先日、2020年東京五輪の担当相が指名され、新たに追加される候補種目名も公開された。その選定基準の一つに「アンチ・ドーピング活動」が掲げられている。
本委員会はこれまで、独自のマニュアル作成、各種研修会における普及啓発講習、指導者への意識調査、ポスター作成など、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)の基本方針の敷延と啓発活動への参加に加え、青少年の薬物乱用防止、武道教育指導者への講習、血液検査導入に際し他競技に先んじて競技者への健康被害防止への注意を喚起してきた。第16回世界剣道選手権大会においては国際剣道連盟と協力し、TUE(治療目的使用に係わる除外措置)書類審査から始まり、最終日の尿検査終了まで滞りなく終え、詳細は後日報告予定である。その後、6月18日にJADA加盟団体の連絡協議会兼研修会が開催されたので、その概要を報告する。
2017年冬期アジア札幌大会、2019年ラグビーワールドカップと日本が世界レベルの大会を主催するに当たり、ドーピング防止活動の重要性が改めて強調された。トップアスリートはもとより、幼少年からスポーツの持つインテグリティ(誠実、高潔、品位、完全性)を尊重し、高い倫理観に裏付けられたスポーツマンシップの育成こそ国際的に信頼される国づくりの基礎となる。ドーピングに加えて、ハラスメント、スポーツ賭博、ガバナンス(組織統率力)の欠如等も競技の発展を阻害する脅威となる。平成21年以来、国内では年間5000件以上の検査が実施されたが、陽性率は約0.1%(年平均6件)で、気管支拡張に関わる禁止薬物が目立つ。平成26年の全6件中5件は尿検査で判定が可能な事例である。その一方で291例の血液検査が施行された。今回、検査手順が公表されたが、検査前2時間の安静、採血直前の10分間の坐位での絶対安静待機、偽陰性判定に対する追加分析の高額費用負担など、全般的な積極導入には違和感を抱かざるを得ない。拒否した場合、即刻ドーピング違反となる制度は、健康に関わる情報が提供される通常の採血検査とは異なることを強調したい。
アンチ・ドーピング委員会 委員 朝日 茂樹
* この記事は、月刊「剣窓」2015年8月号の記事を再掲載しています。