例年にない猛暑に襲われた今年の夏でした。この頃は学校の休暇時期を利用した大会が多く開かれ、若人が力一杯の試合を展開します。また秋の大会のための予選も続き、例年どおりの忙しい夏です。
剣道を離れますが、8月は65年前に、日本が連合国側の発したポツダム宣言を受諾して、第二次大戦の幕を引いた敗戦の月です。その直前の8月上旬には、広島・長崎への原爆投下、またソ連の参戦、満州等への侵攻があり、多くの犠牲者を出した多数の軍人のシベリア抑留など、日本人にとっての悲しい出来事の続いた月でもあります。これらのことは今や過去の歴史的事実と感じる人が多くなっていますが、不況などと言っても今日繁栄の中にある日本人として忘れるべきでないことです。
私個人としても、ジャワ島バンドンの部隊で聞いた終戦の玉音放送は昨日のことのように思い出されます。また隣にある靖国神社に参拝したり、25年前に纏められた部隊の戦記をひもとき、当時の思いを新たにする時期でもあります。
さて敗戦による占領で抑圧された剣道が、7年後の講和条約発効で息を吹き返し、全剣連が発足して復興の道を歩んで今日に至ったのですが、2年後に60周年を迎えます。教育制度の改革による、中学校体育において武道が必修科目になる年でもあります。節目の年を記念する行事の準備に取り掛かる時期となりました。
第2回を迎えた標記大会は、7月17日(土)に日本武道館で開催され、その名に相応しい熱戦が展開され、決勝戦は前回に続いて優勝を目指した岡山県を下して、福岡県が栄冠を勝ち取りました。この大会を観ての第一印象は、レクリエーション的発想で始められた、前身の全国家庭婦人剣道大会より変身して、本格的な女子剣道の対抗試合に進化しつつある流れの中の大会であることです。
観客もかなりの人々の来場があり、これまでと面目を改めております。観戦していて最後まで目を離せない充実した試合が展開されました。先鋒・次鋒として出てくる高校・大学生剣士もそれぞれ活気ある試合を展開、昨年夏の世界剣道選手権大会で各国を圧倒した選手も、故郷を代表して出場、活躍して、大会を盛り上げてくれました。
4月の男子大会での強豪である東京都、大阪府チームがいずれも初戦で姿を消すなど、波乱ある展開が続き、男子大会では目立たない岡山県が、好選手を揃え今回も健闘したことは印象的でした。男子大会は競争が厳しいが、人材が集まりにくい女子に力を入れて上位進出を狙う剣連があっても良いかと思います。今後の女子剣道の発展の刺激なることが期待できる、第2回大会でした。
全日本都道府県対抗女子剣道優勝大会決勝より
夏の恒例の行事、日本武道館で繰り広げられる武道錬成大会の剣道大会は7月24日(土)・25日(日)の両日開催されました。何年か前に比べると少子化の影響は感じられますが、北は北海道から九州に至るまで、全国から馳せ参じた少年少女剣士のチームは2日間を通じて876、総人員4,889名とほぼ前年並、付き添い、応援の指導者、家族によって日本武道館の客席は埋め尽くされました。
例年のように16の試合場に約30チームごとに分けられ、それぞれ基本技の比較と打ち合いの勝負の総合点を競う試合が展開され、勝敗を決めて行きます。ブロックごとの優勝に相当する優秀賞が授与され、準優勝に当たるチームに優良賞、続く三位に当たる2チームには敢闘賞が授与されます。
優秀賞を受けたチームは全国各地にわたりますが、その中に「アジア少年剣士会」の名が見られたのが目に付きました。
この錬成大会の数日後に全日本少年剣道錬成大会が2日間行われます。この大会は前記の大会の小学生クラスの団体の試合に中学生団体の試合と、それぞれの個人試合も加味されるなど、全剣連が主催である先に述べた大会と少し内容の違う大会です。
基本判定を取り入れた全日本少年少女武道(剣道)錬成大会の試合風景
夏の少年剣道大会について取り上げましたが、その上の高校生の歴史ある大会が福岡市で開かれます。すでにご存知の玉竜旗剣道大会です。この大会は西日本新聞社が九州剣道連盟と共催により、すでに戦前から続けられ90年を越す歴史を持ちます。甲子園で人気を呼んでいる野球大会と同じく、戦前は中学校の大会であり、戦後高校生の大会として続けられ、後に女子高校生の部門も始められました。本年の大会は通算して第83回であり、全国各地からの参加校は、男子570校、女子377校に上り、参加選手は総数7千という大規模な大会として、福岡市のマリンメッセ福岡で7月24日(土)から6日間の大会が開かれました。
団体戦は勝ち抜き試合の方式で、大将だけは引き分けなしという特色ある試合方法をとっています。試合は剣道が盛んな九州勢が強く、女子は筑紫台高校(福岡)が菊池女子高校(熊本)を破って優勝、男子では福岡大大濠高校(福岡)が、九州学院高校(熊本)を破って栄冠を勝ち取りました。
決勝はいずれも九州勢が占めており、強さを示しました。戦績は別記事を御覧下さい。大会を観戦した福本 修二専務理事は、試合内容ももちろんだが、ともかく優勝戦に至るまで、満員の観客が熱心に観戦したことを感心しておりました。
これらの高校剣士の中から、今後の剣道界を背負う剣士がでてくることが期待されます。
毎年開催県を代えて行われる高校総合体育大会は、本年は沖縄県が担当となり、剣道大会は基地問題で関心を高めている、名護市の21世紀の森体育館で、8月3日(火)から4日間開催されました。
団体戦男子では安房高校(千葉県)が高千穂高(宮崎県)を破って優勝、個人戦も鶴岡 貴大(湯本高・福島県)を破って千葉 由樹(安房高・千葉県)が優勝、秋の国体開催地の実力を示しました。
女子の部は筑紫台高(福岡県)が、阿蘇高(熊本県)を破って優勝、個人も高橋 萌子(守谷高・茨城県)に松本 弥月(筑紫台高・福岡県)が勝ち、ダブル優勝を果たしました。今後を期待される優良剣士の成長を祈念します。
7月16日(金)に関東・甲信越の会長の出席を求めて、九段会館において地区の会長会同を開催しました。それぞれの運営のご苦心についてのご報告があり、全剣連からも最近の運営の方向を報告し、意見交換・懇談を行いました。剣連からのお話のうち、神奈川県小林 英雄会長から発表された、積極的少子化対策は、本誌で別にご報告頂きたく考えています。
新法人体制への移行の第1ステップとして、評議員選定のための委員会を設けることになっており、そのための委員構成については、すでに先般の評議員会・理事会の承認を得ていますが、その人選をまず行い、理事会に提案します。
新法人体制では、評議員が会社の株主総会同様の役割を持つことになり、権限は強化されます。これに対応して各都道府県剣連のみを加盟団体として評議員を出している体制は改め、現在関係団体として取り扱っている全剣連発足以来の学校の団体、道場関係、実業団などの代表や、中立的な学識経験者なども加える方向に改める方向です。従って評議員の数は増員されます。
一方理事会は執行機関としての色彩を強めることになり、各界代表を以て構成する形を改め、人数は縮小する方向になります。
これらの方向を織り込み、新制度への移行後の定款の立案を長期構想企画会議で進めています。
会 長 武安 義光