新緑を迎えた京都で、恒例の「全日本剣道演武大会」が全国各地から馳せ参じた剣道人によって繰り広げられました。
明治28年に始まった武道の総合大会を継承したこの大会は通算102回を数えます。多くの剣道人の出会いの場でもあるこの大会は順調に展開され、剣道の祭典として参加者に満足頂けたことと存じます。
今年の諸行事は4月29日の祝日に始まる新しいラインアップで臨み、行事の重複を無くしたことが効果を及ぼし、総合的に見て良い結果を生んだと思います。大方の感想を頂きたいものです。
今年から4月29日の祝日に繰り上げて実施された「全日本都道府県対抗剣道優勝大会」は、新年度のトップを切る全国の精鋭を集めての団体試合です。各剣連の充実度を占う内容に関心が持たれますが、岡山県が団体戦で昨秋の国民体育大会の余勢を駆って、久方振りの大会3連覇が見られるかにも興味が集まりました。
第1ブロックの岡山県は好調に試合を進め、北海道、京都を圧倒し、さらに難敵鹿児島を大将同士で下して準決勝に進みました。
他のブロツクでは東京が、代表戦で兵庫を破り、福島を下して準決勝入り。大阪府は順当に宮城、山梨、神奈川を破り、静岡、福岡の強豪に競り勝った埼玉とともに四強に顔を揃えました。
準決勝、大阪は先陣で埼玉を圧倒、大将を待たずに勝利を決め、岡山と東京の対戦は、調子をあげてきた東京が優勢に試合を進め、副将で勝ちを決め、岡山の野望を挫きました。
決勝戦は久方ぶりの東西両雄の対決となりました。前陣優勢に試合を進めた大阪は、東京の副将に逆転され、大将がこれを守り4年ぶりの優勝を勝ち取りました。
さて今大会で目立ったのは6組の「おしどり剣士」の出場です。まず、全日本選手権大会に名を残している大阪府の石田真理子、石田洋二選手は優勝戦に進出し活躍しました。この他の静岡県の内田さくら、勝之選手、茨城県の寺島ますみ、清志選手、栃木県の諸伏沙織、勝選手、石川県の岩脇律子、司選手、徳島県の平野悦子、誠司選手はいずれも2回戦に進出する活躍をしました。
広大な大阪市中央体育館での観客の誘致は課題で、祝日開催の今年は大阪府剣連も努力され、前回より多数の観客を集めました。
今年の演武大会の4日間、これほどの好天で通したことは近年記憶にありません。そのことが今次大会の良い印象として、参加者に残されたことは間違いありませんが、手慣れた大会運営をされた京都府剣連の方々のお骨折りは見落とせません。参加者の目に付かなかったことで、大会前日に居合道の方々が中心で、会場周辺の草取り、清掃をして頂いていることなど忘れてはなりません。
国の重要文化財の会場の運営にも改善があります。演武の場所を広く取るために係員の机を後退させたこと、正面玉座の後ろに国旗を移したことも、気付かれた方は多いことでしょう。演武の実施も整理され、剣道の3日目はすべて八段以上の対戦にしました。これで内容もすっきりし、閉会も3時前と早まったのは良かったのではないでしょうか。その分剣道の初日、2日目に皺寄せがきて運営側に苦労があったようです。特に数年前から七段で初日の3日に演武することを希望する方には配慮していますが、希望者の増加により。初日の運営が窮屈になっています。参加者のためを考えて、初日の開始時間の繰り上げを検討します。
3日間の朝稽古は参加者の大きな楽しみですが、大会参加者以外の人の紛れ込みが目立ち始めました。折角の大会参加者のための稽古を妨げるのはお気の毒で、来年は対応を考える必要があります。 また朝稽古で最後の時間は指導稽古でなく、元立ち同士の稽古の時間を設けました。これはすでに各地の合同稽古でも行っていて、関係者の好評を得ており、京都でも継続することになります。
都道府県対抗大会の翌日から会場を西京極に移し、剣道六、七段審査を行い、5月2日の剣道八段審査に至ります。武徳殿で剣道演武が始まる3日には、武道センターにおいて居合道、杖道の八段審査があり、年1回の挑戦をされます。
さらに5月13、14日には名古屋市枇杷島スポーツセンターでの剣道六、七段審査に続く審査会は、いずれも1千人に及ぶ受審者を迎え、すべてを合わせ6千人の受審者に対する大型審査会です。いずれも順調に終えることができたのは何よりです。受審者の方の審査の結果は明暗を分けており、運が悪かった方、評価に納得できない方もおりましょう。このような方を減らすため主催者、審査員側は努力しなければなりません。
審査の合格率をみると、剣道六段審査京都12.7%、名古屋11.1%、剣道七段京都8.2%、名古屋8.9%という結果はまず安定した数字で、審査員の判定も基準に則して定着してきたものと見ています。
難関の八段では杖道1名、居合道10名となり、1千3百人が挑戦した剣道八段では、一次合格96名でしたが、実技二次合格者は16名、剣道形再挑戦の方を加え、19人の最終合格となりました。
称号審査では錬士合格は335名、小論文の不合格者が減ったこと、教士が210名で学科試験の成績の向上が認められました。
範士は杖道が2年振りに1名、居合道がこれまでの枠を超え5名、剣道は昨年を下回りましたが二桁10名の新範士が誕生しました。
範士候補者には80歳代の年配者が何人か推薦されましたが、いずれも審査会の評価を得ることはできませんでした。年配の候補者の方については、過去の御努力など理解はできますが、現行規則の趣旨、基準などから、審査会で取り上げられないやむを得ぬ結果です。同様のことは剣道八段審査にも見られます。規則の基準に照らし、年配の方に厳しい結果になっていることは御理解願いたいと思います。
さてこのたびの剣道範士審査に当たり、各剣連からの推薦候補44名に加え、規則に基いて全剣連会長が2年ぶりに2名の候補者を推薦しました。結果的にはいずれも合格されましたことを付け加えます。
ともあれ今回の審査で合格されました方々に祝意を表しますとともに、今後のご加餐を念じ、また不成功のかたが捲土重来されることを念じます。
4月に行われたGAISF(国際競技団体連合)総会で、国際剣道連盟(IKF)の加盟申請が承認されたことは先月号でお知らせした。これは国際剣連の活動として行ったものですが、その意味について、全剣連関係者に理解して頂くため、ポイントを記します。
①GAISFは国際的広がりを持つ101の競技団体が加盟しているIOC関係団体として国際的に認められた権威ある団体であること。
②国際剣連が加盟したことは、「剣道」の名が国際競技界において国際的に公認されたことになり、例えば剣道に紛らわしい泡沫団体の加盟を阻止する予防効果が大きいこと。
③剣道が国際的に市民権を得たことにより、剣道の後進国が政府から援助を受け易くなる。加盟を要望する剣連の期待に応えた。
④加盟団体にはオリンピック種目もあり、GAISFはIOC関係の有力団体であるが、剣道のオリンピック競技への加盟とは直接関係はない。
⑤加盟するための基準として世界大会の開催が必要であるが、現在の世界大会で十分であること。
①京都市でタクシーに乗ると会社による料金の差に気付きます。その中で安いことで知られている会社の車に乗った所、「きもの割引」の表示が目に付きました。聞けば和服の人は料金一割引きにするとのことでした。京都らしいと思いましたが、フト気付いて剣道着も和服に入るのかと聞いたところ、「割引」対象になりますとの返事でした。剣道着の人が1人いればよいとのこと、念頭において活用されたらと思います。ただ汗だらけだと敬遠されるかもしれません。
②3月号の「まど」で指摘しました「ホームページ」未開設の大剣連のうち、「神奈川県剣連」は5月から19番目の剣連として充実したホームページをスタートされましたことをお知らせしておきます。