2011年11月号

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もくじ

  • 剣筆 花巻夏期合宿/作道 正夫
  • 全剣連平成23年度相談役会・第1回審議会・9月(臨時)理事会
  • まど・292回/武安 義光
  • 第57回全日本東西対抗剣道大会/奥島 快男・鴨志田 恵一
  • 第50回全日本女子剣道選手権大会/忍足 功
  • 第59回全日本剣道選手権大会組み合わせ/田村 徹
  • 第66回国民体育大会剣道大会/有馬 光男
  • 第54回全日本実業団剣道大会
  • 剣道七・六段(石川・沖縄・福岡)審査会分析データ
  • 中学校武道(剣道)に関する調査結果報告 第7回/有田 祐二
  • 北海道・東北圏剣連会長会同
  • 90歳となる剣道・居合道・杖道高段位(七段以上)の方々をお祝い
  • 敬老祝いのお礼状から/福島 一夫
  • 第38回居合道中央講習会/山崎 誉
  • 全剣連社会体育指導員(第83回初級、第48回初級更新、第26回中級更新)
  • 平成23年度全剣連後援剣道講習会・平成23年度講師派遣事業報告(居合道)
  • 国際コラム・108回
  • 第10回ヨーロッパ杖道大会および講習会・審査会/石堂 倭文
  • 全剣連24年度版・剣道カレンダー販売のお知らせ

今月のまど

台風に襲われた爪痕の復旧が急がれる中、秋本番の好季節を迎え、各地からの紅葉の便りも寄せられるこの頃です。

本来なら1年の中で最も楽しむ要素に満ち満ちた季節の筈ですが、今年は災害からの復旧、欧米経済の不調からの影響が大きく、不透明な国内経済の見通し、さらには相変わらず不安定、低調な政界の状態、明るい日本の前途を描けない状況が続きます。

厳しい情勢の中、日本の沈没を免れるため国運の立て直しを図りたいもので、この中お互い剣道人もそれぞれの立場での高揚が望まれる時にあるといえましょう。

さて剣道界、大事な大会・講習会・審査会が続きます。決まり文句の繰り返しになりますが、お互い実りの秋の成果をしっかりと掴みましょう。

全日本東西対抗剣道大会 初めて山形県で開催

57回の歴史を重ねるこの大会、山形県での開催は初めてとなり、9月18日(日)に山形市から南の温泉地で名高い上山市の体育文化センターへ、全国から選ばれた剣豪が集いました。

この大会伝統的に日本を東西に別けての対抗試合の形を取って来ていますが、戦前に行われた形式を引き継いで戦後始められた時期と異なり、人材の移動・交流が広く行われる現在、以前は目立った剣風の差も薄れました。2年連続して出場できない内規のもと東西の選考委員会で選出され選手は、剣士の面目を懸けて負けられない雰囲気の中で試合が進められました。

勝負としては通算すれば西が優勢ですが、この10年はほぼ互角の展開です。しかし東軍に西日本出身者が11名もいる反面、西軍には東日本出身者が見られないという状況は、東西というより所属剣連の東西対抗の色が濃くなっているというべきでしょう。

さて大会は、5剣士の女子対抗戦で始まりますが、大将同士の勝負となり、西軍石田真理子(大阪)が、東軍大塚真由美(神奈川)を下して西軍に3連勝をもたらしました。

続く男子の試合は、3名の六段剣士の対戦から始まり、これに続く七段の試合は、毎回若手同士の内容ある試合が繰り広げられますが、この中で満場の注目を受けたのは、19将戦の石田洋二(大阪)―宮崎史裕(神奈川)の試合でした。過去に実績を持つ両選手による好試合が展開されましたが、大会を通じて最長の14分を越える延長試合の末、宮崎の面で勝負が決まりました。この試合優秀試合賞の表彰を受けましたが、相応しい内容でした。

この辺りまで試合展開は例年通り東が西を押さえ、七段の試合を終えて、4ポイントの差をつけて前半を終え、今年は東が勝つと見られた展開でした。

ところが八段戦が始まると、東軍は14将から西軍の8連勝という展開で圧倒され、4将戦で西軍の4連勝が決まりました。なんとも戦評もできない展開でしたが、範士の部の立派な試合で救われた印象でした。

この大会、試合時間を10分として行っていますが、35試合中一本で勝ち負けが決まったのは、10試合でその他は三本の勝負であり、試合時間に制限されること少なく、思う存分の勝負が展開されたという意味で、10分の試合時間の制度は効果を上げていると見ます。

運営などにお骨折り頂いた山形県剣連、ほかのご後援頂いた諸機関にお礼申し上げます

会場を姫路市に移しての全日本女子剣道選手権大会

第50回を数える標記大会は、9月25日(日)に静岡県藤枝市から、7年振りに兵庫県姫路市に移して開催されました。過去4回の優勝を飾り、昨年3回戦で敗れた村山千夏(埼玉)が、大奮戦で決勝戦に進み、昨年優勝の石突から姓が変わった正代小百合(東京)を延長の末、長身からの面を決めて5回目の優勝を遂げました。

長身を利して守りを固め、機を見ての面、小手を決める。決して見栄えのする剣風ではないが、難攻不落の感の守りと、機会を捉えての攻撃により、ついに前人未到の偉業を達成したことは、絶賛に値しましょう。願わくば村山を破る若手が出て欲しいものです。今回の大会、内容的には少しく物足りなさを感じさせられました。感想としては前年と同じく、新人の育成と、選手強化を進めることが必要です。新しい会場となった兵庫県武道館での大会の運営にご尽力頂いた兵庫県剣道連盟の皆さんに謝意を表します。

兵庫県立武道館で行われた第50回全日本女子選手権大会
兵庫県立武道館で行われた第50回全日本女子選手権大会

山口国体剣道大会で地元山口県が優勝を飾る

本年の国体剣道大会は、10月2日(日)から3日間下関市で開催され、例年通り長年の強化活動の成果と地元の声援を背にして、山口県が4種目のうち3種目に優勝し、総合優勝を果たしました。

都合で1日目しか拝見できませんでしたが、各県を代表する剣士は、新装成った下関武道館で力一杯の活躍を展開しました。また毎度のことではありますが、地元の運営に当たられる係員の熱心丁寧な活動に好感が持つことが出来ました。

第66回国民体育大会剣道大会で挨拶をする筆者
第66回国民体育大会剣道大会で挨拶をする筆者

全剣連秋の表彰者が内定

去る9月29日(木)に選考委員会を開催、本年度の表彰につき審議を願い、剣道功労賞として兵庫県宮崎昭氏の推薦を得ました。

剣連から推薦のあった剣道有功賞授賞者については、会長など幹部として活躍されている方は、ご遠慮願うことになり、62名を内定しました。また9月30日(金)には各剣連から推薦のあった少年剣道教育奨励賞候補について選考委員会を開き、275件を内定しました。

以上の方々については11月2日(水)の理事会において決定、11月3日(祝)の文化の日付けで贈賞されます。

続日本剣道形の成立を振り返る

前号に述べましたように、当時の剣道界には多くの流派が存在し乱立の状態でした。それぞれが形を持ち修行の基本としていた状況の中、新しい時代に剣道の全国的発展を遂げるため、各流派を超越した形をつくることが必要との認識のもと、大日本武徳会が委員会を設け、明治39年8月、天地人の三本よりなる新しい形をまとめ、同年12月末に発表しました。ところがその普及を図ろうとした所、これが全国の各流派の賛同を得られず、いわば一流派の形を作ったような状態にとどまりました。

ところが武徳会は、中学校の体育に剣道・柔道が必修科目となる状況のもと、教育の基本となる統一された剣道形の作成が必要となり、それまでの実績を失敗と認めた形で、全国的に受け入れられる新たな形の作成に取り組むことになりました。このため大浦兼武会長自ら委員長になり、教育界に力を持っていた東京高等師範学校嘉納治五郎校長を副委員長として委員会を作り発足させることになりました。

委員会の前に、主査による作業が進められ、折しも明治天皇崩御の事があり、遅れて大正元年10月15日に委員会が開催されるに至りました。開会の際の会長挨拶の要旨を掲げます。

 「思うに形そのものは、人の工夫によって作るものだから、万人少しの異論のない完全無欠のものを作るのは不可能である。よってこの道の専門家の多数が認めて可とするものを以て、比較的完全なものと是認するしかない。全国の大家から代表に選ばれた皆さんが共同研究をして制定されたものが、全国で統一して行い得るものになると信ずる。この会合において胸襟を開いて意見を交換し、なお一致しない点は、多数決で裁決し、決まったものは委員会の意思としたい。成立した形を実地に行い、改正を要するところ発見した場合は、本会は再びこのような委員会を開くことにしたい。それまでは、ここで決められた形を尊重し、勝手に取捨選択することの無いようにして欲しい。斯道発展を図るのは、委員の皆さんの天職であることを思い、あくまで協同一致の精神でご尽力頂きたい」

武徳会としては、全国的に行い得る剣道形を纏めることができなければ、いわば鼎の軽重を問われる状況に置かれていたのでしょう。背水の陣で立ち向かう空気が感じられます。以下次号。

断 片

敬老の日に全剣連から差し上げた細やかなお祝いに対して、多くの方からお礼状を頂戴しました。そのうちの1人福島 一夫氏のものを今月号に掲載させて頂きました。私と同様の戦中派の方ですが、喜んで頂いて何よりと存じます。ご健勝、ご多幸を念じます。

会 長 武安 義光

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