2006年7月号

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今月のまど

 珍しく好天気に恵まれた京都の行事のあと、不順な天気が続き、地球温暖化の影響かなどと取り沙汰されましたが、新緑の初夏の季節を迎えました。東京西郊ではさつきが満開です。高原では「れんげつつじ」が咲き乱れていましょう。剣道界も新しい年度のプログラムにしたがって事業を展開しています。全剣連も本年は役員の異動のない年で、役員はしっかりと仕事に取り組んでいます。

今年の諸行事は4月29日の祝日に始まる新しいラインアップで臨み、行事の重複を無くしたことが効果を及ぼし、総合的に見て良い結果を生んだと思います。大方の感想を頂きたいものです。

平成17年度事業を顧みる

前年度の事業報告と収支決算は、6月13日の評議員会、理事会の承認を受けて決まります。会議に提案される案が固まりましたので成果を顧みます。

まず取り上げるのは「講習体制の変更」で、全剣連と各剣連との役割と分担を見直し、一般への講習は各剣連の方針のもと、必要により全剣連が応援する体制にし、重心を地方に移したことです。
この流れに沿って昨年度は剣連に対して、34回の講習に講師を送る他、資金援助を行いました。一方各ブロック持ち回りで行ってきた地区講習会は廃止し、女子講習会も17年度限りとしました。18年度も、引き続き各剣連の37回の講習を支援することにしています。講習科目は審判法が多くを占めます。

この体制では各剣連が自体の計画のもと、地域のレベルアップに努力頂くことを期待しており、全剣連自体は講師養成、強化活動、など全般にわたる必要の分野に専念することになります。双方の分担として望ましい方向と考えていますが、実際上効果が上がるかどうか、評価しながら進める必要があると思います。

つぎの目玉は強化訓練の中に、「選抜特別訓練講習会」を取り上げたことを挙げます。度々ご披露してきましたが、全国から選抜された若手剣士を2年間にわたり訓練を重ね、将来の剣道界を背負う剣士を育てようとするものです。滑り出したばかりの意欲的な計画ですが、手応えを感じています。

平成7年に始めた「社会体育指導員養成講習事業」は、その後順調な成長を見せ、10年目を迎えて「上級指導員講習」を実施する段階に進みました。東西で2回の講習会を行い90名の上級資格者を生みました。特記すべきことは、中級以下の講習が、文部科学省(日本体育協会)のスポーツ全分野の枠組みの一環として行って来たものであるのに対し、上級の講習・資格は、その枠を超えて剣道界独自に築いたものであることです。

審査関係では「各剣連に委任していた五段以下の実態調査」に前々年度から取り組み、概況を把握したことを挙げます。そして改善のための所見、学科審査の例題集などの取り纏めに着手できたことです。全剣連としてこれまで手を付けていなかった領域で、五段以下の各剣連での審査の向上に役立つ成果と考えています。

長期構想企画会議で取り組んで来た、「指導の心構え」が会議としての成案が概成したことは大きな前進と評価できます。

さて薬物の使用に対する監視問題がスポーツ界全体の関心事になっている流れに対応して、全剣連が「日本アンチドーピング機構(JADA)に加盟」したことも、異質の事業として特記します。

つぎに国際剣連として行ったことで、前年成功しなかった剣道の「国際競技団体連合(GAISF)への加盟」を実現するために、海外の関係団体への働きかけに努力し、結果的に本年度に入って成功しましたが、これまでと異質の努力が実ったものです。

最後に愛知万博に参加して行った「EXPO剣道フェスティバル」は多数の観客を集め、剣道としてかつて無かったPR事業を成功させました。単発の事業ですが、計画による多くの副産物、準備の間に得た知見、経験とともに、剣道界に残される貴重な財産として評価しています。

自画自賛となったかとも思えますが、振り返ると17年度は多くのことに取り組み、事業としてかなりの実績を収めたものと確信しています。今後の進展の在り方を気をつけて見ていくべき分野もいくつかありますが、ここに取り上げなかった経常的な仕事を含め、事業に努力された関係役職員、専門委員、剣連や多くの方々のご尽力、ご協力の結果であり、ここに深甚の謝意を表させて頂きます。

当初予算より僅かながら改善を見た収支決算

17年度の収支決算ですが、一般会計では3,883万円の赤字決算となりました。
ただこれは数年間にできた蓄積を、事業強化に当てた結果で、予算編成時に織り込んだもので、国の財政に見られる国債発行で賄う赤字状態とは性格が違います。予算に計上していた赤字を、節約、合理化の結果721万円減少させることができ、まずまずの成績であったと見ています。

幹部剣士への充実した講習が行われる

5月に日程を繰り上げて実施した「中堅剣士講習会」は、昭和38年に始まり、今年44回目となる長い歴史をもつ全剣連行事です。名称、開催場所など変遷を経てきましたが、ここ5年は奈良市中央武道場に定着し、今年から強化訓練の一環として実施することにしました。5月24日から全国の58名の40歳代を中心とした七段剣士が参集して開催、5月に繰り上げによる気候も幸いし熱心な講師ともども充実した5日間を終えました。

続いて東京・豊田の全日本少年剣道錬成会館で、昨秋11月と、この5月の審査で合格された剣道新八段に参集を求めての「剣道八段研修会」が、30名の新八段が参加して6月1日から4日にわたって開催されました。

この研修会も今回で15回目と歴史を重ねてきましたが、今後審査員・審判員・講習の講師などで重要な立場に立つこれらの人々に必要な知識を共有して貰うための講義・実習が主な内容です。しかし刀の操法・初歩の居合・スポーツ医学など盛り沢山で、この機会に互いの稽古と共に交流も深め、向上を怠らず、今後の剣道界を支えて頂くことをお願いし期待いたします。

生涯剣道実践者の大会開催される

毎年6月に日本武道館で、(財)全国老人福祉助成会主催の「全日本高齢者武道大会」が開かれ、各地の年配剣士が腕を競います。今年は第28回大会が6月5日に行われ630名が参加しました。武道大会として銃剣道、なぎなたの種目も行われますが主力は剣道です。64歳以下に始まり、65歳から5歳刻みに84歳までの4組と、85歳以上の寿Aがありこれが最上級です。

80歳から84歳までの寿B組で、徳島県剣連会長の遠藤一美さんが優勝の栄冠を得られました。また元常任理事の渡辺謙輔さんは二刀を振って健闘され三位になりました。その下の75歳からの特組では、全剣連事務局OBの亀澤 優さんが三位に入賞しておられます。また女子剣道のトーナメントの種目もあります。

生涯スポーツの実践が社会では叫ばれますが、剣道では日常茶飯事です。この大会にも55歳から64歳までのC組が設けられていますが、剣道界ではこの年齢層、高齢者扱いするには皆さん首を傾げることでしょう。

それにつけても、この年齢になって堂々と勝負を争える剣道の良さを痛感させられる大会です。竹刀での打突、用具の機能、各部位への有効打突を争う試合、稽古の方法など、優秀なシステムのおかげです。お互い平素感じませんが、他のスポーツと比べて見ましょう。これを築き伝えて頂いた先人と、竹刀剣術を生んだ江戸時代後期の爛熟期の日本文化に感謝、評価したいと思います。

少子化が心配される昨今、それにはそれで対応すべきですが、剣道の優れた特性を生かして年配者が頑張っている現状をさらに伸ばすことで、社会の活力は高めることができましょう。

断 片

6月10日にもう1つ高齢者の大会、「旧制高専剣道大会」が開かれました。戦前の高等学校、専門学校出身者の大会で32回目になります。集まる者も年々減少はしますが、昔の学校名で出場し、戦後の日本を築いた誇りを胸に秘めての意気盛んな大会でした。

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