RICE処置・主なケガの応急処置(前編)

ポイント

キズのない打撲、捻挫にRICE療法が重要

キズのない打撲、捻挫にRICE療法が重要

アキレス腱断裂時の固定

アキレス腱断裂時の固定

ケガのチェック・ケガ処置のフローチャート

 ケガをした時、まず以下の4つについてチェックします。

  1. ケガをした時の状態は?(どんな格好で、どんな状況で、転倒した、捻った、打撲したなど)
  2. 動けるか?動かせるか?手足が動くか?立てるか?歩けるか?シビレはないか?
  3. 痛みが強いか?我慢できるか?
  4. ケガをしたところが変形しているか?腫れてきたか?

この4点についてよく観察し、下図を参照にして医師へ診せるかどうかを判断します。

ケガ処置のフローチャート

RICEとは

RICE処置(英語の頭文字)

どんなケガにも、まずこの応急処置を

 どのようなケガ、外傷でも基本的にはこれから述べる4つの応急処置を適切にすることが重要です。是非覚えてください。これはRICE処置と言い、英語の頭文字をとったものです。

RはREST(レスト)=安静
IはICE(アイス)=冷却
CはCOMPRESSION(コンプレッション)=圧迫
EはELEVATION(エレベーション)=挙上

 このRICE処置を正しく確実に行うと、痛みと腫れを抑え、治りが早くなり、稽古にも早く復帰できます。
 すぐに医師に診せる場合は、必ずしも4つの処置を行う必要はありません。安静・挙上など、できる範囲のRICE処置を行ってください。
 RICE処置はどのようなケガにも効果的です。

RICE処置に必要なもの

 冷却には、氷、氷嚢や冷却用バッグなければビニール袋(図1)、安静・圧迫には、タオル、弾性包帯(大小数個ずつ)あるいはサランラップなどでも代用が可能です。

RICE処置の方法

1)安静 レストREST(図2)

 まず患部を動かさないことが応急処置の鉄則です。
 無理に動かすと骨折していたり、腱や筋肉が切れていたりするときには悪化させ、出血が増し、痛みがひどくなります。
 弾性包帯、タオル、三角巾などで固定してください。

2)冷却 アイスICE(図3)

 次にすぐ氷で冷やします。冷やすことにより患部の内出血や腫れを最小限に防ぎ、さらに炎症を抑え、痛みを軽くできます。
 直接氷を患部に当てると凍傷を生じますので、ビニール袋に入れてタオルなどで包んで患部にあてます(氷がない場合は、一時的には冷たい水を浸したタオルでもかまわないが、早めに氷に換えるほうが良い)。冷やしすぎても凍傷を起こしますので、断続的に24~48時間くらい行ってください。

  • 注1:コールドスプレー、水道水などは一時的にはよいのですが、長時間冷やす必要があるので氷が最も適しています。湿布剤は使用しないでください。
  • 注2:氷嚢や冷却用バッグがあれば、氷水を入れて手・肘・膝・足など全身どの部位でも容易に冷やせます(図1・3)。
  • 注3:氷はケガの応急処置には絶対に欠かせないものですから、試合のみならず、できれば普段の稽古の時にもクーラーボックス等に入れて常備しておくことが望まれます。

3)圧迫 コンプレッションCOMPRESSION(図4)

 圧迫は患部の内出血や腫れを抑えるのに有効です。腫れが一旦ひどくなりますと回復にかなりの時間がかかりますので、腫れが生じてからというより、未然に防ぐために行います。
 冷却と同時にやや圧迫ぎみにテープか包帯で固定します。患部にスポンジのような柔らかいものをパッドとしてあてれば皮膚の保護になります。
 15~20分ほど続けると圧迫・冷却により血液の流れが悪くなり、さらに神経も圧迫されるので青くなったりしびれてきたりします。ここで圧迫・冷却をやめます。5分位するとしびれもとれますし皮膚も赤くなり循環障害を予防できます。再度、圧迫・冷却してください。このように「圧迫して冷やす」→「しびれて蒼白になった」→「ゆるめて冷やさない」を就寝するまで繰り返してください。翌朝も行い約24時間以上続けます(下の「けがをしたらすぐに行うRICE療法」参照)。

  • 注:圧迫しすぎると先端の循環障害を引き起こし、ただでさえ冷えて循環が悪くなっている圧迫部位の壊死を生じるおそれもありますので、注意が必要です。圧迫しすぎたまま寝ないようにしてください。

RICE処置の方法:図1〜4

4)挙上 エレベーションELEVATION(図5)

 患部を上げること、挙上も重要です。腫れを防ぎまた早くひかせるために、高く上げることが大切です。
 患部の腫れは血液やリンパ液などの水分から成っています。水分は体の高いところから低いところへ流れるものです。つまり高く上げることで、腫れた患部の水分が吸収されます。心臓という血液をくみあげるポンプ位置より高くすることが重要です。
 足関節の捻挫では、寝かせて足枕を用いて足を心臓よりも高い位置に上げておくのです。

RICE処置の方法:図5

けがをしたらすぐに行うRICE療法

 ここまで述べたRICE処置の方法と手順を下図に示しました。受傷直後より急性炎症がおさまるまで行うことが基本です。大体1~2日くらいは症状に応じてRICE処置を続けてください。

RICE処置の方法と手順の図

部位別RICE処置の注意点(下図)

1)肘

内側には尺骨神経があり、その上を圧迫・冷却しすぎると神経麻痺(薬指・小指の麻痺)を生じることがあるので注意します。

2)膝

後外側には腓骨神経があり、直上を圧迫・冷却しすぎると神経麻痺(足が垂れてしまう)を生じることがあるので注意します。

3)足関節

一般に足のケガは腫れやむくみが起こりやすく、その間はなかなか治らないものです。ケガが治るまでの間は、立っていたり歩いていたりすると腫れやむくみがひどくなりやすいので、時々、足を高い位置に置いて少し休んだり、寝る時も挙上しておくことが重要です。

4)アキレス腱

断裂が疑われる場合は、足関節を少し伸ばした状態(底屈位)にさせます。

部位別RICE処置の注意点

RICE処置・主なケガの応急処置(後編)へ続く

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