アンチ・ドーピング委員会コラム_17

今年の夏はリオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピックが開催されました。アンチ・ドーピング関連の大きなニュースとして、2月号のコラムでも取り上げたロシア問題が話題となりました。ドーピングが国際問題にまで発展しているということは、スポーツ競技が社会に与える影響が、良くも悪くも非常に大きいということを意味しているでしょう。

オリンピックでのドーピングと言えば、1988年のソウルオリンピックで、陸上男子100mのベン・ジョンソン選手のドーピング行為による金メダル剥奪が大きなニュースとなりました。世界ドーピング防止機構(WADA)が設立されたのは1999年、国際ルールである世界ドーピング防止規定が策定されたのが2003年です。それまでオリンピックでのドーピング検査は国際オリンピック委員会(IOC)が実施していましたが、WADAが設立後は独立して行うことで、中立性を担保して検査が実施できるようになりました。以後のオリンピックでは徐々に検査数・陽性数ともに増加していきます。技術の進歩によって過去の検体で新たに陽性が判明することもあり、今回のオリンピック期間中にも、2008年の北京と2012年のロンドンの検査陽性が新たに多数判明しました。

日本は過去のオリンピックで一度もドーピング違反選手を出しておらず、日本のクリーンさは、東京オリンピック招致に至った要因のひとつと言われています。今回のリオでは参加選手約11300人に対し5000件以上のドーピング検査が実施され、パラリンピックでは参加選手4300人に対し1500件が実施されました。選手にとっては負担もありますが、ドーピング検査をきちんと受けることは、トップアスリートの証明でもあると言えます。

剣道でも国際的には世界選手権で、国内的には全日本選手権・女子選手権、国体でドーピング検査が実施されています。また、トップ選手数名が指名を受け、居場所情報を登録した上で抜き打ち検査を受ける検査対象リスト選手となっています。このような取り組みを地道に行うことはコストも負担もかかりますが、競技としての剣道のクリーンさを世界的に示していくためにも重要なことだと言えるでしょう。

アンチ・ドーピング委員会 委員 濱井 彩乃

この記事は、月刊「剣窓」2016年11月号の記事を再掲載しています。

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