京都を中心とした行事を終えて、緑に満ちた季節を迎え、剣道界も新年度の行事を本格的に展開する時期に入りました。業務面では前年度の決算など締めくくりを行うほか、人事異動も相次ぎます。各剣連は事務的にも忙しく過ごしておられましょう。公益法人の制度改革の期限も近付いており、全剣連は6月6日(月)の評議員会・理事会において、一般財団法人を目指す定款を決定し、内閣府に申請する段階に進みました。今般の制度改革への対応に当たり、全剣連はこの機会を活用して基本的に規則の見直しに取り組み、時代の流れに対応した新しい装いに衣替えすることを目指しました。
このことは役員・専門委員の中に専門家がおられたので可能になったのですが、それらの方が長期構想企画会議において大変な熱意を持って取り組まれ、新しい定款などの成案を得ることができました。歴史的にも意義のある改革になったと存じます。
さて話題を変えます。3月に起こった大災害からすでに3カ月を経ました。各地で復興の動きが活発になっていますが、被災した方々の物心両面の痛手はなお癒されることは無いでしょう。もう一つの大災害、原子力発電所の事故はなお回復の目途が立っていないのは残念です。沈静化の方策が軌道に乗ることを願うばかりです。
全剣連は連休前に、先にお知らせした見舞金を岩手・宮城・福島の3県の剣連にお届けしたほか、決められた方策を進めています。また別に国内外の剣道愛好者から全剣連に寄せられた義援金は、現在2千万円に達していますが、被害状況の全貌を把握して、至急配分を決めお届け致します。
全剣連は去る6月6日、九段のホテル・グランドパレスで開かれた評議員会・理事会において、前年度事業報告、決算報告などの例年の議事を決定の後、懸案の「一般財団法人全日本剣道連盟定款」ならびに一部の関係規則を決定しました。以下その内容に触れます。
現在の事業が寄付行為に基づいて行われているのに対し、今後は定款により律せられます。新定款には現行の重要な事柄を盛り込み、さらに規則体系を合理的、適正なものに充実させております。
まず財団の目的には「剣道の理念」の実践などを掲げました。また団体および個人の会員制度をとることを明記し、各都道府県において剣道を代表する地方代表団体の存在を記して、現行の体制を継続する形を取っています。
評議員会と理事会の分担に一部の変更が加えられるほか、今後役割が強化される評議員の定数を増やし、学識経験者などを加えることにしております。
さて規則として定款のほか、「会員規則」「評議員会規則」の規則類、一般法人移行に伴う「公益目的支出計画等」も会議の決定を得て、内閣府への申請を行います。
顧みれば敗戦・占領の時期を経て独立を回復した昭和27年の秋、戦前派の熱心な剣道人が結集し設立された都道府県剣連が集い全剣連を発足させ、敗戦と占領によって大打撃を受けた剣道の復興、再生に努力されました。その成果が実り、剣道界の基盤も固まって20年を経た昭和47年に、当初の枠組みのもと財団法人としての再発足となりました。
その後歳月を重ねて40年、国の公益法人の制度改革が行われるのに当たり、全剣連はとりあえず一般財団法人の道を選び、新たな前進の道を歩もうとすることになったわけです。
この度の変革は事業の具体面で急激な変化を伴うものではなく、運営は従来の方針を引き継いで進められます。しかし剣道に熱心な人だけで進めてきた戦後の体制から、剣道が日本の伝統に築かれた資産であるとの認識の下、国民的基盤を重視して全剣連が今後の運営を行うことを可能にする改定と考えます。この度の変革は事業の具体面で急激な変化を伴うものではなく、運営は従来の方針を引き継いで進められます。しかし剣道に熱心な人だけで進めてきた戦後の体制から、剣道が日本の伝統に築かれた資産であるとの認識の下、国民的基盤を重視して全剣連が今後の運営を行うことを可能にする改定と考えます。
同じ会議で前年度事業報告が承認されました。前記の新法人への移行の作業の他に、いくつもの見落とせない成果が上がっています。以下順不同で取り上げます。
以上主要な事項を拾いましたが、その他経常的業務も概ね順調に進められました。各担当・関係剣連・事務局に努力頂いたお陰で、表題で取り上げた充実した展開を見た1年であったといえましょう。決算関係は、審査・登録関係の収入が予算を上回り、他の支出増加を補う順調な結果でした。詳細は8~9頁の記事でご承知ください。
去る5月28日(土)・29日(日)の両日、来年5月開催される第15回世界剣道選手権大会の開催地イタリア北部ミラノ市北のノヴァラ市で理事会を開催し、次回大会の要領、会場の確認が行われました。新規入会は北欧のリトアニア、ラトビアと南米のエクアドルの3国で合計53カ国・組織になります。
2015年の第16回大会の開催地は、久方振りの東京のほか韓国仁川市が立候補しました。日本は日本武道館での開催を目指します。来年5月の国際剣道連盟総会で決定されます。
国際剣道連盟理事会(正面中央が筆者)
7月で任期満了になる現行寄付行為に基づく理事・評議員が改選されました。新役員は7月12日(火)に予定されている新理事会で、会長以下の選任を行いますので、それまでは現在の役員が業務を処理します。そして新法人体制に移るときは、新規のメンバーということになりますが、今回は制度の切り替わり時期でもあり、できるだけ現行の体制で移行する予定です。また役員以外の顧問・参与・審議員なども同日の会議で委嘱される予定です。
この時期は講習会のシーズン、特に来年の世界大会を控えた男女の強化訓練は次々と展開されています。方式は変遷していますが第49回を迎えた中堅剣士講習会は、奈良市中央武道館に、全国から59名の七段剣士を集めて修錬を行いました。
また昨秋と今年5月合格の新八段研修会は6月2日(木)より4日間、例年どおり東京・日野市の道場連盟錬成会館で、30名を集め充実した日程をこなしました。
剣道界からの人材移転ですが、全剣連で蓄積された運営の妙を発揮されることと期待します。
宿泊したのはブッソーラという日本人には気になる名前のホテルで、会議もここで行われました。来年の大会に行かれる方もおられましょうが、環境も良い落ち着いた都市です。
会 長 武安 義光