2006年4月号

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今月のまど

先日の日曜日、朝のテレビで放映された俳句の時間での季題が「春寒」でしたが気候にピタリの内容でした。例年早く咲く庭の紅梅も開花が遅れて、白梅と同時に3月に入って綻びたのも気候のせいでしょう。春まだ浅いのが実感のこの頃ですが、陽光は強く彼岸を過ぎれば本誌の表紙に見られる花の季節が一気にやって来ましょう。新年度、新学期に備えて準備怠りなく備えたいものです。

前年度の緒についた仕事の成長を目指す新年度事業計画

新年度事業計画は収支予算と併せて、3月14日の評議員会・理事会の議を経て決まります。前号のこの欄でお知らせした構想に基づいて、大筋では本年度の事業の延長線を進み、成果をフルに挙げていこうとするものです。

予算面では単年度として多少の支出超過を見込んでいますが、これには近年にできた剰余金の一部を活用します。一方、管理費を含め一般経費使用の合理化、節約をお題目でなく進める方針です。

事業費においても、効果を収めるため必要な部分には適切に投入しますが、全般的には支出の抑制を念頭に置いて仕事に当たります。民間ではバブル崩壊後の不況期に、血の滲むような合理化を行い、今日の回復をもたらしたわけですが、全剣連もまだまだあると思われる残された点を見出だして節約に努力します。

五段以下の審査の調査結果におけるいくつかの話題

地方剣連に委任されている五段以下の審査についての実態調査を昨年度から着手し、所見についての中間報告を昨年纏めました。来年度も調査を補完的に行い、所見を取り纏めるとともに、全国的に調和のとれた審査が実施されるために必要な方策を検討することを事業計画に掲げています。

多くの剣連ではこの中間報告書を参考に、審査の向上を進めておられますので、成果が上がることを期待しております。ここで調査報告を巡っての検討に際し、称号・段位委員会で話題に上った点をいくつかご披露しておきます。

①実技審査の立ち会いを1回だけで判定しているところが見られた。1回では相手との相性や体格による判定の難しさがあり、判定の質にも影響がある。受審者の満足感や教育効果も考慮し、少なくとも相手を変えて2回以上行うべきであろう。

②初段受審資格として1級を持っていることが必要であるが、午前に1級審査を行い、その合格者を同じ日の午後初段審査を受けさせている例があった。ある期間の修業期間をおくべきであろう。

③学科の審査は剣道に関する知識を見るためのものであり、感想や動機などを書かせるのは、作文能力を見るだけになり、望ましくない。

④審査員に全剣連においても選任していない高齢者を当てている例が見られる。審査の質を高めると共に、若い人に席を譲り育てることに配慮を要する。

⑤実技、形の実施にあたってどちらを先に課するかについては、いろいろのやり方が取られている。

⑥学科審査の際、床の上で書かせたりしないよう、いろい工夫をされているが、机を用意するのは難しいようである。

これらは一部の例ですが、五段以下の審査は各剣連での最重要な事業として長年にわたって研究を重ねて実行されており、参考になる内容が積み上げられています。要は段位が全国的に通用するものとなった現在において、各剣連の事情と創意を生かしながら審査の原則のもと基準を守り全国的に調和の取れた望ましい審査を行うための方策を全剣連として求めていくことを目指します。

手応えが感じられる選抜特別訓練講習会

本年度の新事業として取り上げた表記講習会、内容と目的を表した「骨太剣士養成講習会」といった名前の方がとおりが良くなりました。18歳の高校上級生から、24、25歳までの若手剣士約60名を全国、各界から選抜して行う講習です。

昨年11月に第1回、2月に第2回を、いずれも東京夢の島の通称「ぶんぶ」という体育施設で足かけ4日の訓練を行いました。この講習会の特色は、2年間メンバーを変えず繰り返し訓練を行い、一般に行われる試合のための訓練でなく、地力をつける訓練に終始することです。また一過性の講習とせず、各自修錬を続けて貰い、次の講習までにそれぞれの立場でできる修業を重ねて、その成果の上に次回の講習を重ね、2年間を一区切りとする養成コースとする計画です。

2月23日より4日にわたって行われた講習には48名が元気に馳せ参じました。これを迎える11名の講師の交替での指導の下、厳しい訓練が続きます。試合練習は一切行わず、1日何千本かの素振りを始めとし、切り返し、基本技、掛り稽古を基幹とする猛訓練が続きました。さすがに選ばれた若い剣士たち、耐え抜いて厚みを増した姿を実感させられる充実した講習を終えることが出来ました。次の講習は8月に大津市で行われますが、それぞれが日常の自分のプログラムをこなして、一段と成長した姿で再会できることを期待しています。

その間の錬成についての簡単なリポートも出して貰うことにして、今後の剣道界を背負う人材として育つことを期待しております。

さて2回の講習を終えて反省事項もあります。受講生の感想も聞いて、内容の改善や平素の生活管理などの指針を示すことや、床が堅いとの印象がある使用施設の検討も必要です。

特に視察戴いた医・科学委員会委員の方々からは、所要の医師やトレーナーの参加、常駐などが必要、また救急のための器具、薬剤の充実の必要性を強く指摘戴きました。

大事な人材を育てる講習ですから万全を期すよう配慮していきますが、ともかくも今後への期待に手応えを感じたことでした。

「指導の心構え」成案に一歩前進

この欄ではあまり取り上げませんでしたが、一昨年全剣連の機構として「長期構想企画会議」を立ち上げ、当時の國松孝次副会長を議長として、始めに「剣道の理念」に続く、各論の問題ともいうべき「指導」の基本事項に取り組んで戴きました。審議を重ねて昨年6月に中間報告ともいうべき5項目から成る「指導の心構え」の答申を戴きました。このうち「竹刀の本義」については2つの案の併記したものとなっていました。昨年7月の役員改選、担当の変更に伴い、加賀谷誠一副会長が議長として会議が引き継がれ、新しく議員、委員のメンバーを委嘱、作業を引き継いで取り組まれました。

そして先般新たな試案を纏め、2月の剣道研究会、3月6日、7日の審議会で披露し、意見を求めました。
先の案が「生涯剣道」「竹刀の本義」「礼法」「師弟同行」「事故防止」の5項目であったのに対し、第二次案ともいうべき今回のものは、集約して「竹刀の本義」「礼法」「生涯剣道」の3項目に纏められました。

会議ではいくつもの意見が表明されましたが、大方は纏め方について賛同、支持の空気が強く、これをさらに企画会議で意見を参考にし、理事会の意見も徴した上で案を練って、来年度用の講習会資料に掲載する予定です。

断 片

このごろ映画の話題がないが見ていないのかといわれました。そこで取り上げるのは、『男たちの大和』です。戦前の最大の戦艦、米軍の沖縄侵攻に対する日本海軍の最後の反撃として、昭和20年4月に航空機の護衛もない、いわば特攻作戦で沖縄を目指して出撃し、南支那海で撃沈された悲運の戦艦の物語です。

悲惨な話ではありますが映画は、乗り組んでいて生き残った父の遺言により、遺骨を艦の沈没場所の戦友の元に撒きに行く娘の行動を基調として展開され、その間に艦内の活動、兵士や家族の物語が綴られます。そして悲劇とは言えますが、それほどに暗さを感じさせないよう見事に纏められた映画です。

在りし日の艦の甲板上での剣道の稽古風景も出て来ます。戦中派にとって、同じ世代の若者を扱っており、感慨を禁じ得ない内容です。呉市に昨年完成した10分の1の精密な模型を中心とした「やまとミュージアム」とともに一見して戴きたいものです。

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