平成15年10月号

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今月のまど

女子剣道選手権大会を終えて

秋口の大会の第一陣となる第42回全日本女子剣道選手権大会は、9月7日ここ9年定着した名古屋市の中村スポーツセンターで、全国各地の予選を勝ち抜いてきた剣士によって行われました。

今年の大会出場者には、強化選手に選ばれ錬成を重ねた剣士や、7月のグラスゴーの世界選手権大会に出場した選手も何人か含まれており、それらの選手の活躍ぶり、また全体のレベルアップの動向、さらには素晴らしい新人が出てくるかなどを見所として期待しました。

選手の中には通算16回目の出場を数える栗田選手(埼玉)、12回となる田中選手(旧姓谷山、京都)、これに続いて10回出場を達成して表彰された福田選手(長崎)などのベテランに対し、高校生、大学生の7人の10才台の新鋭がどんな戦いを展開するかにも注目しました。

大会の経過は波乱含みで、前年優勝の坪田選手や優勝経験者の甲斐選手(大阪)も一回戦で退くなど、有力と見られた選手がつぎつぎと倒れました。また10代の選手では1人が三回戦に進んだだけで振るわず、ベスス8の戦いを迎えました。

第一試合場から勝ち残った2人の初出場者を含む4人は、試合内容も凡戦続きで抜き出た印象を与える選手はおりませんでした。一方、第二試合場からの4人は、安定した試合運びを続けた優勝経験者の馬場(大阪)、朝比奈(東京)、入賞の常連田中(京都)がおり、優勝は恐らくこの中から出ると見られました。

ところがこのあとの展開には波乱が起こり、第一試合場で勝ち残った初出場の緒方有希選手(熊本)が、激戦を勝ち抜くと共に調子を上げ、一方の試合場で強敵馬場、田中を下し、三回目の優勝をほぼ手中にしたかと見られた朝比奈(東京)と決勝戦で対戦、攻めまくって取ったコテ一本を守り切り、初出場で優勝という偉業を果たしました。健闘を称えるのに吝かでありません。

世界選手権大会出場組では、個人優勝の馬場、三位の朝比奈は期待された力を出しましたが、あとは堀口(山梨)と新里(沖縄)が優秀選手に選ばれただけで音無しでした。

さて昨年の大会は国際剣連理事会のため欠席しましたので、2年ぶり観戦の印象を述べさせていただきます。まず全般の水準が上がっていることは、一回戦の試合で以前のようにこれが各地の代表かと思われるような試合が無くなってきたことや、期待された選手が早々と姿を消したことなどからも窺われました。しかしグラスゴーでの世界大会で女子の試合が初めて公式試合となり、世界各地で女子剣道が活発になりつつある今日、家元の日本の女子剣道の最高の試合としては、少し心許無い印象が残りました。今後日本の女子剣道のレベルアップをどうして進めたら良いか、考えて行かねばならないと課題を残した大会でした。

また同様の意味で、大会の雰囲気を盛り上げるためのキメの細かい運営、演出などではこんご改善すべき点が目立ったこともつけ加えておきます。

東西で夏の剣道六、七段審査会

学校関係の大会が全国各地で開かれる夏ですが、成人の剣士を対象とした高段の段位審査は、多くの社会人剣士に挑戦の場を提供し励みを与えています。現在六、七段審査は春と秋に京都、東京、名古屋で行われますが、地方在住者の便を図り、夏に昇段のチャンスを作ろうと、8月に東西で六段審査を、また東西交互に七段審査を各地回り持ちで実施します。

今年は前橋市で六段審査を、福岡市で六、七段審査が行われました。さらに遠隔地の愛好者の熱意を掘り起こすために、沖縄で社会体育指導員認定講習を行うことにし、これに組み合わせる形で剣道六段審査を那覇市で実施したのですが、現地の方々にも喜んで戴き、それぞれ満足すべき成果を収めたことをご報告しておきます。

8月30、31の両日福岡市福岡市民体育館で行われた剣道七、六段審査会には、七段に840人、六段に900人の方々が挑戦されました。受査者の多くは九州、西日本を中心とした方々でしたが、東京や関西から駆け付けた方もかなりの数に上り、地方審査の名を越えた規模と内容のものと感じられました。審査員は西日本の方で構成されており、毎夏この地で行われていることもあり、運営に当たられる係員も手慣れており、スムーズに充実した内容で終えました。

七段審査にあたって要望したこと

審査会に際しては審査員に対する研修会を行い、最近の審査会での実績、問題点や、審査に当たるべき審査員の心構え、留意すべき点などについて再確認を含めた内容で万全を期しています。

七段審査に当たっては審査員に対し、七段の重みを反映した審査の判定をして戴きたいということを繰り返し要望して来ています。。最高位となる八段審査は、審査の方法、その判定において、伝統的に厳しい評価が為されていることはご承知のとおりです。ところが七段位は一般人に取ってほとんど最高位といえる段位であり、各地で指導者役を勤める立場にあるにも拘らず、全剣連の審査でこれまで、それに応ずる厳しさを持った評価が行われいないように感じられます。審査は審査規則に記されている基準に基づいて行い、それ以外の要素を加味すべきでないというのが、新規則における審査の原則ですが、基準による具体的判断は、審査員が練り上げた個人の判断によることであり、これが審査員がもつ特権でもあります。したがってこれをどうしてくれとはいうべきで無いのですが、以下のように申し上げています。

「七段は六段と続いて審査することが多いからかもしれないが、何か六段のすぐ次のステップという意識で評価しやすい。しかし七段は八段の一つ前の段階という意識で評価して戴きたい」。

今回の七段審査、合格者は98名、率にして11.7%という厳しいものでした。また何人か受けられた女性の合格者は無しという結果が出ました。この結果はきびしいものですが、内容的には妥当と受け止めることができるものを感じました。

前橋市での審査を含め夏の審査会全般を顧みると、公正、厳格という点で、まずまず立派に行われたと見ております。審査員の取り組みや、審査結果の点でも内容が向上しつつあります。この方向をさらに進められれば、受審者の信頼も高まり、奨励の手段としての段位制度の目的を達成することができましょう。

第7回の写真コンテストの入選作品決まる

前回は全剣連設立50周年行事として、規模を拡大して行ったコンテストですが、今回は例年に戻っての行事となりました。一昨年を少し上回る応募作品があり、去る9月1日審査会において選考され、最優秀作品1点、優秀作品2点のほか、佳作、奨励の作品を決定しました。これらの結果は本誌に掲載しておりますが。作品の水準は年々向上しているとの評価すが、入選作品の題材ははほとんどが少年男女を扱ったものであるのは止むを得ないのかも知れませんが、素人の作品らしいものも多く、微笑ましい空気が漂う審査会でした。入選作品は例年どおり11月に発売される来年のカレンダーの紙面を飾ることになりますのでご期待ください。

新しい業務体制逐次始動

9月に入って業務は新しい体制で動き出し、専門委員の人選も進んで、活動が始まっています。3日には現業関係の担当常任理事の事業連絡会が開かれ、今後月2回をめどに開催することを申し合わせました。また11日には新設の現業関係事業調整会議を開催、今後毎月の開催方針を決めます。

断片

2千年あまり前の秦を舞台にした剣術を主題とした中国映画が洋画の映画館で上映されています。題材も珍しいものですが、内容も見応えあるものなのでこの欄に取り上げます。

題は「英雄」(HERO」と名付けられています。後に始皇帝となり天下を統一した秦王を狙う刺客を巡る物語です。秦王を狙う趙国の著名な3人の刺客を倒したといって無名と名乗る男が、証拠物件を持って秦王のところにやってきます。その功により面会を許された無名に対し王がその経過を尋ねます。その報告を聞いて秦王はそれが嘘であり、自分を倒す策略であると看破します。その間の描写は中国版チャンバラですが、見事な撮影技術です。ストーリーはともかくとして、秦王自身も剣の達人であり、王座の背後には古い字体の「剣」と書いた幕が掲げられています。無名は剣の修業とともに、当時の先端的文化である書法を修め武の完成を図るなど、剣道の修業に通じる東洋的思潮が織り込まれています。偶然に覗いた映画が、スケールの大きい武術映画であることに興味を覚えました。

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