例年にない寒波に襲われた日本列島の冬でした。立春を過ぎたこの頃も庭の梅の蕾はまだ縮んだままです。しかし日差しは次第に明るく、夜明けも早まってきて、季節が一歩一歩春に向かって動いているのが感じられます。
先月号で触れましたが、新年度の準備に本格的に取り組んでる全剣連のこの頃です。
政治や経済の世界では改革が叫ばれ、サプライズを伴う動きが繰り返されるこの頃ですが、剣道の世界では奇をてらわず、堅実に前進、改善を重ねていくことが大事です。
全剣連は新年度もこの方針で仕事に取り組みます。
当面の話題から始めます。
新年度最初の大きな試合、第4回全日本選抜剣道八段優勝大会は、全国の円熟した精鋭剣士を選び、4月16日に開催されます。出場選手と組み合わせも決まって本誌で披露しております。
八段取得後5年を経た剣士32名の選手は、東京、大阪の人材豊富な所も最高4人に制限していることなど、前年の基準で選出されました。
今年の目玉は試合時間の変更で、昨年秋の全日本東西対抗剣道大会で採用された10分で実施します。
その効果は昨秋確認されましたが今回はトーナメント試合にはじめて採用し、選手が力を出し切って素晴らしい試合が展開されることを期待します。新年度の前進第一弾となります。
多数の方が観戦されるようお勧めします。
すでに予告されていることですが、日程整理が一段落して、行事の重複がなくなった形で今年の日程が決まりました。
年度劈頭を彩る都道府県対抗大会が4月29日の祝日に開かれ、以後剣道六、七、八段審査と続いて、居合道、杖道などで始まる5月2日の第102回全日本剣道演武大会初日を迎え、5日の祝日を以て演武大会は終了します。
一部の重複は残りますが、スッキリした日程で進み、6日の称号審査を以て一連の行事が終わります。この結果行事参加者、運営関係者の負担が軽減されましょう。翌年以後もこの日程で行う予定です。小さい前進の第二弾と言えましょう。
全剣連では全国家庭婦人剣道大会、全日本女子剣道選手権大会の審判員に女子を加えており、3人に1名は女子を当てています。来年度事業の相談の中で、女子審判員の技術に問題があるとの意見が出ました。原則八段受有者を当てている男子審判員は経験も多く、技術の評価もしっかり行われ人選されます。これに対して女子の場合は七段、時に六段からも選ばれます。経験と技術水準に差があるのは当然で、全剣連はそれを承知で女子剣道の振興のために行ってきました。
これが試合の適正な運用に差し支える程のものであれば、考え直すことになりますが、他の団体の大会に波及すること、女子剣士の励みに影響することも心配です。早急に結論を出さずに人選と講習に力を入れることになりした。
具体的には来年度の講師要員研修会を1回減らし、七段の剣士から人選した審判要員の研修会を行って、能力、素質を高めることで対応し、その効果も見ていくことに落ち着きました。
新年度事業は大筋として本年度の方針を踏襲し、効果を上げていくことを目指します。
まず講習では地方に軸足の重心を移し、全剣連が援助する体制を引継ぎ定着を図ります。
強化では、暮れの第13回世界剣道選手権大会を目指す選手強化を重点としますが、一方で将来の剣道界を背負う若手の実力を養う特別訓練を進めます。
開始後10年を経て上級資格者を生んだ社会体育指導員養成事業も推進を図ります。
審査は適正な実施のための手を緩めず進めますが、地方に委任の五段までの審査の実態把握を進め、全国的に調和の取れた審査が実施されるための方策を練ります。
その他の事業もそれぞれ効率的に前進を図りますが、前号で触れた剣道国勢調査の準備など新しい芽にも配慮していく予定です。
規則、制度の改変などについては現在予定に上っていません。
収入は増加が期待できず前年横ばいの見込み。世界大会のための支出増。強化など講習活動の充実などあり、収支の改善は望めない状況で、継続事業や一般経費の節約に努力を要しますが、本年度に続きある程度の赤字予算を組まざるを得ない見通しです。
最近活溌に進んでいる中国における剣道ですが、北京で指導の中心的役割を果たしておれる日本人会剣道同好会の幹部の方の来訪があり、現状のお話を伺いました。
中国の剣道の中心の北京には在留日本人の剣道同好会があり、駐在の剣道有段者が自分達の錬成のほか、中国グループの指導奨励に努力しております。現在北京には剣道クラブが7つあり、会員は合計500人余りとのことです。
北京以外にも剣道クラブが生まれており、主なものに上海、広州、重慶などがあります。
しかし各クラブの連携が進む段階には至っておらず、団体内のリーダーシップ争いは盛んなこと、指導者の不足が深刻ですまずは纏めることのできるリーダーが必要です。そして講習の実施、初級の昇段審査の実施の要望が強いことは昨年の訪中の時感じたとおりです。
日本人同好会は剣道の統一された組織ができることを期待しつつ、合同稽古などレベルアップを図るための活動を進める計画を持っておられます。
全剣連としては中国剣道の健全な発展を図るために、まずは一般の関心を深め、努力して行うことを志向します。要望がある専門家派遣への援助を国際交流基金に要望しており、まずは夏前に講習と初級の段審査を北京で実現することを目指しています。
私事旅行のためマウイ島に出かけた帰りに、お招きを受けてホノルルに立ち寄り、剣連幹部と懇談しました。上野照司現会長。佐藤巌前会長などの幹部の方とお会いしましたが、
昨年暮れに剣道功労賞を受賞された赤城 昇さんは特に元気でおられました。
ハワイ剣連の剣道人口は、登録し会費を収めている人の数で500人足らず。七段、六段それぞれ7名以下各段がおります。
剣道クラブは全体で10、人口の多いオアフ島に半数の5、あと大きいハワイ島に2、マウイ島2、一番西のカウアイ島1という状態で、本部のあるホノルルが主力になります。
日曜の午前に合同稽古を行っているのですが、今回は参加できませんでした。やはり指導能力のある方の来島を歓迎しております。日本に近く、剣道の歴史も長く昨年剣連設立50年の行事を行いました。日系人が主力でもあり、その発展を応援したいと感じました。
2年がかりで2千の会員について調べられた実態調査がまとまり、結果を戴きました。
それ自体権威ある団体として把握しておいて戴きたかったことですが、手が回らないということで全剣連が多少のご援助をして努力戴きました。
貴重な情報とは思いますが回収率が3分の2程度であることなど問題もあります。先月申しましたように全剣連も剣道人口の把握など自慢できませんので、剣道国勢調査を考えています。その第一歩の資料としては意義あるものと感じます。
2月から実施のご連絡を戴きました。全国の剣連で18番目となります。これが多いのか少ないのかの意見は別れますが、すべての剣連で取り上げて戴きたいことです。
大きな剣連は大体発足していますが、特に東北6県がすべて持っておられるのは立派。
一方、東京都、神奈川県などの大剣連にホームページがないのは意外、情報化時代にまだまだ立ち遅れている剣道界の象徴と感じます。
2月3日から仙台市で行う予定であった第61回講習会は最低規模の人員が集まらず、中止しました。6月の福岡県での講習中止に続く出来事で残念かつ痛手です。
九州・東北の雄といえる県であり期待外れですが、平成11年に中止になった山形県で4年後に改めて、寒河江市で80人を集めて成果を収められた例もあります。
改めてご尽力願い、名誉回復をして戴きたく存じます。
昨年8月の愛知万博で好評を得た剣道フェスティバルの記録DVDが完成、頒布される運びになりました。この行事、剣道のPRの上で新機軸を盛り込んだものです。入手して活用されてはいかがでしょうか。