2102年11月号

年間購読のお申し込み

もくじ

  • 剣筆 生涯剣道を目指して/林 信雄
  • 全剣連設立60周年記念
     第58回全日本東西対抗剣道大会/岩立 三郎・鴨志田 恵一
  • まど・304回/武安 義光
  • 全剣連設立60周年記念
     第60回全日本剣道選手権大会組み合わせ/石田 利也
  • 第67回国民体育大会剣道大会/林 邦夫
  • 第55回全日本実業団剣道大会
  • 剣道七・六段(長野・岡山)審査会分析データ
  • 第39回居合道中央講習会/河口 俊彦
  • 平成24年度第2回男子強化訓練講習会
  • 平成24年度全剣連後援剣道講習会・平成24年度全国剣道指導者研修会
  • 第11回ヨーロッパ杖道大会および講習会・審査会/荒井 洋
  • 随筆 刑務官と武道/大塚 尚弘
  • 九州圏剣連会長会同
  • 90歳となる剣道・居合道・杖道高段位(七段以上)の方々をお祝い
  • 敬老祝いのお礼状から/門田 高繁
  • 国際コラム・119回
  • 全剣連25年度版・剣道カレンダー販売のお知らせ

今月のまど

続発した台風も去り、日本列島に爽やかな秋が訪れました。各地で鮮やかな紅葉が見られましょう。修錬の結果を競う大会も、つぎつぎと展開され剣道界は賑やかです。体育の日の発表によると、小・中学生の体力はわずかながら向上の傾向が続いているとのことで結構ですが、一方2・30代の女性は運動をしない傾向が進んでいることが報じられています。このことは将来運動に関心のない親が増えることにも繋がる問題として心配されます。いずれにせよお互い各年代層に影響を与える、国民体位の向上への剣道普及の役割を確認して努力していきたいものです。

世の中の状況を見ると、まず政治面では、民主・自民の両党で、総裁の改選が行われました。6年前の自民党安倍晋三内閣の時、教育基本法の改正が行なわれたこと、また安倍氏の父君である故晋太郎氏が、旧制高校時代の剣道人であったことは、承知しておきたいと思います。いずれ総選挙がありましょうが、内外の情勢不透明な時期に、しっかりした体制を築いてもらうことを切望します。

さて内外の諸問題を抱え、なかなかよい打開策がとられず、経済も沈滞、長期にわたるエネルギー供給への対応もおぼつかない、領土問題では侮りを受け続けている感があり、国民は閉塞感に覆われているといえましょう。

数え出せば、後ろ向きに手当てをするべきことが多いかも知れませんが、縮こまらない積極的な姿勢をとる社会・国民でなければなりますまい。このための力を養い、行政・経営において発揮していくべきことは、剣道の修錬、とくに膠着した試合の運営と相通ずるものがありましょう。

東西対抗大会・57年ぶりに発祥の地宮崎で開催

戦前の昭和15年、日本は神武天皇即位を元年とする皇紀2,600年の年でした。大陸での事変は膠着していましたが、経済は好調で国民は祝賀行事に沸き立っていました。剣道界でも天覧試合が開催されました。筆者が選手として出場した大学・高専の全国学生剣道大会は、この年、奈良県橿原神宮で行われました。

剣道界では宮崎市において、全国の優れた剣士による東西対抗試合を初めて宮崎神宮に奉納しています。その後10余年を経て、戦後全剣連の時代となりましたが、この趣旨を継承した試合を復活することになり、昭和29年11月第1回東西対抗剣道大会が、宮崎市の県営球場特設会場で開催されました。

全剣連はこの試合を重要な行事として継続し、開催地は全国各地を巡回しつつレベルの高い剣士の対戦の場としてきました。そして本年57年ぶりに発祥の地の宮崎市に戻り、近年定着した男子35名・女子5名の選抜された剣士による対抗試合が、9月16日(日)宮崎県武道館で開催されました。

東西対抗の形を取り、心技とも優れ円熟した剣士による対戦ですが、勝負としては西高東低の傾向が見られます。本年は終始西が優勢に対戦を進め、西軍の5連勝(女子は4連勝)となりました。

この大会の表彰には、大会の趣旨を反映して優秀試合賞があり、内容の良い試合について、勝敗を問わず、両者を表彰します。本大会では男子・先鋒の軽米拓磨(千葉)—加治屋隼人(岡山)、6将の香田郡秀(茨城)—山中洋介(鳥取)の2試合が表彰されています。試合内容は別掲記事でご承知下さい。来年は山梨県甲府市で開催されます。

インドネシアの剣道を育てたい ― ジャカルタ、メダン訪問記

9月下旬に10日ほどジャワ、バリ、スマトラの3島を巡ってきました。筆者個人としても意味のある旅でしたので、紀行に誌面を頂きます。まずジャカルタでは、州政府・在イ日本国大使館が共催で「ジャパン祭り」が行われ、各種の文化的イベントが展開されています。

この中の行事として、剣道大会が9月23日(日)、在留日本人のジャカルタ剣道クラブの支援を受けてインドネシア剣道協会主催の名の下に行われます。この大会への参加が第1の目的でしたが、前日にはこの機会を利用して、同行の前警察大学校教授田村 徹教士、数年前まで政府顧問(労働問題専門官)として当地在勤の濱田 直樹教士による講習会が行われました。

ジャカルタでの剣道講習会(筆者写す)

ジャカルタでの剣道講習会(筆者写す)

これらの行事にはジャカルタの日本人小学校の体育館を使わせて頂いています。当地は在留日本人が多く、生徒数は1,000名とのこと。毎週稽古会も行われており、現地の人々への剣道の普及にも役立っていることがうかがわれました。

さて大会は日本人が中心の、児童の試合に始まり、大人の女子・男子の個人戦があり、最後の団体戦に移ります。5名1組の試合には、9チームが出場です。半数は地元ジャカルタでしたが、東部・中部の都市、スラバヤ、マラン、ジョクジャ、さらにバンドンチームの出場もあり、剣道が普及しつつあることが見えました。

ジャカルタ剣道大会団体試合出場者(筆者写す)

ジャカルタ剣道大会団体試合出場者(筆者写す)

翌日は大使館を訪れ、香取 克章大使に表敬、この席で全剣連よりインドネシア剣道連盟ウスマン会長に、剣道具20組を贈呈しました。剣道連盟も、国際剣連への加盟を目標に組織の強化を進めており、3年後の東京大会への参加は実現しそうです。このあと、石兼 公博アセアン大使にお会いしました。ここ勤務の浪岡 大介書記官(剣道六段)は、熱心に現地指導を行っている剣道マンです。

表敬のあと、ジャカルタから南下し、高原都市バンドンに入りました。ここは筆者にとって戦中、技術将校として航空部隊に勤務した、忘れることのできない所です。まず担当していた工業学校・航空科の教え子で唯一連絡の取れているリズキイ君とその家族、バンドンの剣道グループと会食をしました。利発な少年だったリズキイ君も今日すでに80代半ば、恐らく最後になるであろうお互いの会食を楽しみました。翌25日(火)は当時のまま使われている学校を訪れましたが、突然の訪問なのに歓迎され、校長の案内で現在の生徒との顔合わせも行いました。

バンドン市工業学校の生徒たちと

バンドン市工業学校の生徒たちと

さてここから戻る途中のプンチャックにある別荘道場ともいえる立派な目黒 雅男氏の求道館において、バンドンの剣道グループも含めた稽古を行いました。

26日(水)にジャカルタ空港へ戻って東に飛びバリ島デンパサールに着きました。ここでは剣道の予定はなく、警視庁を退職後、当地で柔道道場を開いておられる千石 常雄氏の道場を訪ねました。立派な施設を自前で作り、現地に溶け込み子供主体の指導をしておられる実態に一同感銘を受けました。

翌日はスマトラ北部の大都市メダンに行きました。ここの日本総領事濱田 雄二氏は熱心な剣道愛好家、18年前にはジャカルタの大使館勤務でおられ、交流基金の派遣団として訪問した際、お膳立てを含め大変お世話になった方です。武道普及に大変熱心に取り組まれ、今回もお誘いを受けての訪メダンとなりました。

当地では9月28日(金)に、北スマトラ大学において、学生が主体ですが、剣道の紹介を兼ねた講演会を行い、翌29日(土)には市内のコンベンション・ホールにおいて、各種武道のデモを主体とした武道祭が開催されました。

種目は剣道・合気道・柔道・柔術・空手など8種目でしたが、その中にはプンチャック・シラットという、インドネシア独特の拳法もあり披露されました。剣道は現地の剣士による試合が行われました。武道祭にはかなりの観衆も集まり、盛会でした。

メダン市での武道祭出場者一同

メダン市での武道祭出場者一同

ここで日程を終え、感銘深い旅を終えて帰国しましたが、関係各位に大変お世話になりましたことを深謝します。

アセアンの大国で親日国のこの国に、剣道を普及させたいものです。ぜひ武道館が欲しいものです。

会 長 武安 義光

ブラウザによって正しく表示されない恐れがある人名漢字は一部常用漢字に変更しております。

ページトップへ

  • 全日本剣道連盟公式Facebookページ
  • 全日本剣道連盟公式Twitterページ
  • 全日本剣道連盟公式Youtubeチャンネル