全国的に寒暖の差の大きい厳しい冬でしたが九段坂への春の訪れは正確で、4月第1週には例年に見劣りせぬ満開の桜で彩られました。花と共に新しい事業年度を迎え、全剣連は新しい気持ちで仕事に立ち向かいます。
平成13年度の事業計画・収支予算は、3月23日の理事会・評議員会の議を経て決定されました。事業計画の全文は別に掲載しており、重点方策の線に沿って積極的に仕事を進めます。
事業には、審査の適正化を進めること、審判技術の向上と講習の徹底を通じて剣道の質を高めることを柱に取り組みますが、国内組織との協力、連携に配慮し、財政基盤や事務運用に配慮すること、国外にも目を注ぎ剣道の発展を支援することも取り上げます。
収支予算は当期収入、支出とも約5億8千万円で、額はほぼ前年と同様です。収入のうち金利低下の影響が大きい基本財産などの運用収入、各剣連からの分担金収入、公的機関からの補助金等安定収入と見られる部分は全体の一割余りで、多くが登録料、審査料を中心とした事業収入に依存している状況は変わりありません。
支出面では事業費と管理費が、2億3千万円と双璧をなします。管理費のうち人件費は、1億5百万円で微減、九段と北の丸事務所賃借料は3千8百万円を使います。
一般会計のほかに五特別会計を設けており、合計8千万円の繰入を一般会計から行います。このうち世界大会用の積立は例年とおりですが、今年は全剣連設立50周年記念行事特別会計を設け、1千万円を繰入れました。国際関係事業には前年より、少ない5千万円弱を計上しましたが、このうち1千万円程度は補助金などから回ってくる額です。広報・普及事業の繰入1千万円は大部分は人件費ですが、「剣窓」を含むこの会計は、黒字を実現すべきものです。
この点、社会体育指導員養成事業は、本年度は5千4百万円の規模に成長し、人件費支出も含みながら、繰入金なしの独立採算に達したのは健全で、多くの方のご協力によるものと感じます。
このほか例年どおり、道場建設積立金2千万円を計上、おおむね健全な予算を組むことができました。今後は堅実な執行に努めます。
第49回を迎えるこの大会、今年は大阪湾の新開地に新設の会場で行われます。この春開場して人気を呼んでいるユニバーサルパークのつぎの駅、終点桜島駅からバスかタクシー利用と、交通事情には難がありますが、新世紀初の全剣連公式試合で、出場選手も大阪府の3連覇を阻み、栄冠を得ようと好勝負が展開されましょう。5月3日には応援の方、近県の方に、ぜひお誘い合わせの上、会場に足を運んで戴き、大会を盛り上げて戴くようお願いします。
今年は参加資格を六段以上で称号を保持される方に限りましたが、参加者数は微減程度で、3千人の剣士を全国から迎えて開催されます。時に苦情があった、演武の組み合わせには注意を払いました。武道具製作には、袴の製造を実演して戴きます。
5月2日に始まる京都での一連の審査会、今年は八段の受審者の増加が目立ちます。特に剣道の申し込みは昨秋より100人も増えて、1,000人の大台に乗り、事務方も頭をかかえる盛況です。新規則による年配者への修業年限の短縮の特典を生かしての挑戦者の増加と見られます。居合道、杖道八段も、それぞれ増加しています。
剣道七段はほぼ前年並み、剣道六段は京都では増加、名古屋は横ばいですが、休日に行う名古屋は1,000人を越え、京都の受審者を上回る休日指向が定着しました。ともあれ、5,000人に近い受審者の健闘とご成功を祈り、一方多数の受審者に対応する審査員の評価が妥当に行われることを期待しております。
例年愛知県春日井市で、3月27、28の両日行われる全国高校選抜剣道大会が、10回目の節目を迎えました。この大会は東海旅客鉄道(株)の支援や、地元機関の後援を得て行う、全剣連と高体連の共催事業です。各都道府県の代表校が優勝を争う選抜大会で剣道界の期待のもと平成4年に実現を見て、予想どおり高校剣道の発達に刺激を与えてきました。今大会にあたり、これまでご尽力戴いた関係機関に対し、主催者側から感謝状を贈りました。
続いて秋田市で開催される魁星旗争奪全国高校勝抜剣道大会が今年第30回の記念大会を迎えました。この大会は秋田県剣連と、秋田魁新報社が中心になり、昭和47年以来続けて来られた大会で、その名のとおり男子は5人の勝ち抜き試合で優勝を争います。選抜大会と異なり、申し込みにより参加可能で、東北地区だけでなく全国から300を超す学校が参集する賑やかな大会になりました。記念大会行事として岩掘 透教士(大阪府)、栄花直輝錬士(北海道)原田 悟五段(東京都)による模範稽古、高校生への指導稽古の演武が行われました。
大会の成績では、勝ち抜き大会は龍谷(佐賀)が優勝、女子は磐田西(山形)が優勝しました。地区の大会として発足、地道に立派な大会に育てて来られた主催者のご努力に敬意を表するに吝かでありません。
2つの大会、実は開始後少しの試合しか見ておりませんが、残念なのは、試合が鍔競り合いの連続だったことです。いくつものコートで少なくとも半分以上、時には全試合場が鍔競り合いの状態にあるのが見受けられました。鍔競り合いから決まる技はほとんど見られませんから、勝ちを得るための手段としては無意味といえます。選手の意識、指導、あるいは審判に問題があろうと感じました。
こちらは手作りの女子だけで行う珍しい大会が続けられ、10周年大会を迎えたとのこと、全剣連女子委員会嶽下専門委員より連絡を頂きました。大会は去る2月25日に、北熊本自衛隊体育館で行われました。まず熊本女子剣道愛好会をスタートさせ、熊本小・中・一般女子剣道大会として回を重ねてきました。今回は3人1組の団体戦に650人の女性剣士が集い、熱戦を繰り広げた特色ある大会です。ご発展を祈ります。
もう一つ特色ある大会があります。大分市から西の内陸部にある三重町で続けられている大会で、「剣窓」1月号の随筆で合澤氏が披露しておられます。2月23日に第53回大会が行われたとのお知らせを、大分剣連副会長成田三吉郎さんから戴きました。占領中からはじめられた、日光大会が昨夏50回を迎えましたが、豊肥大会は昭和24年から歴史を重ねております。占領政策により、学校や警察での剣道が、禁止され、剣道が目の敵にまでされていた時代、生活も貧しい時代に稽古を続け、大会を郡対抗の形でまずスタートさせ、1,000人を超える大会に発展させてこられた、ご努力は大変なものだったことでしょう。敗戦で断絶の危機に面した剣道が、蘇って今日に至った背後に、各地でのこのような隠れたご努力があったことを改めて痛感します。
一橋大学剣道部が創部100年を迎え、4月7日満開の桜の中の国立キャンパスで記念行事が行われ、お招きに与かりました。100年前20世紀の始めの年、明治30年代は、歴史ある学校でつぎつぎと活動が始まった、剣道興隆の時代です。多くの剣道人材を送り出し、社会と剣道に活躍された歴史を継ぐご発展を念じます。
3月末日事務局の腕に覚えあるものを中心に、一行17名で雪の中日光東照宮に参上、参拝ののち栃木剣連からのメンバーを交えて武徳殿で交歓稽古をお願いしました。気温零度、久方振りの寒稽古でした。翌日は好天気、美術館などを訪問帰京しました。稲葉宮司以下の方、栃木剣連の皆さんにはお世話になり、文武両面で勉強させて戴いたこと厚くお礼申し上げます。
東照宮武徳殿前・春の雪をのせた「剣道復活之地」碑 揮毫:武安義光
碑は剣道の「面」、「日光連山」をイメージしているとのことでした。
靖国神社境内、大村益次郎銅像下で、4月3日夜開催、花は見頃でしたが、宴たけなわのころ小雨に見舞われ、早めに解散、良いことばかりは続きません。
月を迎えて2人のベテランが加わりましたのでご紹介します。
国際に富田晴雄(元三菱石油)、事業担当に川端和光氏(元旺文社)です。よろしく。
一方長年ご努力戴いた、森田 譲氏に続いて、武井政幸氏が勇退されました。長らく事務を盛り立てて戴いたご尽力に深謝します。