2006年2月号

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今月のまど

寒稽古に始まる新春の鍛練に参加の人々に賛歌を

この「剣窓」がお手元に届くのは、新年会、初稽古に続く寒稽古が真っ盛りの頃でしょう。

1年で一番寒い時期を選び、日を区切って続けられる寒稽古は恐らく一般のスポーツでは見られない武道特有の鍛練です。そして昔からの方式は、朝が明けやらぬ時間から始められるものであり、今年も全国各地の道場で行われていることでしょう。

もっとも例年にない豪雪の影響を受けたり、警備の問題を抱えて、計画どおりできないケースも多いかもしれませんが、少年を含めた多くの剣士が、稽古に励んでいることでしょう。剣道界では当たり前のそれらの方々の精進は、日本社会の宝というべきものではないでしょうか。その努力と活動を称えたいと思います。

新年度の事業への取り組み始まる

年明けとともに4月からの事業への取り組みに全剣連は早くも追い回されています。国の新年度の政府予算案はすでに多くの論議の末に決まりましたが、全剣連も来年度予算の編成に着手する時期になりました。基本的には新年度は役員任期の2年目であり、取り組んだ業務に油が乗る時期であり、成果をあげる年になるべきです。

まずは教育・指導の充実が重点ですから、地方に軸足の重心を移した講習事業の実績を吟味しつつ、新年度の実施計画を立てることになります。その中で教員、女子への講習は前年度の計画で良いか充実の方向で検討の対象になりましょう。

世界大会を年末に控えての強化活動には力が入りますが、2年目になる若手剣士の強化訓練には注目して行きたいと思います。

教育事業として平成7年に白紙から始まった社会体育指導員認定講習が満10年を経て上級認定に到達しました。この事業のさらなる発展を期待して、記念行事を行いたいと思います。今日に至る関係者の労にも報いることも大事ですが、ただのお祭りに終らせたくありません。

称号・段位の審査業務は進展しつつありますが、五段以下の地方の委任審査についての実態把握を進め、それぞれの剣連でも改善が進んでいることも念頭に結論を得ることにしたいと思います。

文化関係事業は充実させることを希望しますが、昨年の万博の経験、また派生した仕事の成果を生かしたいと思います。

さて日本の剣道の実態は分かっているようではっきりしません。冒頭の寒稽古の状況なども分かりませんが、日本の剣道人口を聞かれても、自信ある答ができません。それらを含め全般の剣道の状況を知るための総合調査にいずれは取り組むべきと感じていましたが、そろそろその時期を迎えたのではないでしょうか。今後の剣道の普及、発展を図る上で何より必要な基礎情報を得たいものです。剣道の国勢調査とでもいうべき事業になります。

以上念頭に浮かんだことを並べましたが、現在の業務の進展方策と併せ、周知を集め財政事情も考えつつ具体案に持って行きます。

17年初段取得者数前年と同水準

先月号で予告していますが、昨年の初段取得者数が纏まりました。45,795人という数は平成16年に比較して、100人の減ということはまず同数といえます。

都道府県別には一進一退という感じですが、前年に比べ増加した剣連が18、関東周辺の剣連が軒並み増加しているのが目に付きます。

また今年の特色としては、男子が増加し、女子がわずかであるが減少していることです。少子化の傾向の中、総数が横這いに止まった陰には、多くの方の努力があるものと思われます。質を落とすことなく今後も剣道普及に努力を重ねて行かねばなりません。詳細は8頁の資料をご覧ください。

国際剣連の理事会を台北で開催

世界の剣道普及は進み剣道人口も増加しています。
国際剣道連盟(略称IKF、本部は東京全剣連内)には、現在44の国、地域が加盟し、内2つの団体は準加盟団体です。

3年ごとの世界剣道選手権大会の1年前になる昨年12月10、11日の両日、台北市で理事会が開催されました。理事会には、会長以下副会長、世界各地区の理事などIKF役員14名の出席を得て福華大飯店において開催されました。

議事は人事案件として、退任された竹内事務総長に代わり福本理事が臨時代行し、決算や役員の交代、3カ国の新規加盟などの案件が承認され、今年12月開催の第13回世界大会の準備状況が、台湾代表から説明されました。

続いて次回のアメリカ・ゾーンでの大会開催地として、ブラジルが他のアメリカゾーン国の援助のもとで開催することが内定しました。

昨年加盟を申し込み、実現できなかった国際競技団体総連合(GAISF)への加盟申請を再度行うことを報告。

最後に国際剣連段位審査規則の改定案を審議し、異議なく承認されました。これは審査員の数、実施要領などの変更が主な内容で、これにより現在の日本の方式とほぼ同様になります。

これで議事は終わり、翌日は大会会場である台湾大学体育館を視察し日程を終えました。
久し振りの会合を振り返ると、メンバーがいずれも経験を積み、熟達した方ばかりで、極めて良い雰囲気で会議を終えることができたことを喜んでおります。

国際剣連の運営は一応順調に行われてはいますが、現在各国負担の年会費総額を遥かに超す部分を日本が負担している財政の問題、現在アジア、欧州、北南米の3ゾーンを今後の加盟国の増加にどう対応して運営するか、加盟国の増加に対応する在り方など、多くの問題を抱えており、日本としても苦労の種は尽きません。

フランス剣道人口急増のニュース

パリに長らく滞在、剣道の普及に努力しておられる好村兼一氏(剣道八段)からお便りを戴きました。それによると停滞していた仏剣道の会員数が急増を続けているようです。

一昨年度初めて6千を越えたところ昨年年度末には7千6百になり、さらに増加の方向にあるとのことです。これは昨春の第3回パリ大会の成功した影響と、各分野の指導者の努力の結果だろうとは喜ばしい限りです。日本でも何か見習うことがあるかもしれません。なお剣道の分野にはスポーツチャンバラも入っているようです。

少年時代の寒稽古の思い出 

寒稽古に関する個人的思い出を記させて戴きます。

私は昭和7年(1932年)に東京郊外、今の練馬区江古田にある旧制武蔵高等学校尋常科(現在の中学)に入学し、高校まで7年在学しました。剣道部に居たこともあり、翌年1月から毎年寒稽古に参加、卒業まで続けました。

寒稽古は10日間、5時半に始まります。家を5時前に出て駅まで10分。人気のないホームで、5時の2番電車のヘッドライトが遥かに見えてくるとホットしたものです。電車で10分、江古田駅から道場に駆け付けます。寒稽古は初めの30分は中学の寮生のためのもの、続いての30分が剣道部主催と区切られます。暖房など一切ない、武蔵野の寒気の中の道場での稽古は、初め足が痺れるほどでした。7時前に稽古を終える頃、ほのぼのと夜が明ける時の壮快さは忘れることができません。

結局私は毎年参加しました。高校に進むと指導側に立つことになり、稽古の苦しさは減りましたが、寒さより寝不足が苦しかったような気がします。そして7年間皆勤できたのは上出来だったと思います。そして技術面より、精神面の鍛練、また人との触れ合いなどが大いに役立ったと思います。

さて寒稽古に関し忘れられないのは、中学の寮の寒稽古の納会で、参加者全員が真剣で試し切りをさせて貰ったことです。巻藁と台、日本刀が用意され、1年生から順番に巻藁を横に縛った台の前に立って一撃します。手のバランスが悪いと切っても跳ね返ったり、切っても刀がクの字形に曲がったりします。

私も初めて恐る恐る試みた所、少し斜めではあったが、3分の2ほど切り込め、刀も曲がらずに済んだので一安心した覚えがあります。その後毎年上達し、力も付いて一束以上を真っ直ぐ切れるようになりました。

この試し切りを実行されたのは、地理の先生で寮の舎監を兼ねられていた塚本先生です。先生は広島高師の出身、かねて無刀流を修業された達人でした。それにしても刀や藁束の用意を始め、手のかかる試し切りを全員にやらせて戴いた教育に対する熱意に感謝の念一入の寒稽古の思い出です。

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