気候の変化は地球の回転に伴い自然の法則に従って確実に進みます。さしもの酷暑もいくつかの記録を残しましたが、彼岸のあと去り、清涼の秋が参りました。
国内は世界経済の影響もあり円高の波が押し寄せ、予断できない経済情勢です。この時期に政界では、民主党の党首を選ぶ選挙を経て菅 直人総理が再任され、内外の厳しい情勢に立ち向かうことになりました。たびたび繰り返しますが、国運の立て直しの実を挙げて貰いたいものです。
全剣連は飛び入りともいえる、北京での武術大会を無事終え、秋の本番となる各種大会や研修、審査に取り組んでいます。剣道界として実りの秋の成果をしっかりと掴みたいものです。
56回の歴史を重ねているこの大会で、剣連幹部が少年時代の記憶として残る47年振りの佐賀市での大会でした。その第9回大会は勝ち抜き試合で行われ、西軍中倉 清範士と東軍鶴海 岩夫範士の大将同士の試合で締めくくられています。
この大会全国各地から選ばれた、女子10名、男子70名の高段者による、剣道界で最も格式あるレベルの高い大会として毎年続けられて来ました。東西対抗として対抗試合の形を伝統的に取っていますが、戦後始められた時期と異なり、人材の移動・交流が活発に行われる現在、以前は目立った剣風の差が薄れました。原則2年連続して出場できない内規のもと東西の選考委員会で選出された選手は、それぞれ負けられない雰囲気のもと、伝統に恥じない迫力ある大会が展開されました。
東西の勝負としては西軍33勝、東軍21勝と、西が優勢ですが、これはこの試合が始まった時代の西の勝ち越しが持ち越されているからで、この10年は5勝、5敗と互角の展開です。また東軍に九州出身者が6名(ほかに女子に2名)もいることは、九州が人材供給基地になっていることを示しています。
一方、平成9年に始められた女子対抗試合は、西軍が優勢で、東軍が3勝しかしていません。
さて大会は前座試合の印象が濃い、女子5剣士の対抗戦で始まり、先鋒から3連勝した西軍が、2連勝となりました。
続く本戦というべき男子の試合は、3組の六段剣士の対戦から始まり、例年のようにキビキビした試合を見せてくれました。
これに続くのは30歳台後半から40歳台中頃までの15組の七段剣士の対戦で、近年の全日本選手権大会で活躍した選手が続々と登場します。伸び盛りというべき七段の対戦では好試合がいくつも見られました。一つを取り上げるならば、24将戦の、栄花 直輝(北海道)-下橋 和彦(鹿児島)の試合でしょう。知名度では栄花ですが、これに肉薄して一歩も譲らなかった下橋との17分間の角逐は、優秀試合賞を受けるにふさわしい内容でした。
七段の対戦では近年の展開、東軍が優勢ですが、本年も10-6で東軍勝ち越して後半の八段戦に持ち越されました。
続く後半の17組の八段戦は、日本の剣道の水準を示す多くの好試合が展開されましたが、近年どうも東の分が悪い傾向です。今年もじりじりと挽回され、大将中田 秀士範士と藤原 崇郎範士の立派な対戦で幕を引きましたが、結局1点差で、西軍の2連勝になりました。八将から西軍に5連勝を許すなど、勝負の上では東軍に苦言を呈したい所ですが、全般的には内容ある大会を終え、個々の選手の努力、主管の佐賀剣連のご苦労を評価します。観覧席の一角に選手家族席を設けたのは行き届いた心配りでした。来年は山形市での開催となります。
第49回標記大会は、北京での格闘技大会の日程との関係で、例年より遅れて9月26日(日)に開催されました。全国から参集した64剣士による皇后盃を目指しての戦いですが、過去4回の優勝を飾り、昨年に続く前人未踏の5回目の優勝を目指す村山 千夏(埼玉)の連勝成るかが予想で着目されていました。その村山、順調な滑り出しで勝ち進みましたが、3回戦で対戦した川越 愛(兵庫)に10分の対戦の後、メンを奪われて敗退、17回目の出場での記録達成の夢は破れました。
決勝戦は石突 小百合(東京)と、鷹見 由紀子(千葉)の対戦となり、石突が離れ際のドウを決めて初優勝を飾りました。村山を下した川越は、奮戦しましたが準決勝戦で、石突に敗れて三位になりました。
大会を通しての印象は、全般的に水準が上がり、女子剣道の充実が感じられました。一方傑出した選手が見えない印象で、今後新人の育成と、選手強化を進める必要が感じられました。
なお6回の大会を開催して頂いた、藤枝市での大会は今年限りで、来年は兵庫県に移ることになり、姫路市で開催される予定です。
全日本女子剣道選手権大会 表彰式 筆者写す
10月2日(土)から3日間 千葉県館山市で開催された剣道大会は、例年どおり地元県が奮戦、四種別の完全優勝を果たしました。国体の剣道、四種別ありますが、全都道府県が出場できる成年男子が各剣連が総力を挙げて競う種目です。ただ年齢で10歳ずつ資格が区切られているため、選手の編成が難しいのが実態です。ほかの種目とともに、勝利を目指して重点的に、準備・編成が行われる開催県が有利となる原因があります。
今回の大会最終日の後半を拝見したのですが、地元千葉県は優れた剣士を選び、練習十分、さらに地元の応援を背に、力を発揮しほとんど前半で勝負を決めて勝ち進みました。
決勝戦の相手は強豪東京都、この対戦優勝戦らしい激しい角逐が展開されました。先鋒は逆転で東京が取り、次鋒は1本1本の激戦で千葉が返しして同点、中堅の対戦を迎えました。この試合は名実共に優勝の行方を左右する決戦として、千葉の染谷 恒治に対する東京の原田 悟の対戦となりました。それぞれまた1本取って延長に入り、双方死力を尽くしての好試合を展開、9分後染谷がメンを決めて流れが千葉に傾き、このあと千葉が制して、優勝しました。決勝戦らしい充実した試合でした。
そのほかにも国体ならではの好取組がありました。4回戦の香川と神奈川の試合の副将戦。松本 政司と宮崎 正裕の対戦がありました。両実力者の虚々実々の対戦でしたが、延長に入って松本がメンを決めて宮崎を下して香川が準決勝に進み、千葉には敗れましたが、岡山を下して三位になりました。この結果もさる事ながら、宮崎が負けるという、めったに見られない場面に出会いました。
さて国体も歴史を重ねましたが、地方予選(ミニ国体)を経て、出場県を決める種目が多い点は、改めて行くべきと感じ、検討を進めます。
去る9月30日(木)に選考委員会を開催、本年度の表彰につき審議を願い、剣道功労賞4名の推薦を得ました。また剣連から推薦のあった剣道有功賞授賞者64名を内定しました。
また10月5日(火)に各剣連から推薦による少年剣道教育奨励賞候補について選考委員会を開き、282件を内定しました。以上については11月2日の理事会で決定、3日付で贈賞されます。
新法人への移行のための評議員選定委員5名は9月の理事会で決定されましたが、評議員・理事の数や構成については検討中です。これらの項目や業務方法等を含めた新定款案の立案を急いでおり、素案を11月の会議でお示しするよう準備を進めています。新定款は本年度中に内定し、官庁への認可申請を行う構想ですが、できるだけ業務は現行方式を継承する方針で、各地区での説明会を行うことも考えています。
① 敬老の日に全剣連から差し上げた細やかなお祝いに対し、多くの方からお礼状を頂戴しました。そのうちの1人、筑井 吉雄氏のものを今月号に掲載させて頂きました。私と同様の戦中派の方ばかりですが、喜んで頂いて何よりと存じます。ご健勝、ご多幸を念じます。
② 昨年、剣道功労賞を差し上げた賀来 俊彦さん(奈良県)が去る10月7日(木)に亡くなられとの報を頂きました。ご冥福を祈ります。
会 長 武安 義光