さすがに厳しかった冬も去って、春がやって来ます。大学の卒業式が繰り広げられる毎年の春ですが、現在の雇用不安の中とはいえ、人生への希望にあふれる若人の姿に九段界隈は華やぐことでしょう。
厳しい経済情勢の中、経済界では上り坂に向かう気配も出ているのですが、このところ北アフリカ・中近東の政治情勢の混乱から石油供給の見通しの悪化による影響が案ぜられます。このような国際情勢の中、国内政治は混乱の気配濃厚で失望させられます。早く立ち直って日本の進路を誤り無く進めてほしいの一語に尽きます。
しかし、とにかく4月の新年度を迎えて企業は体制を整え、事業の展開に発展の道を志向しておりましょう。剣道界としてはその中の多くの剣道人の活力を期待するものです。学校も新学年となり、剣道部門に多くの新人を迎えて、陣容整備に取り組んでおられましょう。それぞれの分野で社会の活力を生み、成功されることを祈念します。
全剣連も新年度を迎える準備が整いました。新年度の事業計画(案)・収支予算(案)は、評議員会・理事会の議を経て決まります。事業そのものは継続して進められますが、本年は新しい法人体制への移行を実行する年になります。事務的に負担の掛かる異例の年になりましょう。
法人新体制への移行を除き、事業の方向は従来の路線をさらに前進させる新年度の事業計画(案)です。
まず基本方針は、事業計画(案)の冒頭に掲げている次の事項を踏襲しています。「本連盟はわが国の伝統と文化に培われた剣道の普及・発展を図るとともに、心身の錬磨による人造りとわが国社会の健全な発展に貢献することを目指す」。そして「『剣道の理念』に基づき、社会から高く評価される活力ある剣道界の実現を目指し、国内各層への剣道普及を図る」こととしております。
事業の重点としては、まず「新法人への円滑な移行を行うため加盟団体・組織関係団体および関係機関との緊密な連絡調整、新定款案に基づく諸規則等の見直しの実施」があり、つぎに平成24年度より実施される中学校武道必修化に対応して立案した諸施策の推進、第15回世界剣道選手権大会に向けた支援ならびに選手強化が取り上げられます。
以上の事柄と、行事の主な変更点については前月号のこの欄で触れておりますが、詳細は10頁からの日程表(案)を御覧ください。
通常の行事以外の計画を記します。国際関係ですが、ここ2年休んでいた外国人夏期剣道講習会(サマーセミナー)を8月に北本市解脱会の研修センターで行います。
また来年5月の第15回世界剣道選手権大会に備えての審判講習会を、本年度末になる24年2月末に実施の予定が組まれています。
全剣連の23年度収支予算(案)は、比較的好調に推移している前年度実績を考慮しつつ、一般会計収入では1,500万円の増加を見込んでいます。収入の3分の2は審査料・登録料によって賄われている状況には変化がありません。
事業支出では、世界大会の強化訓練の増強など、重点事業を失速させないための配慮を行い、過去の蓄積から約4千万円を取り崩し、一般会計6億3千万円の予算を組んでいます。一般会計支出については引き続き節約、ひき締めの運用を継続します。
第三期の選抜特別訓練講習会(骨太剣士訓練コース)も2年の期間を終えることになりましたが、その最後の訓練が男子強化訓練講習会と合同で、東京・夢の島の東京スポーツ文化館(通称・ぶんぶ)で行われました。日本剣道界を代表する実績をもつ強化選手と、これから伸びることを期待され、地力を高めつつある若手剣士がぶつかり合う稽古や試合が、2月24日(木)から4日間火花を散らして展開されました。骨太剣士はこの期間に、今後の錬成に役立つ多くの物を掴むことができたでしょうし、強化選手は迫りくるパワーを肌で感じ得たことでしょう。ともあれ共に全国から選ばれて参集した79名の精鋭による初めてのこの訓練は、内容として充実したものであり、2つのグループのすべての剣士の実力を高めて行く上に有効な訓練だったと思われます。この両グループの訓練・指導に当たられる講師陣は豪華な顔ぶれで、それらの方のご努力が、この講習の内容を高める上に大きな役割を果たして頂いていることを記し、謝意を表するものです。
また、ここでお知らせしておかねばならないのは、医・科学委員会委員の医師の先生が、忙しい中繰合わせて交替で、訓練に立会って頂いていることです。
厳しい訓練による故障など、健康管理に役割を果たして頂いていることをお知らせしてお礼申し上げます。
男子強化訓練講習会と合同で実施した選抜特別訓練講習会
これに先立つ2月17日(木)より女子の強化訓練が、勝浦市の日本武道館研修センターで行われました。各地から選抜された19名の強豪による錬成が行われ、男子の力強さとひと味違う、整った稽古ぶりを展開、女性らしい美しさを見せてもらいました。
平成7年に始められ地道に続けられてきたこの養成事業、15年を経ました。文部省の主導で、ほかのスポーツ種目と並んで始められ、その後日本体育協会の管轄となり進められてきました。
全くの新事業として剣道の特色を生かしつつ、独自に積み上げてきたといえるこの養成事業は、他のスポーツ種目を引き離して発展してきています。これまでに初級取得者6,028名、中級2,065名、上級390名で、現在上級更新も行われている段階です。
資格の活用について物足りない点があるとはいえ、全国の指導力強化に大きな役割を果たしていると思います。これまでに努力頂いた講師などご尽力と、参加して資格を取得された方々の努力の賜物であり、剣道界として誇って良い事業成果であると痛感します。
受講資格の改定なども進められており、今後の更なる発展を計りたいものです。
元全剣連副会長を務め、ご尽力頂いた鷹尾さんが2月23日(水)に96歳で亡くなられました。
鷹尾さんは伊賀のご出身、戦前の京都・武専を出られ、戦後教職にあり三重県を舞台に活躍され、学校剣連の活動にも尽力をされました。
平成5・6年度には長老として全剣連副会長を、また三重県剣連の役職は最後まで離れず務められました。ご冥福をお祈り致します。
海外各国から要望が多かった『剣道指導要領』の英文版が、このたび完成、近く発売されます。佐藤 成明氏監修、翻訳に当たられたのは、国際委員でもある、アレキサンダー・ベネット氏です。ご尽力を謝し、海外の剣道普及に役立つことを期待します。
この様な資料整備が進んだこともあり、海外から要望が高まっている、剣道教士取得のための英文による学科試験の実施が検討されています。
春なお浅き甲州に、3月5日(土)に事務局剣士に役員も加わって参上し、山梨県剣連の方々と稽古を願い、交流を図りました。
数年間途絶えていたこの種の行事を取り上げたものですが、職員の能力向上、関係剣道グループとの交流を深めるために復活をしました。
山梨剣連の方にご厄介を掛けましたが、楽しい半日を過ごすことができました。
山梨県剣道連盟の皆さんと全剣連事務局の合同稽古
※今回の東北関東大震災で罹災された皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。編集日程の都合上、末尾でのご挨拶となりましたこと、あしからずご了承ください。
会 長 武安 義光