今年の「まど」は気候の動きばかり気にしていますが、4月に入ると、九段界隈の桜も見事に花開きました。昨年は東日本大震災の直後という事で、花見も自粛の空気でしたが、今年は千鳥ヶ淵も賑わい、人出は平年に戻りました。各地の花便りも報じられ、全国的に良い花見をされた方が多かったようです。
震災からの復興は思うに任せず、国際経済の動き、政治の混迷など、暗い流れが目立つ中、各地で蘇りつつある、「頑張ろう」の声に国民の意気が心強く感じさせられます。剣道界も、再発足60周年を迎えたこの年に元気を奮い起こし、皆さんと共に、日本の国勢進展の基本になる頑張りの精神を発揮する年にしたいものです。
さて新年度、陽春の初めての大会は、4月15日(日)に名古屋での全日本選抜剣道八段優勝大会があり、月末には戦後の剣道復興の口火を切り、最も早く第60回を呼称する全日本都道府県対抗剣道優勝大会が、大阪市で開催されます。そして5月を迎えると、全国の剣道人が集う、伝統ある全日本剣道演武大会が、大型審査会と共に古都・京都で展開されます。
新年度の全剣連事業は、東京・兵庫の東西に区分して開かれる剣道中央講習会から始まります。昭和41年に第1回が開かれ、開催の規模・日程などは変遷を経ていますが、回を重ねて第47回を迎える全剣連の行う最も歴史ある講習会です。
この講習会、全国一本で行ってきた時期が長いのですが、講習会の運営と、各組織から招致する人数を考慮して、現在の規模・方式に落ち着いています。すなわち都道府県剣連からは最低2名、最高4名までの出席と、これに組織団体として区分している、学連・道場連盟などから出席者及び若干の余裕を活用して、剣連らの出席希望にも応えて、運用してきています。
本年度は、東日本は神宮外苑にある国立霞ヶ丘競技場体育館、西日本は神戸市中央体育館を会場として、いずれも3月31日(土)・4月1日(日)の2日にわたって開催されました。講習期間については、長年にわたり3日間を当ててきましたが、講習内容の整備・受講者のレベル向上・交通機関の整備・能率化などを考慮して、平成4年より2日間に短縮し、効率化を図っています。
講師については、東西の講習内容の相違を懸念して、同一の講師で行った時期がありましたが、講師要員研修会も行われるなど、講習内容の進化・統一化などの条件整備に伴い、別々の講師によるようになっています。
本年の講習会、東日本66名、西日本55名の受講者によって行われました。受講者に対する出席交通費は全剣連が負担します。 受講者は各連盟で指導陣の中核を為す顔ぶれであることは、剣道八段受有者が多いことで分かります。その数は東日本25名、西日本23名と合計48名の八段受有者が参加しています。
講習科目は、剣道指導法・日本剣道形・審判法の3科目が主体になりますが、近年は「木刀による剣道基本技稽古法」が加わり、さらに救急法の講習も行われます。以上の科目は全剣連編集の『剣道講習会資料』によって進められます(頒布しております)。
年度初めの歴史ある最重要講習会について、少しく説明を加えましたが、講習の成果、今後改良を要する点などについては、各専門委員会に持ち帰って検討し、さらに剣道研究会にも付議して改善を図っています。
本年度の講習会は講師・受講者が熱心に取り組み成果を収めたものと感ぜられました。講習会において、いつも受講者に要望することは「この講習会において耳新しいことを聞いて、各地に帰って伝える、いわゆる伝達講習を行うことではありません」。この機会に各人の指導力に、識見と厚みを加え、自身の指導力を高めて、各地での講習に当たって頂くことが目標です。従前は伝達講習として取次の役割が期待されていた時期がありましたが、この言葉は死語としたいものです。
東日本剣道中央講習会風景(筆者写す)
西日本剣道中央講習会風景(筆者写す)
明治に始まった剣道演武大会、戦中・戦後の中断期を経て、今年は第108回を数えます。新緑薫る古都の武徳殿に、全国から馳せ参ずる剣道家の数は3,561名、大震災に襲われた前回を、150名程上回りました。毎年のことですが、4日間のこの大会には、剣道・居合道・杖道のほか薙刀・古武道の形の演武も行います。
1年の精進の成果を示し合うとともに、全国の剣友の親睦を深める演武大会です。
演武大会前に行われる昇段審査に比較して目立ちませんが、称号審査の締めくくりもこの機会に行われます。まず教士・錬士の受審者が昨年春に比べて多いのが目立ちます。三道併せて錬士が324名から427名に、去る4月7日(土)に全国各地で筆記試験を行った教士試験の受審者が、173名から208名へといずれも増加傾向にあります。
また範士は各剣連からの推薦者について書類選考が選考委員会で行われます。剣道85名、居合道15名、杖道3名とほぼ前年と同数の推薦が全国からありました。例年通り狭き門になることが予想されます。
春の大型審査会に挑戦する剣士の勢いは衰えません。とくに年2回行われる剣道八段審査会の、5月1日(火)・2日(水)の審査会への申込者数は、前年を140名上回る1,743名に及びました。八段受審者の増加は審査実施面にも影響し、一昨年秋の審査会では、それまでの会場であった東京武道館から、剣道七・六段審査会と日程を変更し、日本武道館で実施することにしましたが、今後の推移を注目しています。ともかく七段取得後10年を経て、八段受審資格を得ておられる方々の、熱意は評価しますが、実施側では多くの問題を抱えることもご理解頂きたいと思います。
剣道七・六段審査については、名古屋と別けて行う体制が良く機能しているように見られます。受審申込者の数も概ね前年水準でとくに問題はありません。
しかし京都・名古屋と併せて、六段2,500名、七段2,200名の大型審査が行われます。京都剣連・愛知剣連のご協力と、多くの審査員のご尽力を得て、受審の方々の熱意にも応えることができるよう、主催の全剣連は全力を挙げて取り組みます。
2月号で前年歴年の初段取得者の増加を取り上げました。今回昨年度の数が各段にわたり纏まりましたので、要点をお知らせします。初段登録者は4年ぶりに4万人台を回復して、46,505名と前年比8,000名の大幅増加になり、8年前の数に並びました。
この増加は明るいニュースですが、ご承知のように、昨年から初段受審資格を、中学2年から、満13歳に改めたことによる影響が大きいことは明らかで、この勢いが続くかどうか、必ずしも期待できません。しかし本年度は中学校体育に武道の時間が正課として取り入れられること、また初段取得者の増加が、各剣連の活動に活力を与えることなどによる社会的条件が好転することも考慮して、剣道人口が増加の方向に進むことを期待したいと思います。
なおこの機会に集計された段位取得者の総計は1,774,000名となっています。参考までに付加えますと六段在籍19,200名、七段16,700名、八段860名です。また称号保持者について見ますと錬士24,700名、教士22,000名、範士292名となっています。以上は剣道に居合道・杖道を加えた数字です。
①昨年は自粛した恒例の全剣連事務局の花見、今年は復活できて、靖国神社境内の大村益次郎銅像脇の例年の場所を確保、ほぼ咲きそろった花を愛でました。折しもほぼ満月に近い13夜の月も、木の間に隠れ見えて、素晴らしい花見の宴を一同で楽しみ、新年度の活躍の決意を固めました。
②今年は久方振りの新人が事務局に加わりました。宮城県出身の高橋 嶺君です。東北学院大学法学部卒で剣道部出身の剣道三段でもあります。事業部門に配属されますが、今後の成長を期待し、ご紹介します。
会 長 武安 義光