2004年9月号

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今月のまど

日本全土が暑さにうだった今年の夏でしたが、時ならぬ颱風の襲来も続き、新潟、福井、徳島などの各地で水害が多発しました。地区の住民の方々のご苦労は察するに余りありますが、剣道関係者や施設でも被害を受けられた向きがあろうと心配され、地元剣連を通じて状況の問い合わせをしています。お見舞い申し上げると共に、、全剣連としても微意を表したいと存じています。

9月号の発行日は8月15日、言うまでもなく終戦記念日です。日本武道館では両陛下をお迎えして、政府主催の記念式典が行われ靖国神社も賑わいます。あの日からすでに59年、当時を体験した人は少なくなりました。日本国の歴史の変換点となったこの日であり剣道も先月号で取り上げた大きな影響を受けたのですが、剣道人の立場を超え、国民の1人として日本の現状、今後の在り方に思いを致す日でありたいものです。

全日本少年武道(剣道)錬成大会溌剌と実施される

7月24、25の両日の日本武道館は、少年剣士によって埋められました。日本武道館が1年で最も活気に満ちる日ではないでしょうか。西日本からも多数馳せ参じた参加者は、第1日470組、第2日479組、参加総人員5,380人といずれも昨年の参加を上回ったことは心強い限りです。溌剌とした会場の空気を表紙の写真からご想像戴けましょう。

試合は例年どおり、基本打ちの優劣を併せて勝ち負けを決める方法を取っています。これら少年剣士が健やかに育ってくれるために、指導に当たる方々のご尽力を切にお願いし、剣道を通じての人作りを実現したいものと感じました。

歴史ある全国教職員剣道大会が廿日市市で開催

戦後の昭和35年に関西地区を中心として盛り上がり、大阪市で第1回を開催、今年で第46回を迎えたこの大会は、広島市の西隣り廿日市市で開催されたました。警察、実業団と並んで日本の剣道界を支える、実力ある社会人の集団として、大会の高い水準を期待し6年振りの観戦の機会を得ました。運営、審判ともしっかり行われた充実した内容であったことを実感しました。

団体戦の最後を飾る優勝戦は大阪府と福島県の対戦になりました。大阪が先制すれば、福島が2者勝って逆転、副将は大阪が制して同点、大将決戦となりました。文字通りの虚々実々の競り合いの中、福島大将が小手から面を決め、この一本を守って福島県が6年振りの栄冠を勝ち取りました。この決勝戦、大会を締めくくるハイライトというべき好試合でした。機会を捉えて技を出し合う熱戦が続き、いずれも時間内に有効打突で勝負がつく充実した試合内容とともに、よく見られる時間稼ぎや変な駆け引きのない、見る者にとっても気持ちのよい優勝戦でした。

この大会の個人戦では、高校以上、幼・義務教育、女子の3部門があり、団体戦は各県代表5人のチームで行われます。大将は50歳以上の者、副将は40歳以上の者とされる他、5人の中に1人は幼・義務教育の教職員を入れる事にして、人材が比較的少ないこの分野が無視されないよう配慮しております。

年齢による資格を設けることは、剣道のような生涯修業が特色である剣道の大会では望ましいことで、全剣連の関係する団体試合では広く取り入れ、効果をあげています。当たり盛りの若手剣士の大会となつていて、必ずしも内容的評価が高くない実業団の大会にも取り入れることが望ましいと思われます。

全日本学校剣道連盟に期待するもの

さて全国の教職員の代表が参加しての全国大会は、役割を果たしていると評価できますが、大会を主催する全日本学校剣道連盟にはさらに期待されるところがあります。そもそもこの連盟は、「学校剣道指導者間の意思疎通を図り、互いに研鑽を重ね、体得した剣道の神髄を教育の場に活かし、時代を担う心身ともに健全な青少年の育成に寄与する」ことが目的であると承知しています。この際改めて原点に返っての活動強化を期待したいと存じます。現在大会前の審判講習の充実に止どまっているのに加え、いくつかの講習事業が計画されていますが第一歩としては望ましい方向であり、全剣連としても可能な応援を行いたいと考えています。

精彩を放った福島市での社会体育指導員認定講習会

10年目を迎えこれまで52回行い、4千3百名を超える認定者を出した社会体育指導員初級養成講習会は、未だに開催経験のない県の剣連に呼び掛けて、実施をお勧めしています。8月6日から3日間、福島市の福島県青少年会館で行われた第53回講習会は、福島県では初めてでしたが、県教育委員会の後援も得て、剣連には大変力を入れて戴き、県内から60名、その他の府県から16名、合計76名という、東北地区では最大クラスの講習会となり、立秋とは名ばかりの暑さの中での講習を立派に終えることができました。受講者には教員が24名参加され、年齢も若い人が多く、40歳台以下が3分の2を超えるなど、剣連のご尽力を反映した構成であり、県の代表選手の顔も見えました。

受講者は技術的にしっかりした方が多く、講師もこれに応えて質の高い講習を行うことができ、主催者側としても満足、受講者にも喜んで貰える講習会を持つことができ、何よりだったと思います。資格を取られた方々は剣技で開眼された点もありましょうが、指導の観点から得た知見に基づき、自信を持って各地で指導を実践して貰うこと、地元剣連の事業ともタイアップして効果を挙げることが、期待されます。

2年振りの一般を対象にした第29回外国人講習会

昨年はグラスゴーでの世界大会の年であり、講習会を審判員特別講習として行いましたので、今回は2年振りの一般対象のサマーキャンプとして、7月28日から8月4日まで北本市解脱研修センターで開催されました。

全剣連からの募集に応じた希望者を選考の上、35カ国・地域より51名の参加となりました。暑さの中、熱心に講習を受け成果を得てそれぞれの国に帰って行かれました。終始指導に当たられた講師、応援された国際業務関係者、施設提供、寝食などご厄介になった解脱会の方々のご協力を深謝するとともに、毎回協賛補助を戴いている小型自動車振興会に厚くお礼申し上げます。

充実の度が見られた全国家庭婦人剣道大会

8月3日の第21回となった全国家庭婦人剣道大会、充実した選手を揃えた東京都Aチームが、決勝で熊本県を圧倒し連覇を遂げました。年々充実の度が加わっていることが感じられました。

白熱戦が期待される第43回全日本女子剣道選手権大会

9月5日に名古屋市中村スポーツセンターで開催される標記大会の64名の出場選手、組み合わせが決定しました。これまでの選手権者4名、グラスゴーでの世界大会で活躍した選手、何回も上位に進出したベテランなど実績ある選手の名が見られる中、21名の初出場の選手の活躍も期待されます。実力者の激突が各所でおこる今回の大会、皇后盃の行くては誰に。名古屋市での最後の大会となりますが、予断を許さぬ大会をぜひご観戦ください。

断片

(1)80周年を迎えた諏訪尚武館道場

大正14年に建立され、今年80周年を迎えた諏訪市にある戦前からの道場尚武館の80周年の式典が行われるとのことで、全剣連顧問をお願いしている館長・土橋久男氏からお招き戴き、7月25日に参上しました。ご尊父である先代、事業家の土橋由衛氏が建設されたもので、戦中には中央線の線路のすぐそばにあることで、破壊の指示を受けるなどの困難を乗り越えて今日に至り、多くの剣士を育て世に送り出してこられました。このような第一線の方々の長年のご苦労が、今日の剣道を支えて戴いてきたものと、感謝の念を新たにしつつお祝い申し上げました。

(2)8月15日の思い出

59年前のことを記させて戴きます。当時私は軍籍にあり、今のインドネシア、ジャワ島バンドンの航空厰に勤務していました。当日の正午に部隊庁広間へ部隊長以下幹部が集まり、陛下が読まれた詔書の放送を拝聴しました。聞き取り難い部分が多かったのですが、「時局を収拾せんと欲し…堪え難きを耐え、忍び難きを忍び、以て万世のために太平を開かんと欲す」などのお言葉で内容を理解しました。戦局の非勢はよく承知していましたので、来るべきものが来たとは思いましたが、このような形でと一瞬呆然としたものの、指揮官の立場にある者として気を引き締めようと気を取り直しました。負け戦で野垂れ死することは無くなったかとの思いが心の中を横切ったのも事実です。私にとっても忘れがたい日です。

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