2007年7月号

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今月のまど

5月はじめの大阪、京都での大会、審査などの一連の行事を終え、剣道界は大会、講習など新年度の事業に本格的に取り組む季節を迎えました。

昇任・転任・転職・定年などによる人事異動が多い一方、新規参入の人々が加わり、若やいだ空気の中、各組織の動きが活発になっています。剣道界の各組織も同様で、戦力の充実への活動が盛り上がる新緑の季節です。

全剣連も事業報告・財務決算など前年度を締めくくる時期ですが、本年は2年毎の役員改選期を迎え、人事異動が予想され、各担当と委員会は2年間の仕事の締めくくりに大わらわです。

役員の改選は6月13日の評議員会で行われ、別掲のように決まりましたが、会長以下の役付き、分担などは7月早々の理事会で決定されますので、新たな業務体制はそれ以後の発足になります。

18年度事業を顧みて

折に触れて述べましたが、昨年度は業務面でかなりの成果を挙げた年と見ています。実績の主なものを簡単に振り返ります。

まず計画に掲げた主催・共催・主管大会は順調に実施されました。

審査は公正な実施を目指して進め、合格率は剣道七段を中心に厳しい結果でしたが、安定した審査が行われています。剣連に委任されている五段以下の審査は、総数で減少気味、特に少子化の影響を受けた初段合格者は4万2千名余りで前年度より7%減少しました。かねて行っていた実態調査を終え、所見を各剣連に通知し参考に供しました。

講習会は内容の充実を目指して計画どおり実施しましたが、各剣連の計画による34の講習会に講師派遣など援助を行いました。強化訓練は「第13回世界選手権大会」を目指す選手強化を行ってきましたが、男子団体戦でアメリカに敗れ三位に終わるという遺憾な結果になりました。一方、25歳以下の若手に対する「選抜特別訓練講習会」は2年の講習を終え53名の終了者を出しましたが、今後の成長が期待出来る成果を得たものと期待されます。社会体育指導員養成事業は上級までの資格者を出し、体系が完結したので「10周年記念式典」を行い、これまで貢献された方々に謝意を表しました。

国際関係では、「国際競技団体連合」(GAISF)への国際剣連の加盟が4月の総会で承認され、剣道の名のもとに世界に認知されたことは、国際剣連加盟の多くの国を元気づけ、好感をもって受け取られました。台北で12月に開催された「第13回世界剣道選手権大会」は、44カ国・地域が参加し順調に終了させることが出来ました。

居合道、杖道部門においてもそれぞれ審査の適正化、指導資料の充実、普及の促進などに努力し、成果を挙げました。

「長期構想企画会議」で3年にわたり立案を進めてきた、「指導の心構え」は成案を得て決定することができました。

社会でのITの普及に対応、ホームページの改良、剣連への普及等、剣道界での活用を進めました。

18年度全剣連財務は概ね予定通りに推移

18年度は事業活動を支えるため、過去の蓄積の一部を充て単年度収支では4千万円の赤字予算を組みました。決算を見ますと収入面では、登録料が予算より1千1万円減少しましたが、これは審査料収入の7百万余の増加で補うこととなり、事業活動の総収入は580万円の減少にとどめました。

 一方の支出では、強化訓練費などの増加はあったものの、その他の講習会費、委員会費などの支出の引き締めを行い、さらに調査研究、資料収集、電算化事務費などの合理化、計画を繰り延べ、さらに広報・普及事業、社会体育指導員養成事業、世界大会を除く一般国際普及事業費の抑制などにより、支出を約1千7百万円削減し、単年度赤字を2千4百万円と、予算より1千5百万円縮小することが出来ました。事業実施はそれぞれ成果を挙げた反面、支出の節減には多くの方に協力頂いた結果であり、まずまずの決算と思います。

試合時間延長の流れを継続する

いくつかのトピックを取り上げます。

現行の試合・審判規則に見られるように、試合は三本勝負、試合時間5分を原則としています。そのいずれを優先するかという場合、試合時間をとるのが、戦後の慣行でした。5分で勝負が付かない場合は、引き分けか、一本勝負になり、あっさりと三本勝負を捨て去る運用が当然とされてきました。戦後体制の見直しと見得を切る気はありませんが、どの試合にもこれを適用するのは如何かいうことで、一昨年秋の鹿児島での「全日本東西対抗剣道大会」から見直しを行い、試合時間を10分にして実施しました。

その結果を踏まえ、昨年も同様に実施し、また名古屋での「全日本選抜剣道八段優勝大会」にも取り入れました。その成果は予期したとおりに、消化不良の感ある試合が減り、実力を競うふさわしい内容の試合が増えています。これについては「まど」で度々取り上げてきましたのでここでは省きますが、本年度は秋の「全日本剣道選手権大会」でも、準決勝戦以上で採用する予定です。

つぎに女子の試合時間は4分で行うことが定着していました。これは戦後始まった女子剣道のレベルの低かった時代の遺物で、今や男子と区別する必要はないと考えられ、本年の主な試合から男子と同じ五分とし、「全日本女子剣道選手権大会」も準決勝戦以後は10分とします。このような試合時間の見直しには引き続き取り組んで行きます。

世界大会男子団体試合の敗戦をどう生かすか

昨年の事業は概ね順調としてきましたが、台北での「第13回世界剣道選手権大会」男子団体戦の敗退は遺憾なことでした。敗戦をどのように受け止め、そこから汲み取ったものを通じて今後に生かしていくべきです。これに関しこのたびの事業報告に当たって執行部から次のように表明しました。

「まずは強化体制を見直し、一層の充実を図る。次に選手の健康管理を適切ならしめるために、医師・トレーニングコーチ等の参画度を高める。第3には海外の剣道事情の把握に努め、強化活動に反映させる」

各専門委員会で次期に申し送られる検討事項

2年間の任期を終えるに当たり、各専門委員会はそれぞれ活動報告をまとめ、懸案事項を次期委員会に申し送ります。

ここで内容を一々記載することはできませんが、こうして委員会活動が、中断することなく引き継がれていく、良い慣行ができていることをお知らせしておきます。

年中行事である高いレベルの剣士に対する講習会を開催

第45回と昭和38年に始められ、現在「中堅剣士講習会」の名で、奈良市中央武道場で行われている40歳代の教士七段を対象とした講習会は、5月23日より5日間、各剣連より推薦された58名の剣士が集い、充実した強化訓練が行われました。

また5月31日から4日間、「剣道八段研修会」が、日野市少年剣道錬成会館で昨年5・11月と本年5月に合格した者27名を対象にして行われ、それぞれ成果を収めました。

断   片

①高齢者剣道花盛り

剣道に参入する少年が減少気味であるのに対し、年配者の取り組みはますます盛んです。まず審査に挑戦する年配者は増加傾向にあり京都の審査会では、80歳代の剣道八段、剣道範士が生まれたことはその象徴というべく、剣道の優れた特性である生涯剣道を具現されたものです。一方6月4日には第29回を数える「全日本高齢者武道大会」が日本武道館で開催され、主力の剣道の部には、460名の剣士が参加されました。徳島県剣連の遠藤一美会長が寿B組に、また最高齢の85歳以上の寿A組には、94歳の風見 敏範士が出場され、共に第三位に入賞されました。

一方、年々メンバーは減少傾向にありますが、「旧制高専剣道大会」は第33回となり、汐留の日本通運㈱ビルの地下道場で6月9日に開催、昔の学校名で優勝を争いました。70歳代だと若手になる選手構成で、意気だけは盛んに旧交を暖めました。会場を提供され、運用のお世話頂いた日通の方々に深謝します。

②「まど」満20年を迎える

この号で「まど」は240回になりました。当時の『全剣連広報』を月刊化するに当たり専務理事として書き始め、その後誌名は『剣窓』となり現在に至りました。長く駄文を載せて貰ったこと、しばしば励まして頂いた読者の方々に感謝いたします。

文を綴り始めた6月は、私が戦後の昭和21年、南の島から和歌山県田辺の港に輸送船で帰り復員して、第二の人生を始めた記念の月で、因縁を毎年感じます。私事にわたり恐縮です。

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