新年の諸行事に追われているうちに、1月も半ばを過ぎました。今年の冬は寒さ全国的に厳しく、各地で被害が報ぜられているのは気掛かりです。
さて昨年の総選挙での政局の変化から、1月に始まる国会での予算審議や、報じられている一連の不祥事の影響で、政界の動きは活発になることでしょう。内政・外交に多くの問題を抱える現在、とかく安定感の乏しいと見られている鳩山内閣が、日本の進路の舵取りをうまくやってくれるのか大いに気になるところです。
剣道愛好者の皆さんもこの時期、全国で冬の鍛錬に取り組んでおられましょう。経済不況は続き、暗いニュースが相次いでいますが、剣道で鍛えた気力で世の前進を支えて行きたいものです。
全剣連も本年度の事業についての見通しは得て、新年度の構想を練っています。新年度も経済回復の見通しが乏しい中、剣道界全体で前進への意欲が盛り上がることも期待しております。皆で頑張って剣道の振興を図りましょう。
今年の元日の社説を読み物的に見ると、2紙が1,300年前の歴史を取り上げて、所論を展開しているのが目に付きます。『毎日』は百済救援を行った水軍が白村江で惨敗して大和政権が置かれた窮状を現在の日本の状況になぞらえます。しかもその状況に対応しつつ平城京を建設し、国際的に開かれた時代とした大和政権に、現在の外交・経済危機の時代をなぞらえ、「発信力で未来に希望を」と説いています。そして発信力を高めるには、外交の基軸である日米同盟の深化が必須であると締めくくっており、ここではあまり現政権の政策への批判はありません。最後に発信力のため文化の価値を強調していますが、剣道の文化価値もここに含めて強調してあれば、なお良かったという感を受けます。
『産経』も同じ歴史事実から愛国心を説きます。白村江の敗戦で捕虜になった大伴部博麻(おおともべのはかま)が唐に連行され、そこで知った唐の日本侵攻計画の情報を祖国に知らせるため、身を売って得た資金で、仲間を帰したという『日本書紀』の記事を取り上げ、この勇気と覚悟が国の危機を救う原動力であるとします。現在の危機のもと国民を守り、国益を実現するために、「友愛」より「国思う心」で難局を乗り越えることを鳩山首相に要望しています。
さて「未来への責任」を掲げ、「繁栄と平和と地球環境を子や孫にも」と説くのは『日経』です。ここでは本年全員還暦を迎えた、1947年から49年までに生まれた団塊世代の670万人の人々を例にとり、高度成長期に育ち、日本の繁栄を謳歌した世代の子や孫が、より幸福な人生を送るためには、産業・税金・社会保障などでの改革、政府の規制の改正や、人材養成のあり方の転換など多くの改革が必要なことを主張します。また平和維持のための日米同盟のあり方の再確認などの重要性をも説いています。
多くの国民が、景気や福祉の先行き、日米関係などに不安を胸に新年を迎え、日本の将来に期待より懸念を持っており、その主な原因は現政権がこれらへの中長期の国家戦略を欠く上に、当面の進路すら国民に明示できないことにあると酷評しているのは『読売』で、タイトルに「ニッポン漂流を回避しよう」と述べます。
外交では「日米基軸が国益に沿う」として、日米同盟が日本の安全保障の生命線であると主張し、鳩山首相がいう日米対等な関係を目指すなら、自主防衛力の抜本的強化が必要になり、財政面、周辺諸国との懸念の増大などを考えると現実的な選択であると説きます。
一般政策では、非常時は大胆な政策をとり、明日への責任を果たすことを強調しています。
『朝日』は日米同盟関係を中心に取り上げますが、米国のアジア・太平洋の戦略の立場からして、日米同盟は重要であり、この戦略に役立つ在日米軍と日本が提供している基地の存在を見れば、必ずしも「片務的」とはいえず、オバマ政権との間がきしんでいる現在、長期的観点で、同盟の大事さを論じ合う好機でもあるとします。
さて最後に取り上げる『東京』は、理念的で「支え合い社会の責任」を掲げます。今次の世界的不況を資本主義による市場原理主義の行き過ぎによる社会の行き詰まりによるものとし、また昨年の政権交替を歓迎し、子供手当てなど内閣の新政策を評価していますが、今後必要となる財源については、助け合いで行くべきと、理念的に片付けています。
以上簡単に展望してきましたが、各紙の性格も読み取れましょう。
新年度を迎えての事業計画を、各委員会・会議で議論を進めています。基本事項において、2年後の中学校体育における武道必修化の機会を生かし、剣道の普及を図るための努力を各連盟が協力して進めることを第一に掲げることに意見が纏まっています。
平成21年の初段取得者数がまとまりましたが、前年に比較して減少が目立ちます。総数で前年比6%減の38,400人を記録し、4万人の大台を割る結果になりました。47都道府県を通じて、前年より増加した剣連は1桁になり、減少傾向が大勢となりました。
4月から始まる事業年度を通じての数字では、若干の変化があろうとは思われますが、減少の流れを覆すまでには行かないと予測しております。
暮れから新年にかけての全剣連は、以前は農閑期と言われていましたが、昨今は講習事業が続き、特に強化活動が活発です。
12月17日から4日間は筑波大学の施設を拝借して、世界大会以後初めての女子強化訓練が行われ、新たに選ばれた23名の剣士が元気に参加しました。この講習には、筑波大女子選手も加わって効果を上げています。
同じ時期に選抜特別訓練講習会が、東京・夢の島の略称ブンブと呼ばれる会場に、全国から54名の講習生を集めて第2回の錬成を行いました。この講習会は俗に「骨太剣士養成」といわれる将来性ある若手剣士養成の2年計画の第3期に当たり、将来の剣道界を担う剣士の養成を期待したもので、実績を挙げている計画です。
昨年夏の世界剣道選手権大会を終えて、メンバーを入れ替えて進めている男子剣士の強化活動はすでに12月初めにスタートしており、第2回訓練は3月に行われます。
これらの強化関係訓練には、いずれも実績ある若手八段の講師を全国から委嘱しています。積極的に剣道界の後輩の養成に取り組んで頂いているのは、感謝に堪えぬ所です。
幹部教育では、やはり12月19・20日の両日、勝浦の日本武道館研修センターにおいて、審判法の講師要員講習に23名の参集を願って充実した講習を行いました。
全国から選抜された中学生を対象にした、若鷲旗剣道大会が兵庫県で毎年行われてきています。中学生を対象にした大会で、12月に行われることもあり、一般には目立たない大会ですが、すでに26年の歴史を持っています。今回姫路市の兵庫県武道館で、12月25日より行われた第27回大会を訪問する機会を得ましたが、特色ある大会であり、一端を紹介します。
まず主催は上郡剣道連盟の名で行われており、主管が兵庫県中体連となっていますが、全国の都道府県からチームが参加するこの大会に上郡町という小都市が当たっているのが特色です。
大会は4日にわたりますが、勝負による優勝校の他に、礼儀作法優秀校、試合態度優秀校の表彰もあります。
そして大きな特色としては、試合の他に講習会を兼ねた大会であることです。特に選手への講習だけでなく、全剣連へ講師派遣を要請し、引率の先生を対象にした講習が重点として日程に組み込まれていることは、特記しておくべきでしょう。
中学校の体育に武道が必修化される日を前にして、担当の先生への講習を組み込んだ大会は時宜を得た事業として注目されます。
若鷲旗大会での教員講習会風景(筆者写す)
学連OBの大会が、関東学連剣友会によって始められて年を重ね、昨年12月に第20回の記念大会が東京武道館で開催されました。
今回は65歳以上3人制の第3部まで行われ、女子とあわせ、関東地区以外からの参加を含め、合計218チームが参加する大盛会でした。生涯修業の模範を示した楽しい有意義な大会でした。
恒例の行事は1月11日の成人の日に日本武道館で行われました。
式に先立つ各武道功労者の表彰で、剣道からは個人として加賀谷 誠一全剣連副会長、団体で三菱武道会が受賞されました。
それぞれの模範演武などの行事の締めくくりは各道の武道始めの稽古がありました。剣道の少年の打ち込み稽古はひときわ元気で目立ちました。
会 長 武安 義光