新春を迎え初稽古会新年会など、剣友各位は各地で忙しく活動を始めておられることでしょう。全剣連も年度の活動の整理と、新年度への準備態勢に入っています。
「まど」は、まず例年のように元日の新聞社説を一瞥した後、平成16年の出来事を回顧します。
昭和20年の大戦終戦から60年、これを踏まえての論説が取り上げられ、これからの日本の在り方を説く内容が目立ちました。
まず、『読売』の「戦後からの脱却による国家戦略の構築」を説くものです。戦後の連合軍総司令部により培養された戦後民主主義の残滓を除き、米ソ冷戦後の情勢への適切な対応を進めるべきで、集団自衛権の行使、教育基本法の改正を行うこと、「平等」偏重から脱却した施策推進により、「戦後」的思考方式から脱却し、国家、国民の活力発揮を説きます。
『産経』は類型的には同じ立場です。この年を「悪しき戦後」を超克する年とすべきで、国内政治的、国際的に恵まれた現環境の中、憲法改正、教育基本法改正に取り組むこと、行財政改革を促進し、この中高い道徳性と倫理感を備えた保守主義者の出現を期待しています。
次に『朝日』は「東アジア共同体」への推進を説きます。西欧からの独立を求めるアジア人に大きな自信を与えた、日露戦争の勝利から100年、その後の曲折を経て現在起っている「東アジア共同体を」という声を日本は正面から受け止める必要があると主張します。生易しい現実ではないが、欧州での成功にも鑑み先行きが不安であればこそ、できることから一緒に進めることが必要で、例として日中の海底資源の共同開発を挙げています。
『毎日』は戦後60年の平和主義を快挙として誇るべきと述べ、これを支えてきた基本が揺らいでいると憂い、立ち直るための政治の活動を期待します。この際一律主義を排し、すべて欲するのではなくどちらかを選ぶ時期で、素直に現実を見ればやることは明白であり、システム同士を解きほぐす年とすべきとします。そして認識を共有し、実現手段を編み出し実行する政治の必要性を指摘、この際説得と言う文化を具現するため、政治の改革を望んでいます。
『東京』は多くの犠牲を伴った敗戦の反省から歩み始め、60年戦争と無縁で、核兵器を作らず、武器も輸出せずとした日本の歩みを、国際的に大きな説得力を持つものと自賛します。この原則をなし崩しにしようとする風潮を憂い、武力を使わずに新しい国際的秩序造りに努めるのが、日本に相応しい現実的路線と説きます。
『日経』は戦後の教訓として、過去の成功体験にこだわるあまり、転換が遅れて第二の敗戦を招いたとします。世界的混迷の中、ここから抜け出す拠り所の経済競争力を磨くこと、現行の改革の手を緩めず多様の価値を認め合い、チェック機能が働く柔軟な社会、そんな明智ある国際国家の道をたどるべきで、尊敬される「日本の時代」を目指すべきとします。
以上、経済問題から政治、国際へと重点が移っているのが認められます。この難しい時代の中、剣道関係者は社会の前進のため努力していきましょう。
剣道界・全剣連のニュース
低迷の中一進一退を続けてきた初段取得者数ですが、2年前に年間5万人台を回復し底を打ったかに見えましたが、その後低迷し、昨年も4万5千人台になりそうです。
一方、全剣連の行う六段以上の段位審査への挑戦意欲は高く、16年度年間受審総数は1万5千人を突破、過去最高を記録しました。心強さと弱さ同居の状態です。
少子化の影響を受け、剣道への参入者の減少傾向にある中、少年剣道の育成に長年活動して来られた団体の労に報いるための表彰制度を新設、各剣連などの推薦に基づいて初年度267団体(一部個人を含む)を表彰することとし、12月11日に九段会館において各地から参集された代表者に対し、奨励賞を贈呈しました。
長い歴史を持つ地区講習会ですが、近年形式的に流れる傾向にあることに鑑みこれを廃止、各剣連ごとの講習計画に対し、全剣連が援助する方向に改めることとし、17年度より実行します。
大日本武徳会により行われてきた演武大会を継承した標記大会が、戦中、戦後の中断を経て第100回を迎え、記念大会として実施しました。西日本資料小委員会が纏めた『明治期にみる武徳祭大演武大会』を参加者に配付しました。
審判講師要員講習を経て、実績を挙げられた方34名に対し、講師認定証を差し上げました。今後毎年追加されます。
称号審査は軌道に乗りつつあることが認められますが、成績は必ずしも向上せず、不合格者が増加の傾向にあることは残念です。
八段審査の実施方法を改め、学科試験と剣道形の研修を廃止、実技審査を当日のうち合格決定することにし、5月から実施しました。
前年より実行した七、八段審査料に続き、称号審査料を値下げし、受審者の負担軽減を図りました。
現行審査規則の制定の際、積み残しになっていた、各剣連に委任されている五段以下の審査の実態把握に着手し、称号・段位委員会の委員が分担し、剣連の審査の実行状況を出向いて視察しました。第一段階の結果を取りまとめ検討資料とするほか、参考として各剣連にも通知します。
5月の都道府県剣道優勝大会では、岡山県が健闘、47年ぶりの優勝の栄冠を勝ち得ました。11月の全日本剣道選手権大会では、下馬評で影の薄かった千葉県の鈴木 剛選手が優勝し天皇盃を獲得、いずれも予想を覆す健闘でした。
この他の主要大会、秩父市での国体、宮崎市での居合道大会は、いずれも地元県が危なげなく優勝、番狂わせは見られませんでした。
全剣連ホームページの利用者は増加を続け、昨年のアクセスは480万件と、前年を2割越えました。総務・情報小委員会の若手のご尽力で内容を一新、1月からお目見えしました。情報伝達の飛躍が期待されます。
3月に開幕の愛知万博において剣道のデモンストレーションを8月31日に実施することが固まりました。実施計画では少年剣士の行事を柱にし、国際色も出す方向で、剣道の一般理解を進めるため一役買って貰います。
新春の高中剣道指導者研修会を訪ねて
1月4日から3日間、勝浦の日本武道館研修センターで開かれる恒例の学校関係剣道指導者研修会は、28回を数えます。研修会は日本武道館が、文部科学省などの後援を得て行なっており、全剣連、高体連、中体連も主催者に名を連ねています。ここに、昨年に続いて顔を出しました。高校教員81名、中学校教員59名が全国から参加して真剣に受講し、講師側の熱意と相俟って、張り詰めた空気の研修が進んでおり、参加者が各地に戻ってからの効果が期待されます。
利用者が急増しているホームページの内容の刷新に、総務・情報小委員会が取り組みました。剣道に関する情報発信基地となることを目指した内容で、本年1月1日から運用が始まりました。分りやすい画面、配色への工夫、簡便な操作性など利用者の利便を考慮した改善が加えられています。「百聞は一見に如かず」、ご覧戴くことをお勧めします。
かねて入退院を繰り返しておられた、吉田さんが12月31日に亡くなられました。吉田さんは理事長、会長代理を長く務められ、日常の運営のほか大きな行事の実行に手腕を発揮されました。思い出されるのは、京都での世界剣道選手権大会です。京都市、京都府から多額の助成金を獲得されるなど、開催地側として運営に努力され、大会の成功に大きな役割を果たされました。また武徳殿の建立100年行事に努力され、大きな石碑を立てることを主張され、題字を揮毫することになったのも思い出です。獣医としての要職の傍ら、剣道の振興に努力され、歯に衣を着せぬ言動から、剣道界の名物とも言われる重鎮でした。心からご冥福をお祈りします。