この冬ほど日本海側と太平洋側の気候が対象的であったことは、近年珍しかったのではないでしょうか。日本海側が豪雪に襲われ、いろいろの被害が出ているのに対し、太平洋側はカラカラの日が続きました。2月1日(火)に行われた恒例の全国都道府県剣連の専務理事・理事長会議には、北陸方面から出席できなかった県がいくつもありました。また南九州の霧島連山での噴火と災害が続いています。被害を受けられた方々に同情申上げ、切り抜けられることを念じます。
ところで1年前を振り返ると、大相撲ではモンゴル出身の横綱の進退問題で大揺れでした。その後、力士の賭博事件があり、刷新を求められ、役員も入れ替わって新体制での前進が期待されていました。ところがここで発覚したのが、勝負自体における八百長事件です。これは大相撲にとって広がり方によっては致命傷になりかねない痛い事件です。全力を挙げて調べが進められており、春場所の中止も発表されましたが、真剣に勝負に取り組んでいるのが大部分の力士だと思います。速やかな解決と、立ち直りを期待します。
もっとも相撲が分類上「武道」の一つとされていることはともかく、興行のシステムである大相撲を国技と称してきたのはマスコミ用語といえばそれまでですが、気になるところです。格式を供え、独特の伝統的スタイルで勝負を争うとともに、特別な養成システムを備えてきた大相撲は確かに魅力的な要素を持ち、日本独自で発達したものですが、これは一般国民が真似して普及するものとは別物で、いわば歌舞伎に似た存在です。だからこれに国技の名を独占されている状況は、日本の伝統で育てられ、国民的普及を目指す剣道の側から見ると、真面目にいう事ではないかもしれませんが、違和感が残ります。
ちょっと雑談めいた話が長くなりましたが、庭の白梅も清楚な花を咲かせました。もうすぐ来る春が待たれます。
例年のように4月の新年度の計画立案が進められています。各専門委員会での本年度の実績の評価に基づく検討から、案を持ち寄って、事業調整連絡会議で検討を進める一方、各剣連専務理事・理事長会議、剣道研究会、審議会、常任理事会などの会議を経て案を固めて行きます。以下主な内容についてお知らせします。
大筋として本年度の計画を踏襲しますが、新年度は中学校体育における武道必修化を翌年に控えて、中学校における剣道指導力増強を図るための講習に力を入れます。また全般的に剣士養成における強化活動を充実させますが、若手の選抜特別訓練講習事業(骨太剣士養成事業)は、第三期の2年の訓練が終わりますので、新規に第四期の講習生を選び、養成に取り組みます。
また来年5月の第15回世界剣道選手権大会を控え、総監督、男子・女子の監督・コーチを決定しましたが、この体制で勝利を目指しての男子・女子の選手強化に力を入れていきます。
また経営体制に関する特別の事業としては、新しい法人体制への移行を目指して案を決め、国に承認を申請して、新しい体制に移る事務を進めることにしています。
主催大会については、全日本東西対抗剣道大会が山形県上山市で、全日本女子剣道選手権大会は藤枝から姫路市に移ります。全日本居合道大会は松山市、全日本杖道大会は大阪市で行われ、その他は本年度を踏襲します。共催大会はそれぞれの予定に従って各地で行われます。また国体は山口県下関市となります。
審査会は夏に行われる地方審査の剣道七段の受審者が増加している状況に配慮し、受審者の便宜を図り、これまで東西交互に1カ所で行ってきた七段審査を、六段審査を行う場所2カ所で行うことにします。今年は福岡・金沢で行われますが、8年ぶりに沖縄(那覇市)で六段審査が行われます。
次に検討が進められている改革案について取り上げます。
毎年各都道府県を巡回して行われている国民体育大会は、日本体育協会が主催して行われ、全剣連は主管する立場にあります。
全体の選手が一定の数に厳しく抑えられており、例えば監督の数を取り入れようとして、日体協と長年にわたり折衝してきましたが、結局成功しておりません。
日体協の原則は現在の選手総数である475名の範囲内で、改革案を提案してくれれば、乗りましょうと言う事のようです。現在実行されている競技は、成年男子・成年女子・少年男子・少年女子の4種別で、何年も続いています。その欠点は3種別においてブロックで予選を行い、出場県を決めることが必要になり、このための各県の負担が大きいこと、県別の不均衡が生ずることです。結局選手数の全体枠が決まっている条件の中では全部を満足する案は作れません。そこで執行部でまとめた案は、男子・女子の2種別にし、男子5名・女子4名で全県出場とし、それぞれに高校生1名を含め、少年男子・女子は廃止するという案です。
全県が出場できるようになることは、運営の簡素化のみならず、全国のスポーツ振興を図る国体の趣旨にも合うことになります。また高校生の門が多少狭くなりますが、全剣連は昨年度改組した、男子・女子の全日本都道府県対抗剣道優勝大会にそれぞれ高校生の枠を加えたこと、また高校生の大会は全国高等学校剣道大会、全国高等学校剣道選抜大会の他に玉竜旗高校剣道大会等幾つもの大会があり、試合過剰気味とも見られる現状から、良いまとめ方と見られます。この形で改革案の実現を図りたく考えています。
この改定はこれまで中学2年であった初段の受審資格を、満年齢に改め満13歳から受審できるように切り下げようとするものです。この改定により、中学1年の途中から受審できるようになりますが、これは結果であり、これを主目的とするものではありません。
目指すところは現行の段位審査規則の体系の合理化ですが、規則制定時には考慮されなかった、世界の剣道普及の状況に対して合理的基準を示すことも必要になっています。
学年で資格を切るこれまでの基準は、分りやすい点はありますが、成長期にあるこの時期の少年の1年の体力の差をそのまま持ち込む欠点があります。その点は審査の際に考慮すればよいという論については、これは段位審査を基準により行うことを目指している、現行の審査規則を貫く考え方と反することになります。
また学級により一緒に稽古していた少年が一緒に受けられないのは困るという論がありましょうが、知育を主体とする一般教育とは同一に扱う必要はありません。生涯修業を目指す剣道の修錬の最初の段位取得は、体力的にも同じ基準でスタートし、実力によって授与されるという合理性を貫くために、今回の改定を行うものです。
世の一般法令でも、規制がある場合は年齢で行うのが一般慣行であることもご理解願いたく存じます。
また先にも触れましたが、国際的にも審査を分りやすくするという利点があり、諸外国剣連がこれを見習う効果があることも付け加えておきます。
この規則は昨年11月の評議員会に提案しましたが、説明不十分の点もあったので取下げ、次の機会に再提案をして、来年度より実施に移すことを予定します。
さる2月6日(日)、日本武道館で(財)日本武道館と日本古武道協会主催の第34回全国古武道大会が開催されました。全国各地から参集した35の古武道の演武があり、最後は千葉県の森重流砲術で締めくくられました。
観客も2階席をほぼ埋めており、それぞれ各地で修業している人が多数いることが実感されました。現代武道の源流をなす諸武道の演武は多彩で、関係者の努力は多としますが、一部迫力に欠けるものも見られたのも実感でした。
日米地位協定に基づく在日米軍オリエンテーション・プログラムによって、日本に来て間もない士官(大尉から中佐)が日本武道館に来場、竹刀を手にとっての実習並びに福本修二専務理事より剣道についての解説の後、当日行われていた大道場での合同稽古を見学しました。日本の伝統文化の一端に触れ、日本への理解を深めることができたとして引き上げられました。
福本専務(左手前)による剣道解説(日本武道館大会議室)
会 長 武安 義光