世界剣道選手権大会のあと、業務の新体制造りに追われ、梅雨明けの遅れにより夏の実感がおこらぬうちにつぎつぎと夏の行事がきて、慌だたしい日々を過ごした7月の全剣連でした。
去る7月24日に全剣連は、九段会館において理事会を開催し、遅れ馳せながら役員の担当、専門委員会の設置などの審議機構について審議し決定しました。前期には普及関係の教程、剣道形の解説書の見直しなど、教育資料の充実を重点として取り上げ、このための組織に配慮を加え、充実を図りましたが、予定した作業は終了しましたので、組織を元に戻すとともに、今後の重点を、効果的に普及教育の充実を図ることに置き、その方策を進めて行きます。
このため2年前に設けた強化、指導、剣道形の部会は廃止し、普及委員会のもとで今後の進め方を取り決めます。同時にこれまでの普及企画、普及業務の委員会も廃止します。普及関係の仕事は、毎年の事業計画によって進められる大会、講習会などがあり、一方経常的の仕事を越えての指導方針、教育関係資料の作成などがあります。前回の改選に際してはこれらを、今日の仕事と明日のための仕事に別けて整理しました。明日のための仕事はそれなりの成果を収めたのに対し、一方の今日の仕事の処理に当たって必要な審判、審査、社会体育指導員の養成、さらに国際などの業務実行上の様々な問題の調整、役員間の意思疎通に多少の問題が残りました。これらの連絡、調整の仕事を、常任理事会や専門委員会に期待するのは無理だったと思われますので、今回は関係業務調整の組織として、実行の責任を持つ担当役員が直接話し合い、意思決定もできる(現業関係)事業調整会議を置くことにしました。
この会議を毎月開いて業務の調整、担当役員間の意思疎通を図ります。議長には各業務を束ねる立場にある奥園副会長に担当して戴き、幹事役となる調整担当に、小杉常任理事をお願いすることにします。
さて業務担当には一部変更があります。まず普及担当の主査には、松永常任理事が当たり、強化、指導、さらに大会、講習会など関係業務の担当役員を配します。審査担当は新たに福本常任理事、審判担当は奥島常任理事がたり、それぞれの委員長も兼ねます。
社会体育指導員養成、国際は引き続き岡村、竹内常任理事が当たり、医科学、文化事業についても加賀谷副会長に引き続き見て戴きます。総務、経理の業務は大谷専務理事が、総務委員会とともに担当。「剣窓」などを扱う広報・編集小委員会は引き続き大谷専務理事が当たります。情報システム委員会は廃止し、その中のエキスパート数名の方を専務理事直属のタスクフォースとして活動して貰います。資料関係委員会の関係は継続になります。
居合道はこれまでの児島審議員に代わり、審議員になられた上野貞紀氏に、杖道は引き続き半田監事に面倒を見て戴きます。
さてこれまで日常業務に追われてなかなか手を付けられなかった、いわば明日以後の剣道の発展を目指す構想と施策を練る組織として長期構想会議を設けました。これには國松副会長に議長を引き受けて戴き、竹内常任理事が企画を担当します。この仕事の重要性に鑑み、会議の運営、取り上げる問題などは、慎重に準備を進めて取り組んで行くことが必要と考えています。
以上の体制の在り方は、今後の全剣連の歩みと実務の進め方を方向づけるものであり、多くの読者には直接関係の無さそうなことですが、紙面を費やしてお知らせしました。担当役員は想を練って、それぞれの業務を秋口から本格的に始動することになります。
7月26、27日の日本武道館は、全国から集まった元気な豆剣士、さらに指導にあたる方、付き添いと応援の人々で埋め尽くされました。集まるのも両日とも500チームに近い数で、日本武道館が1年でもっとも躍動感に満ちる日です。毎年の光景ですが、見るものにとって、剣道界の前途に何か心強さを感じさせらる2日間です。
例年どおり予選では、元立ちへの基本打ち込みの優劣を加味した対戦で勝負を決します。難しい判定をこなす審判員の中に、多くの社会体育指導員の資格者が登用されたことは何よりでした。また模範演武に昨年制定された、「木刀による剣道基本技稽古法」が、千葉県柏市柏武道館の少年剣士によって披露され注目を集めました。
さて入場行進を見ていると、東京周辺のグループばかりが目立ち、遠隔地の参加が少ないと見られましたが、試合が進み最後に勝ち残って優秀賞を受けた16チームを見ると、ほとんどが遠来のチームばかりとなっていました。やはり遠くから来るのは自信のあるチームだけらしいと納得しました。
今年の高校総体は長崎県で開催されました。30を越す種目のうち、剣道だけが長崎市から西に海路約100キロの離島というべき五島列島の中心の都市、福江市で開催されました。この大会、日本列島の最西端の地での全国大会として、歴史に名を残すことになりましょう。ここへのアクセスは、福岡市、長崎市からの船便か空路に依ることになります。台風の襲来や天候の影響も心配されるだけでなく、参加者の交通費の負担も馬鹿になりません。主催者の高体練ではこの会場の決定に当たり、かなりのの論議が行われたとのことですが、無理からぬことと感じました。
さて大会には私も参上しましたが、多くの人と同じく五島は初めての訪問でした。地元福江市を挙げての歓迎ムードの中、九州側からの応援も得て、設営準備は行き届いており、立派と言える中央公園市民体育館での8月1日の開会式は整然とよい雰囲気の中で行われました。旅程の関係で試合の①は2日目朝の予選までの観戦にとどまりましたが、高校生らしい元気に溢れた動きある活発な内容の反面、昨年も感じたようにチャンスを見つけることも無く、飛び込んではひっついての鍔競り合いという試合の繰り返しでした。
4試合場を見渡すと、全部の試合で鍔競り合いが行われている状態がしばしばで、はじめて剣道の試合を見る人に、鍔競り合いが立ち会いの普通の状態と誤解されかねません。指導と選手の自覚の問題でしょう。
大会でもう一つ気付いたのは、審判技術向上への主催者側と審判員の努力でした。大会前の講習や、大会進行の合間での打ち合わせや反省など行き届いた指導もあり、試合での審判内容の向上も見られ、今後の高校剣道にも良い影響を与えるものと心強く感じました。ともあれこの辺地での大会の運営に際しての、高体連関係者、長崎県剣連、地元の方々熱意と努力に敬意を表します。
家庭婦人という特別な領域の全国大会は、全剣連の大会としては異例のものです。昭和59年に始まったこの大会も20回の歴史を重ねました。技術レベルも上がり生涯剣道の実践を奨励する特色ある大会として実績を重ねてきました。開催を主導された読売新聞社、共催として応援頂いている日本武道館に感謝申し上げます。
8月5日のこの大会、東京都が10年振りの優勝、大阪府がはじめての準優勝という案外の結果で幕を閉じました。
西日本を対象の居合道講習会は300人を越える参加者を得て、7月12日から、山口県周南市で開催、前日の居合道六、七段審査会では、合計35名が合格。7月18日から勝浦市で初級を対象として開催の第46回社会体育指導員養成講習会は120名を集めて開催。8月2、3日のさいたま市大宮武道館での女子剣道講習会には180名が参加。5日の家庭婦人大会の後の日本武道館での全剣連合同稽古会には、大会に来られた方も参加され盛会でした。
8月10日の富山県砺波市での全国教職員剣道大会の前にはこの機会に行う、全剣連派遣講師による審判講習会、「木刀による剣道基本技講習会」が開かれます。また10日には1千人の受審者を集めての剣道六段審査会が前橋市のぐんま武道館で行われます。以上立て込んだこの所の行事を駆け足でご紹介まで。
世界剣道選手権大会での栄花直輝選手を主役として纏めたNHKテレビ番組人間ドキュメント「この一撃にかける」は7月18日夜放映されましたが、視聴者の多くの人に感動を与える素晴らしい内容で好評でした。再放送も深夜でしたが、またの機会が期待されます。