平成14年4月号

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今月のまど

新年度の事業計画・収支予算案固まる

3月を迎えて田安門の周りの桜も蕾が膨らみ、春本番も身近になって来ました。卒業式、入学式が相次ぐ、若やいだ雰囲気の到来が待たれます。一方全剣連は年度末諸業務の区切りの時期、新年度事業の準備が重なって追い回されるこの頃です。

新年度は、全剣連設立50周年の年、先月号でご披露した記念事業を織り込んだ14年度事業計画、収支予算案が固まり、月末の理事会、評議員会で決定されます。

経常業務の中で立ち上げる柱は、普及・教育分野の充実で、指導能力の向上のため講習に力を入れます。続いては前年度に始まった審判技術の向上、また審査の適正化を取り上げます。この外、業務運営における事務能力の向上、海外への普及に留意し、50周年記念行事を加えて推進します。

事業を支える収支予算を見ます。収入では大体前年並みの中、称号審査と登録、段位審査関係で若干の増加を見込んでいます。一方支出面は、いくつかの事業費の若干の増加を予想しますが、管理費は前年同じに抑えています。50周年記念事業のための費用は、一括して特別会計に繰り入れて計上し、支出していく計画です。

このために一般会計からの繰入金として9千万円を計上します。広報、国際などその他の特別会計にはほぼ前年並を予定しますが、社会体育指導員養成事業は、繰入金なしの独立採算での運営です。

以上を総計した一般会計の規模は、6億7千万円で、単年度としては約7千万円の持ち出しとなりますが、前年度の繰り越し分や、道場建設積立金の積立を止めることなどで、赤字予算になることは避けられる予定です。

50周年記念事業特別会計は、秋の特別大会の入場料や、出版物販売収入、一般からの寄付金などの収入を見込み、残部を前記の繰入金によって賄い、約1億4千万円の規模の予算で実施することになります。事業内容は固まっていない部分が多いのですが、実施に当たっては、放漫になることを避け、最大の効果を収めて大方の期待に応えていく所存です。

剣道講習充実への準備進む

新年度の重点である指導・教育分野での準備が進められ、新しい剣道講習会資料が作成されます。指導、剣道形の両部会で熱心な検討、作業を重ね、2月の剣道研究会、3月初頭の審議会での意見を加えて充実を図りました。両者とも新年度の研究に待つ部分がなお残されており、完成段階に至っていませんが、従来の不備を補って改善されており、講習のよき指針となることが期待されます。 

その内容に触れますと、指導法の基本事項では、年齢区分での幼年を削除、青年を成年にするなどの一部修正、指導法の重点事項として、「正しい攻防の指導を徹底させる」ことを追加、さらに指導の具体的指針となる指導要綱を作り、初心者、初、中、上級者ごとに指導目標と指導事項など、具体的内容をつけ加える作業を行い、新年度中に完成させる方針です。

日本剣道形については、これまで無かった指導の「重点事項」として、「日本剣道形を正しく継承し次代に伝える」「平素の稽古の中に形を組み入れ、正しい刀法に基づいた剣道を学ぶようにする」などの考え方のもとに、指導の重点事項を定めています。

日本剣道形は、武徳会が大正元年(1912)の制定の際作成したものを、昭和8年に増補し、これが原本とされています。

しかしこれには難解な点が多く、その後解説書が作られました。さらに全剣連普及委員会が平成元年に作った「指導方法の統一事項」が講習資料として用いられてきています。しかしこれらの内容には、解説を重ねた際の矛盾点が見られ、上級者には演武し難い点もあるなどの点が指摘されています。部会ではこの点を踏まえて、「統一見解」の見直しを進めています。しかし作業は未完で、引き続き検討を予定していますが、結論を得た部分は資料に織り込む予定です。

つぎに審判法については、講習の重点事項を見直し、整理されたものを記載しています。

さて講習の実施には、熟達した講師と、その思想統一が必要であり、その改善を図るべく、講師の担当を専門化する他、4月の東西の中央講習会の前日に、全講師による打ち合わせと研修を行い、新年度のスタートに当たり講習の万全を期します。

審査運用の改善のための審査規則の改定

2月号のこの欄で取り上げました、日本剣道形の審査方法の改善など、いくつかの点を改めることにし、称号・段位審査規則の改正を行います。まず剣道六、七段の剣道形審査を、実技審査と別立ての審査員で行うことにします。これまでとかく審査会場別の差が出て、審査基準に疑いを持たれる傾向がありました。よって形審査を、一貫した審査員の目で評価することを通じ、審査の質の向上を行うほか、受審者の待ち時間の短縮など実施面の改善も期待できます。審査員の数は3名、うち2名の同意で合格とし、熟達した審査員を当てるよう、審査員の年齢制限は外します。

次に剣道八段の剣道形審査の不合格者には、六、七段の剣道形不合格者に認められている、剣道形だけの再受審が認められていませんでした。剣道八段に期待される剣道形のレベルは高く、特に講習を経て審査という手順を取っていますが、やはり六、七段と同様に、不合格者に剣道形、また学科の再挑戦ができるよう改めます。

第3点は範士の審査員10人のうちの7人の、範士審査員に規定されている年齢制限を外し、熟達した方をお願いし易くします。

最後は剣道、居合道の八段審査の一次審査の審査員現行7人を6人と1名減らし、4人の同意で合格とします。この結果熟達した審査員を揃え易くして、審査の質の向上の実現を目指します。

審査員の数が減ることは、合格者の質に変化が起こらぬかとの懸念もありますが、3分の2の合意で合格という率は、世上決して甘いものではないこと、審査員の質の向上もあり、改善の方向になると見ています。予備選考的意味がある一次審査での実績を見て、他の審査への採用も検討したいと思います。

今回の改正は審査の質の向上と合理化の観点で行うことは受審者各位もご理解戴きたく存じます。

社会体育指導員養成講習13年度の事業を終えて

去る3月1日から3日間大阪湾岸舞洲アリーナで行われた、第8回中級養成講習会を以て本年度の計画を終えました。この広々とした埋め立ての島の会場に集まった75名の受講者は、初級取得後の4年の歳月の間の蓄積を感じさせるものがあり、レベルの高い講習でした。私も夕方と早朝の稽古実習に参加し、講師と受講者の熱意に浸ることができました。

初級養成がはじまって7年、認定者の累計は3,385人、取得後4年を経た者を対象とする中級養成の認定者も700人に達しました。当初は、講習内容、講習効果に懸念を残す部分も存在しましたが、その後の講習の充実は目覚ましく、常に感銘を受けるのは、受講者の熱心な態度で、これが講師に反映し、経験の蓄積と相俟って、両者の信頼関係が生まれるまでに進化したことに注目します。

これまで初級の資格を取得した後4年を経た方の殆どが、初級更新か中級を取得しておられることは、熱意の反映と感じます。

さて資格取得者を学校や公的機関の指導者として活用する各地での動きも耳に入ります。心強いことで資格を取得された方々への励みになりましょう。これらの方が各地での指導活動の潜在力となり、さらに効果をあげる段階に進んでいることを実感します。

しかし問題は残されています。何よりも制度への理解度がなお不足しており、資格者の活用が狭き門となっていることです。たとえば身近でも成績のよい中級資格取得者は、剣連の錬士推薦の際の講習受講の免除などができる規則になっていますが、剣連によって必ずしも考慮されていないという苦情も聞こえます。

資格の評価と相俟って活用を進めるのは、各剣連、さらにそれ以下の市町村段階の活動に期待すべき分野が多く、先月も指摘しましたが、学校での週休2日の実施に当たり、関係方面の理解を深めつつ、資格利用の改善を図って行くべきと思います。

断片

4月14日に第26回明治村剣道大会が愛知県犬山の明治村で行われます。歴史ある選抜八段の大会に全剣連は設立50周年行事の一貫として協賛します。充実した大会の展開を期待します。

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