐藤さんは北大の前身の農学校を出られ、その後アメリカで酪農を勉強し、技術者として雪印乳業の前身の会社で製造に当たり、樽を回して自ら雪印バターを作られたそうです。責任者でもあった佐藤さんは「製造に携わるものは、舌と鼻を鋭敏に研ぎ澄まして、善し悪しを鑑別する力を付けよう。タバコや酒をやると味覚も嗅覚も駄目になる」ということで、担当全員が禁酒、禁煙と言うことになり、後々までこれが、入社の条件だったそうです。こんなにしてバターの品質向上に努められたとの話が伝わっています。
佐藤さんは、一生を酪農の発達に捧げられ、この間北海道の剣道界の面倒も見られました。長寿を保たれ一昨年、101才で世を去られました。全剣連は平成8年、剣道功労賞を差し上げ、私が札幌のお宅に伺いいろいろ剣道を中心とした昔話を拝聴しました。正月の話題になろうかと、先人の逸話をご紹介しました。
剣道界を巡る主な事柄を全剣連の立場で取り出します。
数年かけて検討してきた、新規則が実施段階に入りました。今後何年もかける積もりで、新規則の趣旨貫徹をする必要があります。巻頭の年頭の辞をご参照下さい
宮崎正裕選手の3連覇を阻んだ栄花選手の活躍はニュースとして取り上げて良いでしょう。この大会五段以下の選手が32名と、六、七段選手と丁度半ばになり、新鋭、ベテランの間の熱戦が随所で見られました。
審判技術を高めることを通じて、剣道の質を向上しようとして、手始めに上級講師の講習を9月に実施し、以下全般に及ぼす方針が固まりました。
この講習事業5年目を迎え、3千人の初級資格者を認定、第二段階に進んで行きます。年頭の辞参照
第11回大会を3月に米国サンタ・クララ市で開催、日本は全種目に優勝しました。各国の実力も上がっております。5月号参照
居合道の発展を図るため、全剣連居合に二本を追加。来年度より試合、審査などに取り入れて行きます。12月号参照
面金部分が透明のプラスチック製の面の試合での使用が全剣連から承認されました。顔が見える面ということで好評です。
大きい剣連の中で任意団体として残っていた大阪府剣連が、11月から社団法人として発足しました。全国都道府県の中で、10番目の公益法人となります。
長年沖縄に在住、隻脚の身で、剣道に精進、戦後の剣道の復活に大きな役割を果たされたゴードン氏の功績に対し、剣道功労賞を贈呈、功績に報いました。
大学寮におけいて一昨年9月に起こった傷害致死事件に対する公判の判決が10月に下り、懲役3年の刑が申し渡されました。
昨年も剣道の戦後の復活、発展に努力された方々を失いました。
相談役 | 中倉 清 範士 | 2月 |
顧問 | 加藤 武徳 氏 | 2月 |
居合道範士 | 草間 昭盛 氏 | 1月 |
千葉県剣連副会長 | 瀧口 正義 範士 | 3月 |
埼玉県剣連会長 | 楢崎 正彦 範士 | 9月 |
全剣連顧問 | 常富 二男 氏 | 9月 |