平成13年3月号

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今月のまど

綱紀委員会元国士舘大生笠井事件に関し報告を提出

昨年10月に東京地方裁判所八王子支部において、標記の事件に関する判決が下り、被告も控訴せず、懲役3年の刑が確定しました。全剣連会長はこれを受け、剣道称号・段位審査規則第20条に基づき、11月6日に綱紀委員会に対し、「笠井被告人の持つ剣道四段の段位の扱い」について諮問しました。綱紀委員会は、裁判所判決文内容も踏まえて審議の上、去る1月18日の委員会において、「段位剥奪を相当とする」旨の報告を決定し、これを会長に送付しました。

全剣連はこの報告に基づき、剥奪の処分を行なうこととしております。なおこの諮問ならびに報告は、新規則によって行った初めてのものであり、滅多に発動されない案件でもありますので、以下この制度を紹介しておきます。

まず称号・段位審査規則の第20条には次のように規定されています。「全剣連会長は、称号・段位の受有者が刑罰法令に触れるような行為をし、その他称号・段位を辱めるような非行があったと認めるときは、加盟団体会長の申し立てにより、または職権で、別に定める綱紀委員会に諮ってその称号・段位の返上を命じ、あるいは、これを剥奪することができる」。綱紀委員会委員については、去る11月2日の全剣連理事会に諮って石丸俊彦(委員長)、中村龍夫、吉本實、岡村忠典、片岡義夫の5人の方を決定、委嘱しております。

この事件については、すでに新聞などで大きく取り上げられ、公知の事実になっていること、また本人が登録している東京都剣連からの申し立てがなかったことから、全剣連会長はこの事件を直接職権で取り上げ、諮問する手続きを取りました。

さて受領した報告書には、事実調査に基づき委員会が纏めた意見を記しております。結論を出した理由として、「剣道界の名門大学の剣道部の男子寮内で犯行が行われ、これがマスコミなどで剣道界における暴力事件として大きく取り上げられ、剣道界の名声を著しく傷つけ、剣道の段位を辱めることとなった」と強調しています。

以上が事件の経過ですが、この他全剣連は埼玉県剣連、千葉県剣連から進達のあった3件につき、綱紀委員会に諮問していることを付け加えておきます。

この事件から剣道界は何を汲み取り、何をなすべきか

この事件、まず被害者はもとよりその遺族に対して、哀悼、痛恨の念を禁じ得ないものがありますが、剣道界としても悲しむべき事件でありました。当初この事件は個人的かつ偶発的な出来事との印象を受けました。しかし審理が進むにつれ、もっと根の深い事情があぶり出され、綱紀委員会の報告書においても、判決において指摘されたことを踏まえて、「裁判所が同大学の寮で暴力的懲罰行為が日常的になされていた事を指摘して警鐘を鳴らしたもの」と受け止めています。すなわち問題はこの事件が、悪しき一般風潮の中から生まれたことにあり、報告書が指摘するように「剣道界も厳しく受け止める事を望んでいる」ことを深刻に感受しなければなりません。すでに国士舘大学においては、剣道部を解散し非暴力宣言も出され、西原学長自ら大学としての前後措置と、更生のための指導を講じてこられ、その経過を手記として公表しておられます。大学自体における対策は、教育の立場から、今後も適切に進められていくことと予想し、成果を期待しております。

この際剣道界として心配すべきことは、このような暴力的風潮が、事件を起こした大学以外の他の学校の剣道部や、その他の組織に潜在しているかどうかです。

万一にもそのようなことがあれば、それは剣道理念、また指導の基本にも反する嘆かわしいことであり、それは剣道界の自殺行為というほどの重大問題です。剣道の関係者は、この事件の悲劇を肝に銘じ、深刻に受け止め、襟を正して行かなければなりません。

5月行事で改まった点いくつか

各種委員会や打ち合わせを重ねながら、新年度の事業におけるポイントが固まりつつあります。まず間近になった京都、大阪地区の5月の行事を取り上げます。

(1)全日本剣道演武大会への出場資格は、これまで六段以上のものとされており、称号と段位の入り交じった区分で進められていました。本年からは、六段以上の称号保有者に限るよう改め、立ち会いが進められます。

これは演武大会の趣旨と称号重視の今次改正規則の趣旨にも対応したものです。

(2)教士八段の試合は、範士のと同じく拝見試合で行いましたが、勝負をつける立ち会いに戻ります。拝見試合の方が思い切った技を出せるとする試合者の意見が、実績から否定されたことになります。以上の結果プログラムは、錬士、教士、範士の区分となり、範士だけが拝見試合と、スッキリした形で進められます。

(3)組み合わせについての苦情が後を絶たない点を考慮し、組み合わせ方法の基準を作成、発表するとともに、組み合わせ作業の適正化を図ります。

(4)5月3日の都道府県対抗大会の会場は、例年の大阪市体育館から、今回に限り、舞洲アリーナに変更して行われます。

(5)段位審査会の日程は前年どおりですが、剣道六、七段の学科審査の実施について見直しを行います。

(6)称号審査のうち、錬士審査は行いますが、七段受有後2年の受審資格が定められている教士審査は秋に行われます。

(7)範士審査については、剣連からの推薦をベースとして、綿密な調査に基づいて、審査会で審査されることに変わりはありません。一方規則第12条により、教士七段受有者にも範士への道が開かれていますが、これはあくまで特例で旧規則の第12条における七段範士とは全くと言えるほど異なっていることにご留意ください。すなわち功績条項はなく、八段受有者と同じ基準であることが必要なこと、剣連会長からの推薦があれば、お受けして審査に乗せますが、特例中の特例であることを条文を通じてご理解戴くようお願いします。

来年度行事で改められる点いくつか

(1)東京都での秋の剣道七段審査は、過密状態にありますが、その解消と、受審者の便宜を図るため、剣道六段と同じく、日曜日に名古屋市に会場を設けて、受審できるようにします。

(2)これまで北本、柳生と、東西2箇所に分けて行っていた中堅剣士講習会は、講習能率を高めるため奈良市において全員を1箇所に集めて行います。

(3)二、三段以下の初級者の基礎訓練に役立たせる目的で、現在部会において剣道基本形を策定中で本年度中に完成の見通しです。来年度より講習活動を開始し、普及に着手することを予定します。

審判技術向上のための新しい講習について提案

事業展開における重点として、全国の審判技術の向上に取り組んでいることご承知のとおりです。その中核となる講師の養成を本年度から取り上げ、3月には第2回の研修会も実施します。

そこでつぎのステップとして、各地区、地方の剣連の段階に及ぼすためのモデルを作るための、テスト事業を新年度に取り上げてみようと、先日の各剣連の専務理事・理事長会議において呼び掛けました。各剣連段階で審判技術において、中核となる人材層に対する養成事業をモデル的に取り上げ、効果、コスト、時間など所要のデータを得て、広く全国で展開できる準備に役立たせようとするものです。すでにいくつかの反応を得ております。

断片

全剣連事務局の亀澤 優さんは年にもめげず、社会体育指導員講習事業の主(ぬし)として、飛び回っています。第一線の刑事として長年の現場経験に目を付けられ、NHK研修センターの講師として白羽の矢が立てられました。先日採用2年目の記者・アナウンサーなど100名以上の研修会で、「記者と捜査員」という題で、2回にわたり講演。お世辞でなく受講者に大きな感銘を与えたとのこと、NHKの方から伺いました。名物男にもう一枚箔が付きました。

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