2005年4月号

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今月のまど

寒気去りやらぬ3月でしたが、梅は咲き、桜の蕾も膨らんできました。例年にない大雪でお困りの地方もありましょうが、まもなく花盛りとともに、新しい社会人、新入学生が誕生する4月を迎えましょう。もうすぐ新年度です。

平成16年度の事業を顧みる

年度末を迎えて、本年度の事業実績を振り返ります。役員任期の後半に入った本年は、役員や各委員会の活動が軌道に乗り活発に仕事が展開されました。剣道への参入人口の目安になる初段合格者減少の流れは止められませんでしたが、高段への挑戦する中高年者の活動には勢いが感じられました。

まず男女の強化活動が始められました。各種講習の内容も充実してきました。全剣連が担当する称号・段位の審査内容も改善され、これまで手を付けていなかった剣連へ委任している五段以下の実情を実地に赴いて把握することに取り組みました。審判講師要員の研修も進みましたが、各地で審判技術向上のための講習活発化の機運が高まったことは、連鎖反応の効果であり収穫でした。社会体育指導員の講習も順調に展開しつつあり、本年秋から始まる上級指導員養成講習の準備も進んでいます。

また、少年剣士の教育に功績があった各地のグループや道場に報いるための表彰事業を取り上げました。普及・広報の分野ではホームページの刷新、出版物の充実が進められました。この他、言及しなかった分野においても、それぞれ手応えのある取り組みが進んでいます。

いささか自画自賛になりましたが、広範な分野で業務の改善が行われ前進の緒についたことは、過去の経験を振り返って間違いないと言えます。これは担当理事、関係役員、委員などのご尽力、さらに関係剣連のご努力、ご協力のお陰ですが、事務局の努力も認めてやりたいと思います。全剣連のできることはわずかであり、不十分な点は至る所に残されていることを感じますが、次年度は今年度の実績を踏まえつつ、全剣連は事業を伸ばして行かねばなりません。

新年度の事業計画と収支予算の原案固まる

次年度の計画、予算は3月23日の理事会、評議員会の議を経て決定されますが、その原案ができましたので以下ご紹介します。

考え方と大筋はすでに前月号で記しておりますので、今回はいくつかの点を具体的に述べます。

弱含みの事業収入は蓄積で補う

大宗である称号段位の登録料の見通しが弱く、一般会計の単年度の収入は前年度を少し下回る5億9千万円を見込みます。
一方、支出面は、前号で申し上げましたように、近年の増収分の一部を繰り入れて重点事業に投入し、単年度収支では赤字を前提として6億4千万円の事業を行うことにしています。

普及活動の軸足を地方に移す

事業展開の基本方針は前年と変わっていませんが、この中、普及活動では前月号で触れましたように、講習活動の軸足を各剣連側に移して実施することにしています。具体的にはこれまでの地区講習会を取りやめ、各々の剣連が立てた計画に対し、全剣連が講師派遣と助成金若干を差し上げる方式に切り替えることにします。すでに各剣連毎に一カ所ということで、34府県への援助計画が決まり、4月から展開されます。
この他、学校剣連の講習計画への援助を計上するほか、剣連の要望に応じて行う特別審判員講習事業への講師派遣、居合道・杖道などが主体であった講師派遣などの事業は、継続事業として行います。
以上を含め、従来から計上している関係団体への助成金などを一括し、地方・各剣連への後援助成費として3千万円を計上しました。

強化活動その他の予算

強化活動では、男子2グループに女子を加えた3本立で展開し、費用として前年予算を大幅に上回る2千8百万円を計上しました。
また、社会体育指導員認定事業は、年度後半に上級講習を予定していますが、この際、初級受講料金の値下げを含めた受講料の調整を行なうことを予定します。
その他の一般講習事業は、おおむね前年を踏襲しています。
各種大会は一部日程変更がありますが、予算面では大きな変動はありません。

文化関係事業としての万博への参加

3月から始まる愛知万博において、8月31日に「剣道フェスティバル」を行うための費用を計上しています。この内容は最終頁に紹介されていますが、万博の場での剣道の披露は、内外に剣道の認識を深めるために意義あるものとして、総支出1千5百万円を計上しますが、極力手弁当での運用と、各方面よりの援助をも期待しています。別記事にみられるように、かなり特色ある企画を織り込んでおり、剣道PRに効果を挙げることを期待しています。

事業関係費の増強

管理関係予算は節約に努め、ほぼ前年並みに抑えますが、事業関係には過去の蓄積から4千万円余を補填し、新年度事業の充実を図ります。
4月2、3の両日には新年度事業のトップとして中央講習会が東西で開かれますが、女子、男子の強化訓練講習会が続きます。
新しい計画による9カ所での後援講習会も4月には各府県で開かれます。
名古屋での選抜剣道八段戦も間近です。忙しい4月の幕開けです。

称号・段位審査規則の一部修正

教士の筆記試験は3科目群で行なわれますが、かなりの不合格者が出ていることは、お知らせしているとおりです。このうち1科目群だけが不合格であった場合に、1年以内に1回限りの再受審を認めることに規則改正を行ないます。試験の目的が教士として必要な知識を持って貰うことが目的であり、段位審査における剣道形試験と同様の趣旨で、限定した範囲で救済の道を開いたものです。

次に各剣連に委任している五段以下の審査員の資格は、これまで段位の保有のみが条件でしたが、選考基準を六段以上のものを錬士六段以上に、七段以上の者を教士七段以上に改めます。
称号を重視した規則体系に対応して、称号審査が定着してきた現状に対応して改めることにしたものです。手続きを経ていずれも新年度から施行されます。

剣道講師要員研修会の内容充実

第10回目の講師要員(試合・審判)研修会は3月5、6日に東京、夢の島のブンブというスポーツ文化館で21名を集めて開催されました。

実技による研究のほか、参加者による体験発表も加わり、行為の原因と結果の正しい見極め、望ましくない試合者の態度に対する処置などを巡って密度の濃い研修が行われましたが、全般的に内容の厚みが加わった印象を受けました。年度末には適格の方に講師認定証を差し上げる準備を進めています。

古村幸一郎長野県剣連会長ご逝去

古村さんは戦後の剣道復興期から、50年にわたって長野県剣連会長の座にありました。個性の強い変人と言える部類に入り、話題に事欠かない方でした。旧制水戸高校時代からその名を知られ、昭和9年の皇太子ご生誕記念の天覧試合に茨城県代表として出場されています。東大時代は学生剣道界に名を知られた強豪で、赤胴に白の上下が似合う風格ある姿が思い出されます。

古村さんが最も力を発揮されたのは、長野市の実家を足場にし、全剣連と長野県剣連の発足、基礎固めに尽力された、戦後の復興期だったと思います。『全剣連五十年史』巻頭の全剣連設立記念写真には、古村さんの姿がありますが、恐らく最後の生存者を失ったことになります。

その後、剣道界は復興し、剣道は大衆化して一握りだった剣道愛好家は激増しました。組織としての剣連の運営の在り方は近代化して行かなければなりませんが、古村さんは、その方面には無頓着、不得手でした。全剣連に見えてポケットから札束を出して、受審料、登録料などを収めて行かれる姿もお見受けしました。近年の剣連の運営に対する不満は、しばしば全剣連にも寄せられるようになりました。

思い切った刷新の機会を捉えられずに逝去されたことは、戦後の功労者のために惜しむべきことでした。しかし、近年の在り方への批判はできても、私利を求めず家業も顧みずに一生を剣道に捧げられた古村さんの姿は、真似のできないところであり、剣道界の歴史に残る方として、長逝をお悔やみするものであります。

願わくば、兆しが見える長野県剣連の運営の近代化が進められ、組織の若返りを通じて、県内の剣道が活性化し、発展されることを念じるものです。

古村さんとの学生時代からの長いお付き合いを想起しつつ「まど」として異例の長文を綴らせて戴きました。

 

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