平成13年度の事業計画、予算の策定準備が進み、3月23日の理事会・評議員会で本決まりになります。この日程に合わせて、各専門委員会のほか、剣道研究会、審議会、担当役員の打ち合わせ、常任理事会などで検討や意見の集約を行いつつ、方針、実行案を固めていく例年の手順で進めました。また年度当初の事業は実施の手配を終える必要があり、前年踏襲で万事済んでいた時代と異なり、改善、新しい構想の導入が相次ぐ近年は、関係役員、事務局には特に多忙な年度末でした。
一方全剣連の活動を支える収支予算のうち、収入の面はまずまずの見通しで、13年度は事業面である程度の積極性を織り込んだ予算を組む事ができました。世の中の不況に比して有り難いことと存じています。発行日の関係で具体的には掲載いたしませんが、すでに固まった行事日程のみを別掲します。
さて審議の経過を顧みると、会議では多くの提案、構想、意見が出されました。また検討、準備を進めており、今後の施策に織り込むものもあります。以下いくつかを取り上げます。
二、三段までの剣道初級者の基本技術を高めるための指導システムを作ろうと、基本形の名称で、佐藤成明常任理事が部会長の作業部会をおき、昨年以来十数回の会議を持って検討を重ねてきました。そしてほぼ固まった部会案が、2月の研究会、3月の審議会に披露されました。
この案は九本の技で構成され、一本目の一本打ちの技から、以下二、三段の技、払い技と続き、九本目の打ち落し技に至っており、それぞれ数種の技が含まれる構成です。二段以下の初級者を対象とし、段階に応じて三本づつを習得させようという構想です。
この案に対して研究会、審議会で、目的、性格論、難易度や指導技術などを含め、質疑や議論が活発に行われました。その際表明された意見には、その性格についての論議が多かったようです。形という名前になっているが、形としては問題が多い。初級者には難しい、日本剣道形との関係はどうなのか。作成の目的を明確にした方がよいといった、議論が多く繰り返されました。
確かに提案者側の説明には、この点について不十分の点が見られました。しかし議論を経て纏められたところは、次のように言ってよいと思います。それを記して今後の技術面での改善、指導面での有効性など検討を待ちたいと思います。
基本形として提案されたものは、「木刀を用いた形の形式による、初級者のための(竹刀)剣道の基本技の習練システム」である。
さて剣道の普及、指導の活動のための教程、技術基準などのうち基礎、基本の面で、全剣連は努力が望まれていたと思います。今回の基本形(仮称)の作成作業は、この分野に手を付けたものとして、関係者のご努力は評価さるべきものと感じます。先月号のこの欄で、年度内に仕上がる見通しと記しましたが、これは少し無理となりました。拙速を旨とすべきものではないので、各方面の意見も集め、建設的に進展されることを念願します。
段位審査の日程を、休日にという方向で全剣連は努力してきました。5月の剣道六・七段審査は、演武大会の前に行うことで、ほぼ解決されました。しかし多数の受審者の集まる秋の審査は、日本武道館に依存せざるを得ず、ここが休日を使わせて貰えないことが最大の難点で、解決の見通しが立っていません。
13年度の11月には、愛知県剣連のご協力を得て、剣道七段審査を、六段並に東京との平行審査とし、休日に名古屋でも行うことになり、一歩前進することになりました。名古屋審査に西日本の方をはじめとする受審者がシフトして貰えれば、溢れ気味だった東京審査会も、会場を求めて休日に実施できるようになることも期待しています。残る八段にはいい知恵がありませんが、いくつかのブロックで一次審査を休日にやることができればとの案も出ています。ただこれには審査の公平性、実施の困難なども含めた問題があり、まずは京都の六段審査を他の日に移動させ、八段審査をはめ込んではとの考えがあります。
かねて検討を進めていた、六・七段審査における学科廃止の方針が固まり、3月末の理事会・評議員会で規則改正を提案、13年度から実行されます。その趣旨についてはすでに昨年2月および本年2月のこの欄で述べておりますので繰り返しません。ただ六・七段審査を受けようとする人に、知的なものが不要ということではありません。自分で必要な教養を備えて欲しいと思います。そして知的要素も重視する称号審査に挑戦して戴きたいという趣旨です。
また各剣連に委任している五段以下については、しっかりとした審査の実施を期待し、何らかの基準を作ることを考えています。
大会、審査会、講習会などの行事という表舞台には出ませんが、医・科学分野の活動の重要なことに異論はなくても、とかく研究や対応が軽視される傾きがあります。全剣連では近年この分野の活動を重視し、専門度の高い委員を委嘱してきました。特に委員長には加賀谷副会長に買って出て戴き、剣道問題に熱心な専門医師の方々、用具の分野から武道具の製造、販売の代表、用具や剣道に関しての研究者、剣道への学識経験者などの参加を得ることができました。そして委員各位の熱意とご努力により、活動も充実し、成果も上がってきております。
研究結果、安全性の基準、実施した認定などはこれまでも発表してきています。代表的な業績としては、剣道具の規格の制定があり、剣道愛好者が用具購入の際の目安となるほか、品質の向上製造の合理化など効果が上がりつつあります。
3月はじめに開かれた医・科学委員会での話題を拾って見ます。まず伊藤元明委員が中心で編纂中の「剣道医学Q&A」は、これまで医師剣道会の有力メンバーが交替で執筆「剣窓」に連載された医学ノートに手を加えて、充実させるものですが、近く編集が終わり、出版の段階に入ります。
一方何年も続いている農工大百鬼委員の「竹刀の打撃力強度の調査研究」は、胴に続いて突きに進む調査計画が披露されました。用具の材料の規格や安全性の研究の基礎データとなるものとして期待されています。また同委員から竹刀の先革の直径、長さの計測器具の改良型のものが提案され実行に移すことになりました。
突きに関連しては、安全性の見地から、面の下の突き垂の形状や強化を図る研究に着手すること、また用具の軽量化とコンパクト化の研究に着手し、試作を進めることなどが提案され、具体化を図ることになりました。
本年度締めくくりの強化訓練講習会、今回は女子剣士も加わって、高校生以上総勢70人が、勝浦の日本武道館研修センターに参集。2月24日から4日間の充実したコースをこなしました。今年度はじめての機会を得た女子剣士の元気ぶりが目立ったとの講師の感想でした。
(1)NHKテレビで、秋田県湯沢の道場での立切請願試合の様子が放映されました。この試合は一人の元立ちに入れ替わり立ち代わり、何十人がかかって3時間も頑張り抜く耐久試合方式です。剣道の厳しい修業の一端を示すものとして、関心を呼びました。この方式は伝統的に方々で行われてきており、いくつかの場所で、年中行事として行われています。
(2)3年前に第1回を行った、パリ大会武道祭の第2回大会が、3月10~11日パリ・カルパンチェホールで開催されました。これは京都の演武大会に似た武道の祭典で、フランス剣連の主催によるものです。全剣連もこの趣旨に賛同、児嶋 克範士を団長として28名の演武者を派遣しました。