2012年4月号

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もくじ

  • 剣筆 将棋と酒とサムライと/内藤 國雄
  • 武道振興大会の開催
  • まど・297回/武安 義光
  • 平成24年度全剣連事業計画
  • 平成23年度第2回審議会
  • 平成24年度全剣連行事日程表
  • 平成23年度剣道研究会
  • 第15回世界剣道選手権大会日本選手代表団決定
  • 第15回世界剣道選手権大会審判講習会の実施/佐藤 征夫
  • 全剣連設立60周年記念
    第10回全日本選抜剣道八段優勝大会組み合わせ/真砂 威
  • 第四期第3回剣道選抜特別訓練講習会
  • 社会体育(第15回上級・第5回上級更新)講習会
  • 剣道実技審査(受審者・合格者数)地区別一覧の掲載について/真砂 威
  • 剣道少年の体験・実践発表会
  • FIKアメリカゾーン剣道審判講習会/香田 郡秀
  • 随筆 剣道と能と私のこと/小檜山 浩二
  • 東日本大震災に対する義援金募金活動のお礼と最終報告
  • 国際関係コラム・113回

今月のまど

例年なら春の調べが聞こえてくる時期ですが、今年は兆しが遅れています。しかし地球の回転には狂いがなく、暦は新年度の4月に向かって進み、学校では入学 試験・卒業の諸行事が相次いでおり、官庁・会社も本年度の業務の締め括りや、人事異動・新人を迎える準備に忙しく動いておられましょう。

1年前を振り返ります。『剣窓』4月号を取り出すと、北の丸の満開の桜が表紙を飾っています。思えばその印刷中に、忌まわしい大地震と津波が東日本太平洋岸を襲いました。津波の被害を受けた原子力発電所の大事故が加わって、日本社会と多くの日本人の運命を暗転させることになりました。

直接被災された方へのお見舞いは、何度繰り返しても済むことではありませんが、日本経済と日本人の生活も大きなダメージを受けました。同じ時期の海外経済 の不調も加わり、未曾有の円高が輸出産業を苦しめる事になりました。発電用燃料輸入の急増も加わって、貿易収支が何十年振りに赤字に転換しております。幸い昔と異なり、海外への投資などによる貿易外の収入で、当面赤字を補う力を備えている日本経済ですが、国力の衰退は明らかで、国債総額が気の遠くなる程の額に上っている現状を思えば、止まる所を知らない借金漬けの国の財政運用は、長期的にみて危険を孕んでいる事は言うまでもありません。

現在の国勢の歩みは、政治的不安定の現状をも加味して、大きな国難に遭遇している事が確かで、この事をまず認識しての国民の奮起が必要であり、お互い剣道人もそれぞれの場で最善を尽くして行きたいものです。これから迎える新しい年度は、前号でも述べたように、第二次大戦の敗戦から、主権を回復し剣道を再興することになった昭和27年から60周年を迎えます。

また公益法人の制度改革による、財団法人の改革から、新しい一般財団法人に性格が変わる年でもあります。何よりも期待されていた義務教育の中学校の体育に、武道が必修科目として取り上げられる年でもあり、多くの新しい動きの始まる年にもなります。

また公益法人の制度改革による、財団法人の改革から、新しい一般財団法人に性格が変わる年でもあります。何よりも期待されていた義務教育の中学校の体育に、武道が必修科目として取り上げられる年でもあり、多くの新しい動きの始まる年にもなります。

これまで何度も遭遇した国難を切り抜けて発展の道を歩んできた歴史を自信として、新しい年度を前にして、相撲以外では死語になっていますが、お互い緊褌一番の心構えで頑張りましょう。

24年度事業計画が決定

年度の事業計画策定の手順などについては先月号で説明しました。その来年度事業計画は、収支予算と共に3月13日(火)に開催された評議員会・理事会で審議され、決定されました。事業計画の全文は別に掲載しておりますので御覧頂きますが、いかにも平板かつ抽象的内容と感じられるかと思います。これは単年度 の計画としてまとめるため止むを得ないこともご承知願います。

現在の全剣連事業は小さいながらもデパートに似ています。それぞれの項目には沿革があり、歴史もあります。定常的に進むもの、これから力を注ぐものなど、実行に当たっての濃淡があり、重点もあります。これについて例示して説明を加えます。

試合・審判についての事業の沿革

試合・審判を実例として取り上げます。事業計画の重点方策には「試合内容の充実と活性化を図る」と掲げています。個別の分野として取り上げる重点事項に は、「規則とその細則、運営要領の適正な運用を図る」と記して4項目を掲げますが、「(1)審判として適正な試合運営能力を養い、指導力の向上を図るた め、実践的研修を行う」と記しています。このことは基本的な方針としてどなたも納得される所でしょうが、その展開の沿革について述べます。

60年前に剣道が再発足して、まず取り上げられたのは、試合であり大会でした。このため翌28年3月に新しい『試合・審判規則』を制定しました。これは 「純然たる体育・スポーツとして再出発する」という新しい剣道の在り方に基づいたもので、現行の基本になりました。その後、剣道振興の推移に応じて多くの 補充・修正が加えられましたが、昭和50年に制定された『剣道の理念』の趣旨を実現すべく、行き過ぎた競技化の傾向を是正しようと改正を行い、昭和54年4月に施行しました。

この規則によって試合の運営を重ねてきましたが、平成に入り全剣連は基本的精神も盛り込み、「規則の体系化、簡素化、国際的にも理解できる規則体系の完成」を目指して、本格的改定に取組み、平成7年7月に改定が実現しました。

この規則によって戦後の規則は面目を一新し、改定は実質的に完結したといえます。全剣連はこの規則の普及を通じて、現場における試合内容の向上のための講習の充実を進めました。しかし効果を全国的に上げるのは、なかなか困難であることが分かって来ました。

そこで普及のための抜本的改善策の検討を行いましたが、結果迂遠なようでもまず講習の中心となる人材の養成・レベルアップから始めることとしました。それらの人を講師として活用し、さらに地方に派遣することを通じて講習の充実、人材の育成を図るという、段階的、また連鎖的発展を狙いました。

実はこの方策は終戦直後の破綻に瀕していた日本経済の再建のため取られた経済政策―傾斜生産方式―にヒントを得たものです。

この方策には各講師要員も応えて頂きました。さらに講習事業の軸足のウエイトを地方に移し、全剣連が各剣連の講習会に講師を派遣する事により、剣連を援助 する方策を取りました。講習の科目は剣連の希望に応じ、当初はほとんどが審判法でした。その後、一巡して指導法が増えましたが、これは審判法の講習が浸透したことによるものと見ています。

以上ながながと述べましたが、この方策は審判技術の向上に効果を収め、また収めつつあるものと全剣連は見ています。審判技術の向上は現在も、全剣連事業の重点ではありますが、軌道に乗ったと見られるこの方策を運用していくため、全剣連として大きなエネルギーを使う段階は過ぎました。事業計画の重点の在り方 の推移の例として記しました。

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講師要員(試合・審判)研修会の様子

24年度事業の重点に位置付けられる教育と講習

前述しました「試合・審判」関係事業は、全剣連事業の重点として軌道に乗った段階に入ったと述べました。同じ意味で「称号・段位」関係業務も、剣道人の励 みをもたらす重要な制度であり、平成12年に現在の規則体系ができてから、制度の適切な運営、審査業務の公正・合理的な運営に、全剣連は再重点として取り 組んで来ています。業務として向上の跡も見られ、まずは順調に進み軌道に乗っていると見ております。

このような状況から、全剣連の事業として最も重視して努力を要する「教育・講習」の分野に力を注ぐべき段階に入ったものと見て、数年前から幾つもの分野で取り組んできております。

すでに全剣連としては、審判法の場合と同様の認識のもと、指導法講師要員の研修を立ち上げています。すでに8回実行し、成果も上がりつつあるものと見ています。先に述べました地方剣連に対する講習会の助成分野でも、指導法に対する要望が急増しており、各剣連の関心の高まりを示しています。

先月号で紹介しました「社会体育指導員講習」においても平成7年に開始してからの実績が積み上げられており、さらなる進展を期待しております。

 「教育・指導」の分野は幅広いものがありますが、当面は新年度から実施に入る、中学校体育に正課として取り入れられる武道教育への対応です。この中で、 剣道が正しく取り上げられ、教育として成果を収めることを目指し、剣道界としてそのため最大の努力をすることが、来年度の課題になります。

24年度収支予算固まる

来年度事業活動収支は、審査・登録事業収入が全体の7割を占める傾向は前年と同様ですが、本年度より強含みの5億1百万円を見込み、その他の収入も実績を加味して微増で予算を組みました。支出面では第15回世界剣道選手権大会、60周年記念事業費などを計上、一部これまでの蓄積から補填して合計7億7千万 円の予算を組んでおります。運営は節減に留意しつつ、必要な事業を推進します。

断 片

関西で社会体育指導員上級養成講習盛会

東西で行われる社会体育上級認定講習会のうち、3月9日(金)から3日間大津市の琵琶湖湖畔にある滋賀県立武道館で行われた第16回講習会に38名の方が受講されました。これまで上級の認定を受けた446名の方に、これらの方が加わる事になります。

この講習会を以て本年度の事業は予定通り終了、指導力向上に役立つ実績を収めたものと認識しております。

会 長 武安 義光

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