かかとの痛み ―足踵部の痛み―

Question

踵(かかと)が痛くて、思い切り踏み込むことができません。稽古の時には踵のサポーターをしていますが、試合の度に審判主任に届け出なければなりません。よい方法を教えてください。(20歳男性)

Answer

どんな障害が考えられるのか?

踵の痛みがある場合考えられる疾患は、①踵骨挫傷(しゅこつざしょう)、②シーバー病、③踵骨疲労骨折、④離断性骨軟骨炎、⑤踵骨下滑液包炎などです。この中で、シーバー病は10〜15歳の発育期に見られるものですので、除外してよいでしょう。②、③はレントゲン検査で確認してください。①と⑤は区別がつきにくいものです。痛みが踏み込んだ時に突然起こった場合は①の可能性が高く、はっきりした痛みの原因がわからず次第に痛みが強くなった場合は⑤の可能性が高いといえます。ここでは、最も頻度の多い踵骨挫傷について書きます。

どうして起こるのか?

剣道の踏み込みの時には、体重の10倍の力が加わるといわれています。踵の構造は厚く、硬い皮膚の下に細かな隔壁で仕切られて均一の分布した脂肪組織があり、クッションとして作用します。踵骨自体も梁構造により丈夫に作られています。足の骨格は、全体として足の前後方向の縦のアーチと横方向のアーチ構造をしており、上からの力を和らげるようになっています。

このクッションを有効に作用させるためには、踏み込み足を全体として着地し、時には1トンに及ぶ力を分散しなければなりません。これがうまくいかなかった時、すなわち踵からの着地が加わると、踵骨あるいは踵骨骨膜が損傷されます。

こ質問の方の症状は、このような機転で起こった痛みと考えられます。

剣道実施上の注意

踵に加わる力を減らすには、踏み込んだ時の足の角度が問題となります。踏み込んだ時、足の裏全体が同時に着地することが原則です。踵が足先より早く、または遅く着地するような足使いをすると、逆効果になります。

剣道の足使いは、常に足の裏が床をすべるように移動することが原則です。陸上競技の走り方のようにつま先を上げて踵で着地し、足関節を使って最後に足先が離れる足の使い方を剣道に使うと、踵をいためる原因となります。

 踏み込んだ時、膝の位置が足先の真上にあるような足首の角度をとると、足全体に力を分散できます。この時、膝関節は今まで以上に曲がって前にあり、腰の入った打ちができているはずです。

治療の方針

痛みが最初に起こった時、冷却と安静が大切です。痛みが取れるまで、しばらく剣道は控えてください。

この方のように、痛みが慢性化した場合は、踵に加わる力を和らげる目的でヒールカップを用いるか、テーピングで脂肪組織を固めてクッションを強くしてください。サポーターでは少し弱いでしょう。

試合の時には面倒でも審判主任に申し出て、市販のヒールカップの入ったサポーターを用いることはかまいません。診断書を提出されることを勧めます。

Foot-heel_001.png

湯村 正仁(国立病院福山医療センター院長)

剣道医学Q&A(2014/12発行)」より抜粋

ページトップへ

  • 全日本剣道連盟公式Facebookページ
  • 全日本剣道連盟公式Twitterページ
  • 全日本剣道連盟公式Youtubeチャンネル