桜前線の到来が例年になく早かった今年、九段一帯の花は彼岸のころには満開になりました。坂下から眺めた田安門のあたりの風景は見事で、華やかに着飾って卒業式を終えた若人と、花を愛でる人波とで一帯は大変な混雑でした。
恒例の事務局の花見も繰り上げましたが、天候に祟られて不発、しかし仕事面では年度末を乗り越え、新年度を迎えました。繰り返しになりますが、全剣連設立50年の今年、経常の業務に記念事業を加え、3月19日の会議で原案どおり承認された事業計画の展開に、決意を固めて取り組みます。
新しい意気込みで全剣連が取り組む、東西の中央講習会から新年度の講習事業が始まりました。この講習会は新年度の口火を切る恒例の事業ですが、各地に戻って伝達講習に当たる基幹要員が集まっての講習会で重要な意味を持っています。
まずは4月5日から神戸市中央体育館に西日本の各剣連、関係団体からの50名が集い、3日間の日程で行われました。続いて12日から東日本メンバーによる講習会が東京武道館で行われます。
さて全剣連が指導教育分野を重点分野として専門委員会も新設、充実させて半年経ちました。委員会、部会を繰り返し開催して検討に取り組み、その結果を剣道研究会で練り、審議会、役員会などの意見を加えて、講習の方針として織り込んで、内容を刷新した平成14年版講習会資料を作りました。その改定の方向は、前号のこの欄に触れているところで、なお新年度の研究に待ち、補強を要する部分も残されてはいますが、新しい講習の方向を具体化して、大きく前進したものになりました。
新年度の講習に臨むにあたり、これまで無かったことは、指導法、剣道形に関わる専門委員、講師要員が中央講習会の会場に集合し、事前の研修、研究を重ねたことです。このように講師要員の取り組み熱意が高いことは、新年度の講習事業の充実に大きく貢献することを予見させます。
つぎに講習科目の1つである審判技術に関しては、すでに一昨年度から、基幹講師要員の研修を行って来ていますが、新年度には4月18日より4日間勝浦市で開催される新年度第1回の強化訓練講習会に合わせて、基幹講師要員研修会を行い、強化選手の試合の場を活用して研修する新しい取り組みを行います。
さて他の講習分野より先行している審判講習の新年度計画は、地方の各剣連、関係団体の幹部教育の場に、全剣連が講師を派遣して浸透を図る事業を重点として掲げています。この講習は標準として、講習員の数も2、30人以下に絞り、少なくとも1日半以上のカリキュラムを組み、その間講習員の成績評価も行うという、従来行われている講習に比較して、充実かつ厳しいものです。
すでに昨年度も幾つかの剣連で実施、3月末には埼玉県、愛知県と全剣連との共催事業として試行的に行いましたが、成果が大きかったことを剣連からも喜ばれました。新年度からは各剣連の講習を全剣連が後援し、講師を派遣する方式で行いますが、すでに幾つかの剣連での計画が具体化しています。
5月の京都行事は、全国からの剣道人が集う演武大会にはじまり、その後を剣道六、七、八段審査で締めくくる日程が慣例でした。受審者にとって演武大会で小手試しをし、審査に挑戦という取り合わせは、望ましいものと言えます。しかしふつうの仕事を持つ人にとって、仕事が押し寄せる連休直後の仕事日に、受審のために休みを取ることは相当な難事です。
そこで2年前からゴールデンウィーク前半の5月2、3日に六、七段審査を入れました。大阪での大会、京都の演武大会初日と重なるなどの難点がありましたが、受審する人からは好評を博しました。
しかし受審のチャンスの少ない剣道八段は従前どおりの日程でした。そこで検討の結果、最難関の八段に挑戦する受審者の便宜を図ることにし、八段審査を演武大会前の5月2日に持って行きました。3日の七段はそのままで、あとの週末に名古屋でのチャンスのある六段審査を八段と入れ替えて、演武大会あとの7日にしました。
また八段審査を広い西京極の会場で行うことで、前年を上回る1,094 名の受審者を七審査会場を設けて余裕を以て実施できる他、席が少ない武道センターでやむを得なかった見学者の入場制限を行う必要が無くなるという副次効果も呼ぶことになりました。
一方昨年秋に続いて七段審査を分割して、初めて5月12日に名古屋市でも行いますが、この効果は顕著でした。京都市の七段審査の申し込み者は、昨年の1,100人台から870人に減じ、名古屋市審査に747人が集まるという予期した結果になり、東日本の受審者の多くを吸収することになりました。
これらの変更はいずれも審査業務の軸足の重心を、審査する側の利便から、受審者の立場を考えて行う方向に移すという、新しい称号・段位審査規則の考え方に則ったものです。審査員や主管の京都府、愛知県剣連の皆さんのご尽力により実行されます。
しかし受審者にとって最も大事なことは審査における評価の質を高めることにあります。そのためこれまで問題が指摘されていた、剣道形審査の方式を、先月のこの欄で紹介した規則改正を行って、5月の六、七段審査から実施します。形審査はこれまでに比べて、厳しくなるかも知れませんが、受審者にとって納得できる結果になることを確信します。
また八段審査の一次審査の審査員を1名減らして6人とし4人の同意で合格としたほか、剣道形、範士審査員の年齢制限を一部緩和するなどの改定を併せ行いました。
いずれにせよ、いくつかの新しい方式を取り入れた五月の審査会が円滑、適正に行われ、良い結果が出ることを期待します。さらに5千人に近い受審者の皆さんが、十分実力を発揮して成功されることを念願します。
明治に始まる伝統の名を残し、第98回目を数える全日本剣道演武大会は、戦後の復活に際しての呼称である京都大会の名で親しまれて、全剣連設立と同じ50才を迎えます。
各道併せて3,400人の全国からの剣豪を集めて、5月3日に幕を明けます。今回は全剣連設立50周年記念大会という3つ目の名を併せ持つこの大会の参加者は、前回より少し減りました。内容を見ると剣道の部の200人の減少が目立ちます。これは八段審査が繰り上がったことで演武大会との掛け持ちを断念した方がいたことによりましょう。事実関東一円、九州全域に七段受有の参加者の減少が見られますが、やむを得ないことです。むしろ長い滞在になる多数の演武大会参加者の熱意に敬意を表します。
このたびの記念大会に際し、参加者に賛助、寄付をお願いしましたが、8割を超す方々の賛同を得ました。全剣連はこれに対し、京都の伝統工芸品である漆器の大会記念品を準備して、賛助いただいた方に贈呈します。ただ記念品の総数が膨大なこと、また破損しやすいもので、大会当日お渡しするのは困難と判断し、事前に各剣連に一括お送りすることをご了承ください。
昭和28年に京都大会の一部として始められ、第4回大会から大阪市に移ったこの大会も50回を迎えました。会場は昨年の舞洲アリーナから、前々回の大阪市中央体育館に戻ります。全剣連は敢闘選手の表彰者を増やす他、記念品も用意して関係者に報います。
大会はこれまで3連勝している大阪府が、大会史上初めての4連覇を成し遂げるか、どこがこれを阻んで、大阪に鎮座したままの優勝兜を持ち帰るか、昨年の三重県のようなダークホースが出るかどうか、さらにどんな個人の新星が現れるかなど見所が多々あります。奮って観戦、応援いただくようお願いします。
杖道委員会では制定杖道の解説書の見直し作業を進めており、6月の中央講習会までに完成される予定です。