平成15年8月号

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今月のまど

全剣連新役員決まる

去る6月19日に九段会館において開催された全剣連評議員会において、今後2年間の理事、監事を選任し、続いて行われた理事会において、会長以下の役員を決定しました。会長、加賀谷副会長、大谷専務理事は再任されました。一方森島、石丸副会長は退任され、後任として國松孝次氏、奥園國義氏が選任されました。積極的に業務を推進し指導力を発揮して戴いた、森島、石丸両副会長は今後相談役として、参画して戴くことになります。

新副会長の國松さんは、元警察庁長官、退任されてからスイス国特命全権大使を勤められ、昨年秋帰国された、人も知る剣道人です。広い視点に基づいて業務の在り方に新風を吹き込んで戴けることでしょう。奥園さんは大阪府剣連副会長のほか、全剣連審議員を務められ、専門畑での長老であることはご存じのとおりです。

12名の常任理事のうち7名は留任して戴き、仕事の継続的発展に尽力願うことになり、5名の新任の方を迎えています。理事は剣道界の慣例から、各剣連推薦のほとんど新しい顔触れです。

審議員はこれまでの慣例による年齢などの基準により、4名の方が退かれ、新旧交替をして戴きました。

ご意見番ともいうべき相談役には、先にご紹介した2名の前副会長のほか、福岡県剣連前会長の谷口安則氏をお願いし、ご高齢ということで、植田一氏が退かれました。

学校関係3団体からは2名の理事を交替で推薦戴いており、残った1団体の方は参与として、理事会に出て戴く慣例になっています。今回は学生連盟から、林邦夫氏が指名されました。そのほか顧問、参与においても何人かの方の異動が行われました。

新しい仕事の枠組みと担当を検討

全剣連は役員改選後も、すでに決定されている本年度事業計画に沿って事業を行っていきますが、仕事を進めるに当たっての担当の割振り、業務の括り方、専門委員会の構成など、新しい顔触れに応じての編成が必要です。これらを具体的に決定するのは、少し遅れて7月に入ってからになります。これは必要な見直しを行うこと、また世界剣道選手権大会が7月初めに行われることなどにより、やむを得ないところです。

去る6月23日に新しく決まった常任理事会メンバーによる顔合わせと打ち合わせを行い、今後の仕事を進める体制づくりにあたり次の方針を思想統一しました。

(1)調査研究が一段落した普及教育関係業務の担当と、関係専門委員会を整理統合し、今後は普及教育業務の充実に全力をあげること。また普及関係業務の仕事を進めるに当たっての、運営の調整を円滑に行っていくために、従来の専門委員会でなく審判、審査の担当責任者をも加えた役員による調整の会議を設けて行うことにして業務を推進していく。

(2)前号のこの欄でも指摘しましたが、これまで当面の仕事に追われて、長期的視点での運営に欠けるところが見えることから、5、6年程度、まずは西暦2010年頃を念頭に置いた時期を見通す、業務の展望、進め方の絵を描くような作業に取り組むことが必要。

(3)50周年記念事業で形ができてきた剣道文化に関する事業の進め方を検討し、今回の仕事の編成に織り込んで行くこと。

英国グラスゴーで第12回世界剣道選手権大会を開催

去る7月4日から3日間、グラスゴー・ケルビンホールで、41の国および地域の代表・選手を集めて世界剣道選手権大会が開催されました。試合は女子個人選手権試合に始まり、今回から公式試合になった女子団体戦、従来からの男子個人選手権試合、男子団体戦が続きました。

いずれの試合も日本選手は立派な内容で戦い、女子個人は4名が上位を占め馬場恵子選手(大阪)が優勝、同団体は韓国を降して優勝。男子個人は4強の一角を韓国選手に喰い込まれましたが、佐藤博光選手(大阪)が優勝。団体試合は予想通り韓国との決戦となり、同点代表戦に持ちこまれましたが栄花直輝選手(北海道)が延長の末、韓国金選手を降しての各種目完全優勝という成績を収めました。以下大会ハイライトを紹介します。

(1)男子団体戦の歴史に残る決戦

日韓による団体戦決勝が大将同士の決戦となったのは、京都、サンタ・クララ大会に続く3度目ですが、今回は大将戦でも決着がつかず、同じ対戦の代表戦となりました。栄花選手は慎重に試合を進め、15分の角逐から突きを決めて日本の面目を保ちました。栄花選手の冷静で慎重な試合ぶりは安心して見ていられるものでした。

(2)実力を示した日本選手団

大会を締めくくる団体決勝の大将戦はありましたが、大会を通じての日本選手の戦いぶりは各試合とも立派であり、これまでの大会を上回る充実した内容を示したことを報告しておきます。

(3)大会ヘエリザベス女王の行幸

初日の女子の試合には、女王は夫君エジンバラ公と観戦のため来臨される栄に浴しました。日本選手による基本技、打込の披露の後、女子個人戦のいくつかをご覧になり、英国剣道協会ハーウェル会長のご説明で、初めての剣道演武を興味を持ってご覧頂きました。英国で30年以上前から剣道が行われていたことにも、驚かれた由。エジンバラ公は用具などにも興味を持たれ、満足したとの感想を残されました。

開催国の元首に観戦して戴いたのは世界剣道大会の歴史で初めてのこと、英国や各国の剣道の理解と評価を高める上での大きな出来事でした

(4)審判技術向上のための努カが実を結ぶ

大会に当り、いつも問題になる各国の審判の技術の向上を図るため、選考された審判員の研修を、本年4月成田市で開催、さらに大会前も2日間行いました。その効果もあり、試合での審判ぶりは安定し、重要な試合も概ね安心して見ていられるようになったことは大進歩でした。日本側の審判主任、審判員も一緒に参加、努力されたことは勿論です。

また選手団に登録されなかった強化選手10名も参加、講習における試合実演を行って貰いました。真剣味溢れる立ち合いをしてくれたことを付記しておきます。

(5)武道具の修理サービス好評

これまでの大会と同様、全武連から4名の方が参加され、大会期間中、各国選手の用具修理を行って戴きました。小手の修理が240本、その他約60件の修理を行う大繁盛ぶりで各国剣士に感謝されました。

(6)国際剣連理事会・総会を開催

この機会に国際剣連理事会、3年に1度の総会が開催されます。人事では日本代表の副会長に、全剣連新副会長の國松孝次氏が就任、第13回大会を台湾高雄市で開く事を決定、その他いくつかの議題に熱心な討議が行われましたが、国際関係の記事に譲ります。

(7)大会を終えて

大会を中心とした一連の行事は順調に終り、各国の剣道を通じての交流と、剣道の普及に大きな成果を挙げ、成功を収めたことを確信します。

日本の立場では、強化選手を中心に良く纏った選手団を編成して活動でき、実技の面を超えた今後の強化の基礎造りの布石を構築できたことを感じます。関係者の努力に敬意を表するものです。

井上正孝範士逝去される

96歳を迎え、ますます元気に辛口の論調で、剣道界を叱咤して戴いてきた井上範士が7月3日に急逝されました。本年2月には著書『我が剣道と人生』を出され、5月の京都の演武大会にも久方振りに姿を見せられご懇談の機会を得たばかりでした。剣道人として永く他の追随を許さぬ活動を続けてこられた井上さんの長逝を悼み、ご冥福を祈ります。

断片

(1)世界大会団体戦決勝の代表者戦

時間制限なく一本を争う試合に、満場寂として声なく見守る姿は歴史に残るものでしょう。また昔話かといわれますが、戦前の高専大会、勝ち抜きで大将同士、全軍の勝敗を決する最後の一本を争う雰囲気を思い出しました。

(2)スコットランド

北国のスコットランド、滅法日の長いこと、暮れは夜の十時すぎに、朝は四時に明けます。戦時中二夏を過ごした北満での生活を思い出しました。これも昔話。

(3)第17年目

「まど」も、第十七年目を迎え引き続き取り組みます。ご鞭捷をお願いします。

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