災害や豪雪など各地でご苦労が多かった冬ですが、早くも暦は立春を過ぎ、日も長くなって間近の春が待たれる頃になりました。
年度末と新年度を控えての準備に気忙しさが増す時期に入ってきたのは各剣道団体もご同様と思います。全剣連も準備作業に追われる日々を迎えています。
来年度の全剣連経営基盤をまず吟味して見ます。幸い外部環境としての日本経済は一応の安定状況を続け、物価や国民生活にも大きな変動はないものと見てよいと思います。全剣連収入の大宗である称号・段位の登録料、審査料収入を予想します。中高年剣士の動きは引き続き活発に推移すると思われますが、本年すでに見られている、剣道への参入者は減少傾向を免れそうもなく、少子化の影響、他のスポーツヘの吸引などにより収入は弱含みになり他で補うことは困難で、年間収入の減少は避けられないと見ています。
このままでは事業費への影響が心配されるところですが、幸いここ数年収入面の好調が続いてきており、審査料の値下げなど、愛好者への還元分を吸収して余りある余剰金が出ましたので、この際これを事業費として活用することとし、重点の事業分野に投入して剣道界の発展を図る、積極的予算を組むことを考えます。
現在展開している事業分野については、すべて冗費を省きつつ合理的に仕事を進めることが大前提となります。
特に管理経費は極力抑え、人件費も増加させずに、増加の方向にある業務量をこなしていき、その上で重点分野の予算を充実させます。
先ず強化訓練ですが、すでに男子と女子について本年度立ち上げましたが、さらに男子の第2グループの強化を取り上げることとします。
本年度スタートした男子強化の対象は、すでに試合などで実績ある剣士が中心となっていますが、目前の試合のためという視点を離れて、さらに若手の将来性ある剣士の育成強化により、実力ある剣士として育てる訓練を始めたいと考えています。来年度の強化活動は、これらの三本立で進め、成果を挙げることを目指します。
さて剣道本来の質的向上を図る普及活動の充実は、強化以上の重点として展開を図ります。現在審判講師要員の養成活動、各種講習の充実に努力していますが、すでに紹介したように、新年度から講習事業の実施の重心を、地方各剣連の方に移動させていくことにしています。具体的には全剣連が計画してきた講習会を、地方剣連の立てた計画に対し全剣連が援助するよう流れを切り換えようとするものです。
この措置に伴い全剣連と各地区が共催してきた地区講習会は取り止めることになりますが、資金的にはその費用を充当する他、きらに助成費用を追加投入して、各剣連での講習を活性化していくことを通じ、全国的にレベルアップが進むことを期待します。来年度分については各剣連との打ち合わせの結果、現在34の講習会への助成計画が内定しています。
すでに10年目を迎え、定着してきている標記養成事業は、来年度から上級講習を開始する段階になり、初級、中級と併せて全体の体系が出揃うことになりますので、その健全な展開を図っていきます。
特に資格取得者が、剣道普及の弱点と見られている、中学校での指導強化に活用されるよう、各剣連で努力して頂くことが望まれています。
なお新たに行われる上級講習は、来年度下期に、東西それぞれ1回開催の予定ですが、要領、資格などについては年度内に要綱が決定されます。
3月から開かれる愛知万博に参加し、8月31日に会場のEXPOドームで剣道のフェスティバルを行うこととし、予算を計上します。少年の参加をメインとし、これに外国人の参加者を加えて、国際的に広がった剣道の端を示すなど、剣道の般社会への紹介と理解を深めるための行事として実施します。手作りでの準備と実行を主体として、少ない経費で最大の効果をあげるよう計画します。
前年末に行った少年剣道教育奨励賞の表彰事業は本年度に始めたものですが、今回実施の表彰対象、事業の運営と効果を検討の上、新年度も継続して行きます。
この他文化講演会、剣道殿堂などの文化事業も充実させ継続します。また道場建設の計画は具体化が進んでいませんが、実現を目指して積立を行ないます。
新年度の業務の展開は、五段以下の地方剣連に委任している領域が重点になりましょう。まずその実態を把握すること、そして全国的に整合性を図り、さらにその前提となる各段位の基準がこれで良いか、段位の権威を高め、しかも青少年に励みを与え、さらに剣道に吸引するようにしていく方策を追及していくことが、実施内容を向上させることとともに目標になりましょう。
実行面での問題は、八段審査での、一次、二次審査の性格付けを明確にすることが期待されています。またすでに決まっているものとして、五段以下の審査員の資格に称号保有を条件として追加します。
次にこのところ増加の傾向にある称号筆記試験の不合格者について、段位審査の剣道形の場合に行っている、筆記試験だけの再受験を認め、いわゆる敗者復活戦を取り入れるかどうかを検討し、結論を得て、来年度に実行に移すことにします。
新年度を前にして恒例となっている標記会議を、2月8日に九段会館で開催。
各剣連の業務の要となるメンバーの参集を求め、全剣連側は常任理事以上の幹部全員が出席し、それぞれの担当役員から新年度の事業の構想、業務の計画、進め方などの説明を行うとともに、質疑応答を行い、有効な半日を過ごしました。
2月を迎えると講習会が目白押しです。2月4日から3日間、千葉県勝浦市の武道館研修センターで、社会体育中級指導員の資格認定講習会を実施、関東を中心とする60名の受講者が参加しました。
この講習、例年この時期に、この会場で行われ、例年100人を越す参加者で賑わうのに比べると、今回は人数の点では寂しさが伴いましたが、これを補う全員の熱気で、充実した講習を終えました。
一方同じ時期に今年度はじめての女子剣士の強化訓練が行なわれ、全国から選ばれた高校生2名を含む25名が参加、静岡市の東海大学清水校舎において4日間の日程で実施されました。役員、講師からの報告では、受講生の取り組みは気力、技術とも目覚ましいものがあり、素晴らしい講習会として終えることができたとのことで、来年度からの本格取り組みを控え、何よりと感じています。
2月9日より、勝浦市の武道館研修センターで始められる男子の強化訓練で、これを上回る充実した講習になることを祈念しています。
次に杖道講習会は1月22、23日の両日、東京の江戸川区スポーツセンターで開催、292名という多数の愛好者が参加、熱心に受講しました。
講習会前日の日には、本年度より回数を増やした、杖道の2回目の六、七段審査回を実施、六段6名、七段5名が合格されました。この中で2名が外国人であるという珍しい結果になりました。この審査会を以て全剣連が行う本年度の審査会を締めくくりました。