京都市・大阪市での行事が終わったばかりですが、緑滴る青葉の候となりました。各団体では前年度の決算、役員の交替を行う総会、役員会のシーズンを迎え、剣道団体の担当者もこの時期忙しくしておられましょう。全剣連も役員改選の時期を迎え、審議員、相談役、顧問なども同時に任期になります。
役員の担当や委員会の組み方の変更も予想され、これに伴う専門委員の異動もありましょう。事業の根幹は事業計画により年度はじめに決まっていますが、各専門委員会は仕事に一区切りをつけることになり、つぎに申し送るための業務の整理、締めくくりを急いでいます。今年は期末の会議の手順を、一部変更して行いますが、最後に取り上げます。
5月14、15日の両日名古屋市枇杷島スポーツセンターでの審査会で春の審査行事が締めくくられました。14日の七段審査は開始早々から会場の緊迫感が、京都での七段審査に比べ少しく劣る感じを受けましたが、やはり1日を通しての合格率が京都を下回り、10%を割る結果になりました。この日の受審者の数は京都審査とピタリ同数の953名となる珍しい現象が起こりましたが、合格者は京都を下回る90名に止まりました。また女性の合格者が出ない厳しい結果でした。
翌日の六段審査は1,200名近い多数の方が挑戦され、合格率は京都を上回る13%という結果でした。全体を通じ審査員の評価は、安定した基準で行われたものと見ています。
全国から七段クラスの剣士を集めて錬成する中堅剣士講習会は久しく6月に行われてきました。
本年は5月後半の八段研修会と日程を振り替え、5月25日より5日間、奈良市中央武道場で全国各都道府県から推薦された63名により開催しました。この講習会は各地の中堅幹部の実力向上を図る強化訓練の狙いを持っており、かつての呼称である指導者養成の名は改められています。
全剣連として特に重視している行事であり、振り返ると柳生道場での厳しい訓練、人数を増やして東西2カ所で行った時期を経て、4年前から現在の会場に、全国から一堂に集まることになり、今回第43回目が行われました。この講習会の特色は、まず粒よりの40歳代の受講者にありますが、同時に錬成を効果在らしめるための優れた講師陣にあります。事故もなく効果を収めることができ、なによりと思っています。
時期を繰り上げたことにより、梅雨季に先立つ、気温も低い乾燥した時期に行うことができ、講習効果も挙がったとのことでした。
開催時期の変更が効果を収めたわけですが、なぜもっと早くこのことに気が付かなかったかの感があります。もっとも折しも修学旅行シーズンで、宿舎の手配など、地元剣連にはお骨折りを願ったことでしょう。
昨年秋と今年5月に剣道八段に合格した方を対象にした研修会を昨年と同じ東京都豊田市の道場連盟施設で、6月9日から4日間行いました。
実技面で剣道界の幹部となられる方々に、全剣連として必要と思われる事項について研修するもので、本年は全国から30名が参集、充実した日程をこなしました。
それぞれの担当、専門委員会で次期に申し送られる作業や課題が浮かび上がっておりますので、いくつかを紹介します。
普及関係ではまず本年度から改まった地方をも含めた講習体系の充実、定着が挙げられ、各剣連の講習体系と併せて、全国的視点で講習の浸透を図っていくことが課題となりましょう。
見直しの時期を迎えている女子講習事業の在り方、特に年2回東西で行っている一般女子を対象にした講習の取り扱いを含めて検討されましょう。
強化訓練は男子、女子について発足していますが、本年度新事業の男子若手講習の進め方を長期的視点のもと決定を要します。また強化方策を扱う委員会設置を考える時期かと思います。
称号・段位関係では、取り組み中の五段以下の審査の実態把握と所要の改善策の取りまとめを行うことが第一の課題となります。
試合審判関係では進められている、講師要員の講習の徹底と、講習効果の地方波及状況の評価が必要になりましょう。
社会体育指導員養成事業では、本年から始まる上級課程を適切に行うことを目標とすべきでしょう。
医・科学委員会では継続されている事項のほか、すでに決定しているドーピング機構への加盟に伴う、全剣連としての対応の体制整備が課題となります。
一昨年新設され國松副会長を議長として発足した同会議が、初めに取り上げた剣道指導の指針が結論を得て、先日最終案の報告を戴きました。会議は担当の竹内常任理事の他、8名の委員で構成され、一昨年11月に第1回の会議を開催、その後14回の会議を持ち、「剣道の理念」の普及徹底を図るための「剣道の指導の心構え」として会議案を策定したものです。
また審議の過程で、役員、評議員、顧問、審議員、相談役、専門委員などに2度にわたって案文について意見を求めるなど、この種の審議に当たっての前例のない措置を取っています。
こうした作業の上纏まった案文は、「生涯剣道」「竹刀の本義」「礼法」「師弟同行」「事故防止」の5項目から成りますが、このうち「竹刀の本義」については、竹刀と刀との関係をどのように指導するかについて、提案された剣道界の意見が2つに別れており会議としても集約するに至らず、2案が併記された形の案になりました。
さて、この案は「剣道の理念」から踏み込んだ具体論であり、「理念」に並んだものとして位置付けることを目標とすべきでしょう。これをどう集約して結論を得るかは次の執行部に課せられた課題となりますが、ここまで進めて戴いた長期構想企画会議の努力を高く評価し、意見を寄せられた各位を含め、ご尽力に謝意を表させて戴きます。
本年度から会議の手順を寄附行為に準拠して、例年と一部変更して行うことにし、6月22日の理事会、評議員会から実施します。
まず評議員会を先行して開催、前年度の事業報告、決算を審議、続いて任期を終える役員の選任を行います。このあとの理事会で事業報告、決算を決定、さらに新しい評議員のメンバーを決定して当日の会議を終えます。
従来は当日新理事会を開催、会長以下役付きの決定、その他関連人事を決定していましたが、今回はこの方法を改め、役員の任期が終わった7月に入って新メンバーによる理事会を開き、会長以下の人事を決めて執行部として発足することにしました。
従来は当日の限られた時間に、新旧の役員、評議員が混在する中、慌ただしく案件を処理するため形式的になりがちの状況でしたが、これを改めることによって、時間的に余裕を持って人事案件を処理できるようになることを目指します。
翻って一般の財団法人の運営を見ると、寄附行為で定められている重要案件の決定に当たっては、評議員会の同意を得た後理事会において最終決定するのが、一般慣行として行われています。全剣連の寄附行為もこの趣旨により定められていますが、従来の全剣連の運用では、理事会で議決した後に評議員会で同意を得るという順で行われていました。これは執行機関である理事会で審議されないものを、評議員会にかけるのは適当でないということで、長年の慣行として行われてきたものです。
しかし近年の会議運用の実態を見ると、理事会、評議員会の役割の違いがよく理解され、適切に運用されてきており、一般慣行、また全剣連寄附行為によって行う方が適当であろうという判断から、今回から運用方法を改めることにしました。